発売記念SS(タイトル考えるのが面倒だった)
『鳴かぬ螢が身を焦がす』発売記念SS! まあ肩の力を抜いてちょっと茶でも飲んでいけ。こるもの先生のオールキャラギャグだ。終わったら皆、全ての怪我が回復するしこのことは忘れるし異世界というものの誰も着替えてない。
突然だがこれはアホアホ番外編なので一同は異世界の冒険者となって魔王を倒すことになった!
祐高「異国に流れるとは、今どきの流行りではないと思うが……」
純直「〝一同〟には誰が含まれる? 陰陽師! 陰陽師の魔術スキルはいかなるものか! すぐにステータスを見せよ!」
祐高「純直は適応が早い」
泰躬「ええと、どこを触れば……中年に新しいことをさせないでください。こうですか」
純直「攻撃魔法があまりないな、バフでサポートする役か」
泰躬「どうやらわたしが攻撃力倍増の術を打って少将さまが弓で遠距離、別当さまが太刀で近距離攻撃するタイプのシステムのようです。これはこれで過労死するほどこき使われる未来が見えます」
純直「祐高さま、あちらに大きな鬼が! 術の力を借りて太刀で鬼と戦うのは時勢的にまだまだアリかと思います! わたしが気を引いて敵の向きを変えている隙に祐高さまが斬り込んでください! 喰らえ、一周回った普通の鏑矢!」
祐高「えい、やあ、たあ。……術の力があるとはいえ鬼と戦うとはぞっとしない……仲間は三人なのか?」
純直「朝宣さまがいるはずですが姿が見えませんね」
泰躬「いえ……あちらを!」
純直「何と! スニークで敵の背後を取って毒を塗った短刀で急所を一撃必殺するバトルスタイルです!」
祐高「貴族のすることか!?」
純直「鎌倉武士はもう少し後の時代なので浜で死ぬまでもなくわたしたちに誉れなどありません! 結果オーライです!」
泰躬「ダンジョンのギミック解除スキルも持っておられるようで……あ。横のに気づかれてしまいました」
純直「あー、痛そう」
朝宣「ロングレンジ攻撃で助けろ純直! このパーティーには回復役はいないのか? Tipsには回復魔法の項目があったぞ?」
祐高「朝宣はちゃんとTipsを読む方であったか」
泰躬「別当さまも大分馴染んでこられましたね。ヒーラーは……聖女忍さま」
純直「実は冒頭から背後に見慣れぬ牛車がいるなあと思っておりました」
桔梗「はい、忍さまの乳母です。恐れながら忍さまに代わって皆さまに申し上げます。忍さまは高貴の女君ゆえ、このようなトンチキファンサービス番外編SSなどで軽々に皆さまにお姿を晒すわけにはゆきません。また夫君以外の男性に回復スキルを使うのははしたないことであり、辞退したいとおっしゃっています」
祐高「それはそうだ、異世界であると言っても無礼講ではない。女人が安易に人前に出ることはまかりならん。皆、怪我をしないよう頑張ってくれ!」
純直「仕方ないですね!」
泰躬「仕方ありません」
祐高「その分、前に出るのはわたしが引き受けるから!」
純直「自ら盾役を買って出るとは流石祐高さま、勇ましい!」
泰躬「では防御バフを」
朝宣「仕方ないで済むか、おれを助けろ! どんな回復魔法だ! おれがいないとダンジョンのギミック解除がままならんぞ、詰むぞ!」
祐高「朝宣は正直死んでも惜しくないが……いかに恨みがあってもスリップダメージで死ぬるのは惨いか。しかしスキルとはいえ忍さまが手を触れるのは……その怪我は時間経過で回復せぬのか? レベルアップの際にHPMP全回復するということは?」
朝宣「するか!」
祐高「飲むと傷が癒える不思議な薬湯などないのか? 誰か、サブスキルで回復系は? 皆、スキル欄をソートして検索せよ」
朝宣「ううーっ傷が痛い! このままでは死んでしまう! 忍の上に優しく撫でさすってもらわなければ! 口づけしてもらわなければ!」
純直「すごい。多くの読者に〝そのまま死ねカスボケ〟くらい思われているだろうにものともしない。この方、このまま〝持ちギャグ〟にするおつもりだ。見た目は繊細で中身はふてぶてしい、これこそ平安貴族のあるべき姿なのだろうか」
泰躬「わたしがそれ系のスキル持ちならさっさと処理……癒してさしあげられるのですが」
純直「どうやらわたしも持っていない、じれったい」
桔梗「では僭越ながら、女主人に代わって乳母であるわたくしがお助けさせていただきます。こう見えて弱回復兼近距離打撃武器担当、ヒールもできるサブアタッカー職でございます」
祐高「き、桔梗は武具など使えるのか? 武家の女が薙刀を使うという身分ではなかろう? 女人に戦など」
桔梗「これも忍さまと殿さまの御為です。既に自分の子育てを終えた身、どうとでもなれ! 必殺、特に意味もなく寝殿造りの室内に飾りで置いてある金属の皿!」
泰躬「これは……D&Dからの伝統のフライパンアタック! いえ、シールドアタック!」
祐高「知っているのか天文博士!」
純直「いかに天文博士といえどもCoCの世代だろう。D&Dとはもっと太古の昔、いにしえのおとぎ話ではないのか」
泰躬「幼き頃から師匠に6面ダイス、10面ダイスの振り方を仕込まれました。ルールがないのをいいことに無理矢理粉塵爆発でダメージを入れる、物理で殴ってレベルを上げる古式ゆかしい和マンチの技をご覧に入れましょう」
純直「そちは普段からそういうロールプレイだったな!」
桔梗「ライトヒーリング!」
朝宣「待て、手が光るだけだぞ、何もはしたなくないぞ、この回復スキル!」
祐高「それはそうだ、何を期待していた」
朝宣「本当にヒロインが顔を出さないまま終わるのか!?」
~その頃、牛車の中~
忍「いきなり異世界で外歩けるから歩けなんて言われても無理じゃない? わたし、足首を出して歩くとか無理。戦闘なんて男君に任せましょう」
桜花「そうですねえ」←スニークスキル、ダンジョンギミック解除スキル持ち
忍「どうせならスローライフ物作り系異世界に転生してお茶やお料理を楽しみたかったわ。不思議な薬を作って皆を助けるの。あ、悪役令嬢って面白そうじゃない?」
桜花「いつもとあまり変わりませんよ」
忍「言うわねえ、桜花」