052 ログインの朝
ログインした。
イイ朝だ。窓が開け放たれている。四角く切り取られた青空がまぶしい。
寝覚めの爽快感はないな。やっぱ椅子でログアウトは無理があった。
寝室には誰もいない。
イズミは自分に割り当てられた部屋に戻ったようだ。
ホッとしている俺がいる。もしベッドであのカッコで寝てたらどうなってたか。
ワンモアで襲いかかっていた可能性もある。
それぐらい昨夜のイズミは強烈だった。俺にとってはわずか1時間前だ。
「……おはようございます。マスター」
俺は飛び上がった。恐る恐る振り向く。
「お、おう。おはよう」
「食卓で朝食の用意をしてくれています。頂きましょう」
いつの間にかドアが開いている。その向こうにあいつがいた。
イズミはいつものジト目。通常モードだ。
特に変わった様子は無い。
俺が意識しすぎてたか?
こっちじゃもう6時間前だ。ひと晩寝たらリセットするものなのかも。
それか眷族にとっては普通なのか?
そうだよな。カーミラさんも義務だって言ってたし。
そんな大袈裟に一喜一憂するものじゃないのかもしれない。反省反省。
イズミがいつも通りなら俺も助かる。正直、困っていたのだ。
いつも通りいつも通り。それでイイよな?
俺はうなずいて寝室を出た。ふと疑問が湧いた。
「俺のログアウト中、お前はどうしてるんだ?」
「ふつうに部屋で休んでましたよ?」
俺のログアウト中もイズミはちゃんとこっちに存在しているようだ。
リアルなら当たり前だが、ここはゲーム世界だからな。
「じゃあ、ログアウトが長い場合はどうなるんだ? 例えば一週間とか」
「一週間、部屋かその近辺で待機でしょうか。今の設定ですと」
それはよくないな。退屈だろう。設定を変えればいいのか?
イズミの話によるとそれだけでも駄目らしい。
まず日常生活のための拠点、ホームが必要でその上で日々の経費が発生する。
つまり家と生活費がいる。リアルだな。
生活費は少額でイイらしいが家は高価だ。簡単じゃない。
だけどなぁ……。ふむ。なんとかしたいな。
時間が一番大事、というのは爺サマの口癖だった。
『これだけは減る一方で増やすことが出来ない。
だから寸暇を惜しんで好きなことをするべきだ』
人生100年近くをゲームに突っ込んだ廃人ジジイの言い草としてはオカシイが。
まぁ、それなりに悟るモノがあったらしい。
これはNPCにしてもおなじだろう。
時間は大事だ。増やせない。
まぁ、マンドラゴラを処分してからだな。
☆5とはいえ素材ひとつじゃタカが知れてるだろうが、足しにはなるはず。
それからホームの相場を調べよう。うまくいけば賃貸の敷金くらいにはなるかもしれない。
よし、当座の目標が決まったな。ホーム入手だ。
賃貸でいいんだけど、可能ならローン組んで購入でもいい。
35年ローンとかは辛いが。手頃な物件を探そう。
あと、もうひとつ。昨夜の約束だ。
「イズミ。マンドラゴラ売れたら服を買おう。
着替え、いるだろ?」
「な、なんですか朝っぱらから。ケダモノですか!?」
なんか顔真っ赤にして怒られた。
あれ? 俺、ヘンなこと言ったか?




