043 ガーディアン戦
ギィィィヤァァァァァァァァァァアッ!!!
「マンドラゴラ・ガーディアンは絶叫を放った」
耳をつんざく大音響!
同時に壁みたいな衝撃波に俺はぶっ飛ばされた。
イキナリの開幕絶叫攻撃。
容赦ないなッ!
HPバーが8割消えたぞ。急速再生待ったなしだ。
即死効果は弾いてるが素のダメージだけで瀕死だ。こりゃ手強い。
もう一発食らったらアウトだ。距離を取らないと。
ドスドスドスドス。
なんとその距離を走って詰めてきた。その足、どう見ても歩行に向いてないんですけど!?
短い足を豪快に踏みしめ突っ込んでくる。
俺は呪文を詠唱中だ。そこに巨体ごと回転するような右フック!
紙一重で回避。と思ったらそのまま左の裏拳が襲ってきた!
バックステップで避けたが横っ面をカスッた。
またHPがレッドゾーンに戻る。
『再生』頼む。こりゃ豪腕だぞ。
樹精もそうだったがコイツもパワーファイターのようだ。
絶叫はクールタイムが長いのかな。連発する気配は無い。
『影縛り』
影から湧き出た無数の柔腕が巨体を縛る。がんばれ。
『怪力』!
背を掴み足を強引に払ってドスンと顔面?から倒した。さてどうするか。
『吸血』
俺は倒れた背中にまたがって後頭部?らへんに噛みついた。
HPもそうだがMPが特にヤバイ。
この調子で『急速再生』を繰り返してるとあっという間に枯渇してしまう。
転がしたらすぐ吸うぐらいの勢いでいかないと。
ただそれだとMPを保たせてるだけで、勝負自体はじり貧になる。
更にどうダメージを稼ぐかなんだが……。
ガーディアンのお味はやはり和風だった。ピリリと辛味の強いワサビ大根みたいな味だ。
サンマとよく合いそうだ。チリメンジャコでもいいな。醤油が欲しい。
巨体にしがみ付くタメ頭部の葉っぱを掴んだ。肉厚な長い葉で掴みやすい。
「ギッ!? ギギッ!?」
巨体の手足がバタバタと暴れ出した。嫌がってる?
試しに、別のまだ小さい葉に持ち替えて思い切り引っ張ってみた。
根元からブチンと千切れた。
「ギッギィ!?」
巨体がなおさら暴れる。痛そうだ。
おお? ダメージも意外とあったようだ。
コレ、弱点か?
ギィィィヤァァァァァァァァァァアッ!!!
再びの絶叫。俺は取りついていた背中から跳ね飛ばされた。
だがダメージは軽い。
背中越しだったせいだろう。嬉しい誤算だ。
2度目の絶叫を食らい、転がして作ったチャンスも振り出しだ。しかし。
フフフ、これでだいたいの算段はついたぞ?
まず絶叫は背後にくっついてれば威力をかなり殺せる。
物理攻撃は両腕を回転させての連続パンチ。
片腕でも直撃すれば沈没必至の強パンチだが大振りで捌きやすい。
そして弱点だ。
アタマの葉っぱ。引っこ抜けばかなりのダメージが見込める。
くくく、毟りまくってやるぜ。
ただ、さっきは薄く小さい葉を選べたから簡単だった。
残りの厚くて大きい葉は『怪力』なしじゃ俺には引っこ抜けまい。
そうなると転ばせるのは『空気投げ』限定になる。カウンターをうまく決めないと。
『空気投げ』で転ばせて即『吸血』。
吸いながら葉っぱを掴んで吸い終わりに『怪力』で引っこ抜く。
よし。基本の流れはコレで。
立ち上がった巨体がドスドスと駆けてくる。重量感が凄い。
こちらは脱力して待機だ。
あの両腕回転攻撃を掴まえるのだ。落ち着けよ、俺。
クールタイムの長い絶叫を跳ね飛ばしに使わせてしまえば、コイツは殴りかかるしか手が無くなる。
そして力任せの接近戦は『空気投げ』の土俵だ。
極太の右フックが俺の顔面を襲う。そしてその裏側では左腕が次の裏拳を準備しているはずだ。
しかし次は待たない。
俺は一歩踏み込み巨体の懐に飛び込んだ。
『空気投げ』
俺がいた空間を豪快に薙ぐ右腕。これを内側から掴まえ体捌きを合わせる。
彼我の勢いを同調。一緒に回りながら向こうの回転軸をこちらに移す。
軸の移動した回転はガーディアンの巨体を簡単に浮かび上がらせた。
ドッスゥン!!
地面に顔面から叩きつけられた巨体。
その背中に俺は飛びついた。
覚悟しろよ? ガーディアン。
何十回でも繰り返してやるからな。俺はしつこいのだ。