079 お話ししましょう
約束の時間。
俺はカンオケ部屋、つまり自分の寝室に入った。
ドキドキ。
なんで自分の部屋入るのに、こんな緊張せにゃならんのだ。
「あ」
「なんですか、その顔は。
ナニか文句でもあるんですか?」
いや。やっぱ似合うな、その服。
イズミは昨日買ったあの私服だ。
「そうでしょうとも。
気合い入れて選びましたからね」
ふんすと胸を張る。頬がほんのり紅い。
「………。
『義務』の前にちょっとお話ししましょう。
ここに座ってください。マスター。
はい、正座で」
……正座ですか。
はい、わかりました。だから睨むなって。
イズミも靴を脱いで正座。
俺たちはベッドの上で正対?した。
「マスターは明日から3日間休暇を取られるワケですが。
開店初日も放り出して。イイご身分ですね」
そんな繁忙期に有給申請したゆとり社員みたく言われても。
「すまん。
だけど仕方ないだろう。コレばっかりは」
「それは分かっています。
廃人になれとはわたしも言いません。
ですけど、寂しいじゃないですか。わたしが」
あれ?
なんか可愛いこと言い出したぞ?
「わたしは3日前、今の『わたし』に転生してマスターにお仕えするようになりました。
そして明日から3日間放置ですか。
ちょっと薄情じゃありませんか?」
うーむ。そう言われるとそうか?
イズミがググイと顔を寄せて圧迫してくる。近い。
「マスターは眷族にとって、とても大事な存在なのですよ。
その自覚を持ってください」
「わ、わかった」
これから気をつけます。だから落ち着いてくれ。
イズミから風呂上がりの良い匂いが。
「ログアウトは仕方ありません。
その代わりわたしにキチンと指示をください」
いや、やりたいようにしてイイぞ?
食べ歩きとかどうだ?
「それは有難うございます。
ですけど自由の方はいいのです。充分いただいています。
この場合わたしに必要なのはむしろ束縛。
具体的には短、中期的な目標設定です」
自由より束縛だとか、LVが高すぎて俺にはわかりません。
「性癖の話じゃないですよ?
マスター不在中の行動指針が必要だというコトです。
例えば『魔法スキル強化優先』とか『商売利益優先』などです」
なるほど、そういうのね。
よかった。ちょっとビビったぜ。
「マスターはわたしの自主性を尊重してくれてますが、それが一番困ります。
マスターの希望に添うのも眷族の義務なので」
ナンデモイイが一番困る、とか聞いたコトあるな。
ならばお言葉に甘えて希望を述べさせてもらうか。そうだな。
「『料理スキル強化優先』で頼む。
ただし、お店の方もちゃんとした上で。
先生にもキチンと加工賃とか渡したいし」
「当然です。
お店を開くからには黒字経営を目指します」
あと将来的には『オムライス』とか作ってくれると嬉しい。好物なので。
「洋食の中級レシピですね。了解です。
『オムライス☆5』を長期目標として設定します」
そこまでしなくていいです。
☆1でいいから食わせて。




