061 衣料品店
家電量販店としか思えない金物屋を出ると、同じ並びに衣料品店があった。
店構えこそ落ち着いたファンタジー風だが……。
入ってみるか。せっかくだし。
中は完全に現代風だった。予想通りだよ。
品揃えがさらにカオスで困った。
西洋ファンタジー風もあるし現代日本風もある。
コスプレとしか思えないのもある。
版権キャラとかやめてほしい。タイアップ?
これらは装備ではなく完全に外見だけの『服』だ。
防御力はゼロで耐久力とかの数値も無い。
アバターの見た目を楽しむためだけのオプションだな。
アウターなんかは装備の上から羽織ることもできるらしい。
カーミラさんもたしかそんなコト言ってたな。
固定装備うんぬんで。
はッ。ならばこの、ちょっと恥ずかしい黒服装備と蝶ネクタイも隠せるということか?
これは試さねばなるまい。
イズミも興味津々で商品を手に取っている。
着替えとか要るよな。
「イズミ、気に入ったのがあれば選んどいてくれ。
俺も選びたい」
「わかりました。いちおう、後で確認してくださいね」
好きに選んでいいのに。キッチリした子だよ。
装備新調なら大ごとだが、見かけだけの『服』ならかなり安く済むようだ。遠慮はいらないぞ?
さて、俺の方のチョイスなのだが。
お題はズバリ『錬金術師』。
明日から修行をつけてもらう予定なのだ。それらしいカッコしないとな。
結果がコレである。フハハハハハハッ。
白衣とメガネによって醸し出されるこの研究者感。いかにも理系だ。
さらに濃紺のマフラーで蝶ネクタイを隠してみた。
コレでかなり普通になったはず。
ふふふ。鏡で確認できないのが残念だな。
どうだ、シロ? カッコ良かろう?
「わうーん?」
よく分かんないみたいだな。イズミに見て貰うか。
おーい、イズミー。
「ナンですかそれ。自称狂気のマッドサイエンティスト?」
「いや、錬金術師をイメージしてだな」
「別のベクトルで怪しいんですけど。内臓とか取られそう?」
試着室から首だけ出して言いたい放題。
うちの眷族ちゃん厳しいです。
錬金術師スタイルは不評のようだ。
しかし俺はコレで行かねばならぬ。
何故なら『吸血鬼のマント』がこの白衣を同化吸収しちゃったからである。
この白衣、装備画面で見ると『吸血鬼のマント(白衣)』なのだ。
まだカネ払ってないのに。
なんてコトするんだ。この化けマント。
そういえば、転生したときもマントだけは外見が変わっていなかった。
アレは前の『旅人のマント』が食われたというコトか。
怖いな、俺の専用装備。
「そんなコトより、コッチも見てくださいな」
また流された。
うちの眷族ちゃんはマスター様のコト軽んじすぎて……。
「……………メチャクチャ可愛いな」
「な、ナニ言ってるんですか、真顔で」
そっぽ向いてしまった。
いやホントに可愛い。スゲー似合ってる。ビックリ。
メイド服もいいけど、カジュアルなのもコレまたイイ。
脚長いからデニムも映える。
髪と同色のシャツもいい感じだ。
照れて赤みが差した頬がまたプニプニで………。
「もぉ、いい加減にしてくださいッ!?
着替えますから!!」
ありゃ、なんかキレちゃったよ。ヘンなコト言っちまったか?
こういうの苦手なんだよな。
女の子褒めるのって、ホント難しい。
「おーい。それゼンブ買っとけよー。
今度また着て見せてくれよー?」
「わかりましたから、もう喋らないで!?」
試着室の中から怒鳴られた。
うむ。その日が楽しみだ。




