プロローグ
その日は青空が広がる気持ちのいい日で、体調の良い方は見送りに出てくれました。
それでも私は、まだ出て行く勇気が持てませんでした。
うつむいて動けない私に、「もうひとつお願いしてもいいかい?」と、おだやかな声がふってきました。
「アリスちゃん、わたしたちと約束をしておくれ」
「わたしたちの家を訪ねた後でいいから、『謎』をひとつ解いてもらいたい」
「……こんな時にナゾナゾなんて」
「謎々じゃあない。儂らからのお願いじゃ」
「SOUVENIRというゲームの中に『紅葉の謎』という『謎』がある」
「それを解いてほしい」
「……全然わかりません」
「わからなくていいんだよ。アリスちゃんが私たちの家族と会って、外の世界に慣れてからのことだから。今はわからなくていいんだ」
「一人で解こうとしなくていいのよ。誰かに協力してもらえばいいの」
「誰かなんて。外に出たら、私には誰もいないのに」
「家族や友達じゃなくてもいいのよ。謎を知っている人がいたら教えてくれるわ」
「ワシの孫に聞くといい。あいつは役に立つぞ」
「謎を解くときは、ぜひ私の作ったお洋服を着ていってね。私のお洋服がきっと力になるから」
「儂からはこれをプレゼントしよう」
「……これ、カツラですか?」
「そうじゃ。愛らしいじゃろう。アリスちゃんによく似合う」
「アリスちゃん、私からはこれを。もし『紅葉の謎』を解くのに困ったら使ってね。中身はまだ内緒よ。必要になってから開けてね」
皆さんからのたくさんの言葉と、カツラと厚手の白い封筒という贈り物に励まされて、私は顔を上げました。
ならんでいる皆さんの顔をしっかりと見て、口を開きました。