022.中学生になりました
新章突入です!
18話から22話まで書き換えた関係で、この話だけ短いですがご了承下さい。書き足したかったけど思いつかなかったです。
双子は無事に比恵町小学校を卒業し、光東中学校に上がった。
近隣のふたつの小学校から生徒を受け入れる光東中学校は学年あたり2クラス、蒼月と陽紅の世代の新入生を迎えて、2019年度の在籍生徒数は189人である。
そして今日は入学式。真新しい制服姿の新入生たちが初々しい姿で、緊張しながらも真面目に厳粛に式に臨んでいた。
真人は真人で、ひとりだけ極端に若いから保護者席で目立ちまくりだったが、本人はそのことに何ひとつ気付いていない。なにしろ彼の目は可愛い双子に釘付けである。うん、制服姿も蒼月と陽紅が一番可愛い。
だが、それはそれとして。
「まさか……中学校の生徒数が小学校の児童数と大して変わらないなんて……」
式のあと、新入生のホームルームなども全部終えて、ようやく双子と合流できた真人は何故か世も末みたいな顔になっている。
「計算すれば分かるじゃないですか兄さん。ふたつの小学校からそれぞれ30人前後の計60人くらいが一学年で、それが三学年なんだからおよそ180人ですよ」
「まあ隣の小学校も比恵町小とあんまり変わらない人数ってのも意外だけど、要は都心部の小学校なんてどこも大して変わらない、ってことよね」
いやまあそりゃ冷静に計算すれば分かるけどさ。真人の中学校って近隣三つの小学校から集まってきてたから大所帯だったんだよ。
「それはそれとして、制服似合ってますか?」
「可愛かったら可愛いって言ってくれてもいいよ!」
そう言ってクルリと回ってポーズを決める双子は初々しい紺色のセーラー服姿で、もうすっかり子供ではなく「女子」である。
それも、胸の膨らみも目立つようになりウエストもキュッとくびれ、肩も腰も丸みを帯びて、しかも白銀の長い髪に蒼と紅の鮮やかな瞳に輝くような白皙の肌のクォーター。目鼻立ちのバランスも完璧で、どこからどう見てもかなりの美少女だ。
これは絶対に入学直後から話題になるはず、というかもうすでに騒然となっているに違いない。だってさっきからずっと周りの新入生たちや父兄たちがこっちをチラ見してるもん。
あの時、蒼月が初潮を終えたあと、そう何日も経たずに陽紅も初潮を迎えて、それ以降ふたりはみるみるうちに「女の子」になっていった。体型も見て分かるほど変化し、表情も声も柔らかくなって、背も伸びた。
そうして日々変わってゆく双子は散財し過ぎない範囲で服や下着を買い揃え、いつの間にやら化粧品まで一通り手に入れてその使い方まで覚えてしまったらしく、真人が知らない間にすっかり「女児」から「少女」になっていたのだ。
日に日に成長し魅力的になってゆく彼女たちに、真人の心のほうが追いつかない。
「いや可愛いんだけどさ、周りちゃんと見とかないとぶつかったり転んだりするからな?」
花で飾られた光東中学校の校門前で、入学式を終えた新入生たちがそれぞれの保護者たちと写真や映像などを撮って思い出を記録に残す中、真人も蒼月と陽紅を写真に収めるべくスタンバイしている。桜はもう散ってしまったが暖かい春の陽気で、もう少し経てば彼女たちと出会ってからちょうど丸3年になる。
くるくる回ってみたりそこらを飛び跳ねたりと元気いっぱいで、「可愛い?」「似合ってる?」と詰め寄ってくる蒼月と陽紅は本当に嬉しそうで、見ていて真人まで暖かな気持ちになる。だがそれはそれとして、人にぶつかったりしてはいけないので必要な注意はせねばならない。だって後見人だから。
「もーお兄ちゃん、こんな時まで小言ばっかり!」
「いくら私たちを褒めるのが照れくさいからって」
「いや今ちゃんと褒めたよな!?」
「「だってそこは『愛してる』ぐらい言わないとダメでしょ!」」
いや普通言わんだろ!?欧米か!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「んー部活どうしよっかなー」
頬杖をついて陽紅が眉間にシワを寄せる。そんな顔も可愛いと思ってしまうのだから真人の親バカっぷりも大したものだ。
「私は……文化部にしようかな」
きちんと背筋を伸ばして座る蒼月はすっかり清楚な美少女で、だが決して冷たい印象はなくこの年代特有の愛らしさと若々しさとに満ちている。
「陽紅は、運動部がいいんだよね」
「うん。なんか身体動かしたいなーって」
そんなふたりは今、所属する部活動を決めるためにリビングで額を突き合わせて、ああだこうだと悩んでいる。リビングテーブルの上には学校から提出を求められている入部届が白紙のまま二枚並んでいて、ふたりは第三希望まで記入して明日提出しなければならないのだ。
「蒼月は文化部、陽紅は運動部かあ」
「「うん」」
「蒼月は物静かで大人しい雰囲気だし、陽紅は活発で元気いっぱいだもんな」
「えーそれなんか、わたしがお転婆だって言われてる気がするんだけどー?」
「そんなことは言ってねえよ」
「ふんだ。どーせお姉ちゃんみたいにおしとやかじゃないですよーだ!」
そう言ってむくれてしまった陽紅が本気で怒っているわけではないのは真人も分かっているので、苦笑いしつつもスルーだ。




