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なんでこんな役回りなのかねぇ

作者: みっち

さくっと読める短編です。

いつか連載バージョンも書きたいな。

「次こそは…」

と思うものの、もうどうすればいいか分からなくなってきたなぁ…。

何度目になるかわからないため息をつきながら私は目を閉じた。


------------

風が吹き、ぶるりと体を震わせ私は目をあけた。

6月ってまだプールの時期には寒い。

それなのに基礎体力を上げるため、強い精神を作るためとか何とか言って6月初めからプールの授業がある。

まぁ、屋上にプールがある分、太陽が当たるから暖かいのだとポジティブになるしかない。


「はぁ~基礎体力とか強い精神って言ったってさぁ~。」

「セレナ、仕方ないよ。早めにウォーミングアップしよ。」


16歳になる私は2週間前に規定以上の魔力保有者であると判断され、急遽、国立魔導学校に入学することになった。


国立魔導学校、それはシュトラー王国にただ一つのみ存在する、魔力保有者が通う全寮制の学校である。

毎年4月に200人の生徒が入学する6年制のこの学校は、魔力量によって貴族から平民まで入学する権利が与えられる。

この学校に入れれば平民でも卒業後はある程度の地位を担保されるのだ。


「私は寒いの苦手なんだよ…。というかリリアはよく寒い中元気にしてられるね。仮にもお貴族様なのに。」


「ふふ、だって私この学校への入学をものすごく楽しみにしていたんだもの。」


リリアはこの国の3大貴族ウラベト家のご令嬢であり、これまた3大貴族であるこの国の宰相の息子ユイトの幼馴染である。


「ね、セレナ。今日学校が終わった後時間ある?ユイトと一緒にお茶でもどうかな。」


…そして彼女もユイトも平民の私と仲良くしようなんて思う風変わりな人間だのだ。


その日のお茶会は最近学校の中で持ち切りの噂話がメインだった。


「な、聞いたか例の噂、なんだか訳のわからないモノが出たってやつ。」


ユイトは真剣な顔をして切り出すが、案外そういう話には懐疑的なリリアは興味なさげに相槌をうっていた。


「ああ、知ってる。1階中央にある噴水が紫色になって、

そこに誰かが沈んでいく、みたいなやつでしょ?」


そう、ちょうど2週間ぐらい前から生徒間でこんな話が回り始めたのだ。


「女性らしき人が噴水に沈むとかなんとか。」

「夜の水は紫色で結構きれいらしいよ。」

「いや、なんかよくわからない物体が出てきたって言ってる人もいたぞ」


とかなんとか。

というかこれだけ聞くと結構ホラーだよな。


「セレナも知ってたか。そうなんだよ、でさ、今日の夜その噴水を俺たちで観察してみない?」


「ユイト、お父様に怒られるよ。そんな真偽もわからない噂に時間割くぐらいなら、魔法の勉強をしたほうがいいと思う。」


そんなリリアの反応に不満気なユイトは期待に満ちた目で私を見た。


「…私もリリアに賛成だよ。そんなことしなくても誰かが面白がって流した噂に違いないんだから。それに万が一危険なことに巻き込まれても嫌でしょ。」


「ちぇ~。わかったよ。」


私もリリアも本当に分かっているのか?という目をユイトに向けたが、ユイトはさっと目をそらしたのだった。


------------

この学校の夜の雰囲気は結構好きだ。

静かだし、本来は平和な場所なのだ。


「ユイトやっぱり来ちゃったんだね。その好奇心旺盛さと行動力、私は結構好きだよ。」

「あれ、セレナも来たんだ?やっぱり興味があった?」


もう何度も見かけた光景だ。

どう行動すればよかったのかなぁ、気を付けてはいたんだけど。

…そう気を付けてはいた。事前に入学者名簿だって手に入れて確認したのだ。


「ユイト、アレを見て、アレが噂の正体だ。」


「!?あれはなんだ?悪意の根源か?」


おお、さすがユイト、さすが宰相の息子。

現在では禁術とされている悪意の根源、呪いの一種をその見た目だけで判断できている。


魔力保持者の特権となっている魔法とは違い、呪いは魔力保持にかかわらず人間が古来より扱える術だ。ただし呪いは簡単には生成できない。相当の技術が必要なのである。


「え!何それ、悪意の根源!?」


後ろからリリアの声が聞こえた。

興味なさげに相槌をうっていてもやはり幼馴染同士なのか行動が似ている。

私はこんな状況なのにちょっと笑ってしまった。


「2人とも聞いて。数分後にはこの話は忘れてると思うけど、どうしても話したくてさ。」


リリアとユイトは何事かと怪訝な目を私に向けている。


「あのね、この学校もこの国もアレによって最悪の結末を迎えるの。」

「だからね、私が何とかしないといけないんだけど、どうしても2人が私と出会うことで、この光景が一時的に蘇っちゃうみたい。それで自覚しないまま噂話として流しちゃうみたいなんだよね。」

「ずいぶん前にはこの光景を見た2人と一緒に、悪意の根源の排除を考えたんだけどさ。」

「私にとってはもっと最悪な結末になったから。」

「だから、もう一度やり直すね。」


はぁ、何度やり直しても毎回この2人と出会うタイミングだけは同じじゃないんだよなぁ。

統一してくれればいいのに。


王国唯一の魔道学校の噴水には秘密があった。

とある魔力適合者のみに使用が許される”時戻り”、

私が噴水に入ったときその噴水は紫色に光ったのだった。

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