表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

宇宙の最果てはおっぱいでした。

 宇宙探査のため、地球を離れてからどれくらいの年月が経過したのだろうか。


 仮死状態で眠っていた俺には、すでに時間の感覚はない。強いて言えば、ついさっき太陽系を離れたばかりといったところだ。


 宇宙船のコクピットに座り、積算距離計を確認してみると、およそ百四十億光年で停止していた。壊れたのかどうかは分からない。


 壊れたのでないとすれば、何かの拍子に探査臨界を越えてしまったということだ。

 つまり――


「宇宙の最果てにたどり着いた……?」


 しかしそれよりも重要なことは、この船が推進力を失っているということだった。


 平たく言えば止まっちまったということである。


 焦っても仕方ないので、俺は外部モニターをオンにした。すぐに船外の様子が全面に映し出される。


 遮る物が何もない、俺自身が宇宙空間に漂っているような感じだと思ってくれ。船内全てがモニターの役目を果たしているというわけだ。


 上下左右、そして背後は真っ暗な宇宙空間。まばらに見える星々の光。


 だが正面を向いた時、俺は驚愕せずにはいられなかった。


「おっぱい……おっぱいぃっ!?」


 そこにはなんと大小様々なおっぱいが、二つ一組で壁のように連なっていたのである。


 どこまでも続くおっぱいの壁。しかもそれぞれのおっぱいは、俺が乗る宇宙船よりはるかに大きい。


「美しい……」


 しかしこれだけ巨大なおっぱいだと、触ったり吸ったりってのは無理だ。残念でならない。


 そんなことを考えた次の瞬間、一つのおっぱいの先端が沈み込むように穴を開けた。まるでこの船を誘うが如く。

 そして、船はそこに向かってゆっくりと動き出した。


「吸い寄せられている?」


 いやいや、吸いたいのはこっちなんだが。と、バカなことを考えているうちに、船体はびーちくの中へ。


 しばらくトンネルのような空間を進み、やがてピンクや白や茶色、焦げ茶色がまだらに広がる大地に出た。


 そこで俺はまず、この地のデータ解析に入った。

 結果は次の通り。



・大気の成分は地球とほとんど変わらず。

・重力も地球とほぼ同じ。

・人体に有害な光線はなし。

・脅威となる生物はゼロ。

・細菌やウイルスなどの病原体もなし。

・現在の気温は摂氏二十度前後。



 他にもチェック項目はあるが、どれも宇宙服や生命維持装置の類を必要としない状況を示していた。


 つまり、そのまま外に出られるということである。


 俺は船をゆっくりと地表に向けて降下させた。


 大地に近づくにつれ、表面の詳細が段々と見えてくる。そして、モニターを拡大表示させた時、俺は叫ばずにはいられなかった。


「おっぱい!!!!」


 なんと様々な色の正体は、地表を覆い尽くすおっぱいだったのである。大きさはまちまちだがどれも形がよく、今度はちゃんと先っぽを吸えるサイズだ。


 マズい。このまま着陸してしまってはおっぱいを傷つけてしまう。


 俺は慌てて地表三十センチのところで降下を止めるようにした。


 宇宙船は重力制御なので、スラスタから噴射される熱の心配はない。だから着地さえしなければ、おっぱいを傷つけることはないというわけだ。


 しばらく降下して船体が安定したところで、俺はブーツやらなんやらを脱ぎ捨て、シャツにジーンズというラフな服に着替えた。どうせ誰も見ていないから、問題はないだろう。


 ついでに靴下まで脱いで裸足になり、滅菌光を当て、汚れや匂いを専用のシートで拭き取った。


 おっぱいは神聖だ。だからそれを穢すことなど出来ようはずがない。


 さあ、いよいよハッチオープンである。


 そしてこの地の大気が船内に流れ込んできた時、なんとも甘い香りが漂ってきて、思わず歓喜の声を上げずにはいられなかった。


「イエス、おっぱい!」


 このおっぱいの大地に降り立つのに、本当に服が必要なのだろうか。足蹴(あしげ)にするなんて以ての外なのではないだろうか。


 そんな考えが頭を(よぎ)り、俺は全てを脱ぎ捨て、全裸でおっぱいの中に飛び込むことにした。


 ほうん! ぽわん!

「うぉぉぉ! おぉぉぉ!」


 たまらねえ。たまらねえよ、おっぱいの大地。


 温かくて柔らかい感触が全身を包み込む。いや、正確には前面だけなんだが、沈み込む感覚がまるでおっぱいに包まれているようなのだ。


 ちゅうちゅう。


 吸ってみると先端がコリコリしてくる。しかもどこからともなく聞こえてくる甘い声。どうやら頭の中に直接響いてきているようだ。


 しかしこれ、大地じゃねえ。海だよ海。おっぱいの海だよ。


 そんなどうでもいいことを考えながら、俺は手当たり次第におっぱいを吸いまくった。



◆◇◆◇



 あれからどれくらいの年月が流れたのだろう。


 おっぱいを吸っている限り空腹に(さいな)まれることもなく、やがて海面に露出しているのは俺の尻だけになっていた。


 呼吸は出来るし、おっぱいの向きを変えればちゃんと吸えるから何の問題もない。


 そこではたと想像してみる。


 上空からだと、おっぱいと俺の尻って見分けがつくのだろうかと。


 うん、そうだな。これは俺が生まれる前に地球で流行ったとされている『ウォーリーを探せ』の、最上級版になるんじゃないか?


『尻リーを探せ』とかにすれば、語呂も悪くないだろ。


 こうして俺は、宇宙の最果てでおっぱいの海の住人になったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 素晴らしいイマジネーションの世界、堪能させていただきました。 年末を乗り越えられそうです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ