表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/41

どっちを選ぶのお兄ちゃん!?

真人(まこと)兄さん」

「真人お兄ちゃん」


「なんだ、ふたりとも改まって」


「お話があります」

「今日こそハッキリさせるわよ!」



 俺の目の前にいるのは双子の姉妹。17歳の高校三年生で、もうすぐふたりとも18歳になる、俺の従妹たちだ。

 従妹とは言っても、見た目はかなり日本人離れしている。いわゆるシルバーブロンドというのだろうか、ふたりとも銀髪のとても美しい輝く長い髪で、姉の蒼月(さつき)の方は深い(あお)色の瞳、妹の陽紅(はるか)の方は鮮やかな(あか)色の瞳で、肌はふたりとも透き通るように真っ白だ。

 おまけにスタイルもどちらも抜群だ。物静かで理知的な姉の方は胸がやや控えめだが、触れれば折れそうなほど華奢な肢体で守りたくなるし、妹の方は活発で快活で一緒にいて飽きない上に姉と違って胸元も主張が激しく目のやり場に困る。


 正直、控えめに言ってもとんでもない美少女たちだ。街では誰もが二度見するレベルで、芸能人にだってこれほどの美人はめったにいないだろう。街でナンパされること数知れず。学校では小中高と全てNo.1美少女の座をほしいままにして、家までストーカーが押しかけてきたことなんて数えるのも面倒なくらいだ。

 母親が日仏のハーフで、その血を濃く継いでいるらしく、それでこんな外人っぽい見た目だが、ふたりとも日本で生まれ育って国籍も日本だし、日本語以外喋れない。


 彼女たちの父は俺の父親の兄、つまり伯父にあたる。だから俺たち三人は従兄妹同士だ。

 ちなみに俺は今年で27歳で、ふたりよりちょうど10歳ほど歳上になる。


 彼女たちが10歳の時に訳あって俺が引き取り、それから3人で一緒に生活していて、もう丸7年になる。その間に美しく成長してゆく彼女たちを、ずっと間近で見守り続けてきた。



「ハッキリさせるって、何をだ?」


「そんなの決まってるじゃない!」

陽紅(はるか)の言うとおりです」


「兄さん」

「お兄ちゃん」


「「私たちの、どっちと結婚するの!?」」


 何を言い出すかと思えばやっぱりそれ(・・)か。


「しねえよバーカ。お前たちはどっちも可愛い妹(・・・・)だ。恋愛(そういう)対象じゃねえ」


「なんでよ!?」

「自分で言うのもなんですが、こんなに兄さんのことを愛してくれる美少女なんて他に居ませんよ?私たちと結婚しないと、兄さんあっという間に老けていって寂しい老後が待ってますよ?」

「余計なお世話だ。俺だってなあ、しようと思えば結婚のひとつやふたつ⸺」


「相手もいないのに?」

「お兄ちゃんがモテないの、はるか知ってるんだからね!」

「うるせえ放っとけ」


 くそ、遠慮なく痛いところ突いて来やがって。

 ホント年々遠慮がなくなるなコイツら。


「でも心配いりません。蒼月(わたし)が結婚して兄さんを一生養ってあげますから」

「だから陽紅(わたし)が結婚して、お兄ちゃんを死ぬまで幸せにしてあげるから」


 そう言ってくれるのは正直有り難いし嬉しくもある。あの時、親戚一同の反対を押し切って引き取ってきてやはり正解だったと、当時の自分を褒めてやりたい。あとここまで育て上げたこの7年間の俺、マジグッジョブ。よくやった。

 まあ、ぶっちゃけてしまえば飯食わしてやってただけで勝手に(・・・)育った(・・・)んだけどなコイツら。引き取ってきた10歳当時は痩せこけててみすぼらしくて、こんな美少女になるなんて思いもしなかったもんな。

 でもまあ、それはそれ。


「本当に俺と結婚したいんなら、まず『兄さん』を卒業してからだな」


「「…………えっ?」」


「だってそうだろ?お前たち、自分の旦那様を『兄さん』って呼ぶつもりなの?」


「「そっ、それは…………」」


(真人さん……マーくん……あ、あなた……キャーッ!)

(真人さん……マコちゃん……旦那さま……イヤーッ!)


 双子の顔がみるみる赤くなってゆく。多分、俺の名前を脳内で呼び捨てにして恥ずかしくなったんだろう。

 そういうとこだぞ、お前ら。俺のことを“兄”としか認識してないのに、結婚なんて出来るわけないじゃないか。


(てってっ照れる!恥ずかしすぎるわ、これ!)

(ムリムリ、まだムリ!こ、心の準備が……!)


「きょっ、今日の所は一旦引かせてもらいます!」

「こっ、今回はカンベンしてあげるわ!」


 ひとしきり顔を赤らめて悶絶していた双子は、そう言い捨てて自分たちの部屋に撤退して行った。それを見送って、はーやれやれとため息をひとつ吐いて、俺もリビングから自分の部屋へと戻った。



 ドアを閉め、鍵を掛けて扉の向こうの気配を探り、彼女たちが部屋から出てくる様子がないことを確認してからベッドに腰掛ける。膝の上に肘をついて、手首を折って指を絡ませ、その手の甲側に額を乗せる。

 そうして俺は、今度こそ大きくため息を吐き出した。


「いやもうホント勘弁してくれマジで。こっちがどれだけ今まで必死に我慢してきたと思ってんだアイツらは。ったく、人の気も知らないで……!」


 恋愛(そういう)対象じゃない?とんでもない。あんなとびっきりの美少女たちに愛を囁かれて落ちない男なんて居るはずがないだろ!しかも表情からも声音からも仕草からも、本心から俺のことが好きだってオーラをこれでもかって溢れさせて遠慮なく浴びせて来やがって!

 だいたい本当の兄妹じゃねえし!従兄妹同士だから結婚にも支障はないし、あの子達が18になれば結婚できちまうんだよマジで!だからこそのここ最近の猛アタックなんだろうけど、ホントマジで勘弁してくれ!


 だって俺は(・・)ひとりしか(・・・・・)居ない(・・・)んだぞ!?どっちか片方だけなんて選べるわけないだろうが!!

 俺がどっちを選んでも、残された方は結局ひとりぼっちじゃねえか!あの時『ふたりとも幸せにしてやる』って決めたのに、なんで片方だけ不幸にさせなきゃなんねえんだ!

 頼むから、結婚相手(そういうの)は余所で見つけてきてくれ!



 真人も蒼月も陽紅も、それぞれ相手の思いなど知らぬままに自室で悶絶し、結局この日は引き分け(ドロー)に終わった。

 これが彼らの、ここ最近の日常風景(・・・・)であった。







本日中に第1話の投稿も行いますので、そちらも合わせてご覧いただけると幸いです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ