018 仮説検証と『五体連動』
パッパラパラー。
よっしゃ、待望のファンファーレ!
これでステオール20達成だ。
オオカミくん、大コウモリくん。キミタチのお陰だ。
まさに献身的なご協力、ありがとうございました。てへッ。
さっそく検証だ。獲得したステ値を振るのだ。
出てきたステータス画面でVITとDEXに1Pずつ振る。
これで正五角形は完成した。ハズだが?
「『五体連動』が取得可能になりました」
お、おおおッ!? なんだ!?
このタイミングでなんか意味深なスキル。
取る取る、取得しますよ。スキルポイントも溜まってるしね。
だけどちょっと待ってね。先に検証しないと。
この『正五角形仮説』、ステ値正五角形がはたして『空気投げ』の発動条件であるか否か。
まず素の状態で試すのだ。
新スキルはそれからね。
では改めて検証開始。
アシスタントはそこらへん歩いてたオオカミさん(ソロ)です。ヨロシク。
開始いきなり『空気投げ』だ。
どうだ!? かかってこいやぁ!
飛びかかってきたオオカミさん。
その全身、随所に輝く青い光。俺はソレを掴まえた。
ズドン!!!
成功! やったぜッ。読み通りだ。
糸を通したかのようなスムーズな連動。
移動した重心、反転した慣性がそのままオオカミを投げ落とした。
美しい……。文句のつけようのない『空気投げ』だった。
しかも威力がエグい。一発KO。
オオカミさんは地面にめり込んでピクリともしない。や、ムチャしやがって。
オオカミ自身の攻撃力だけじゃない。今の俺自身のステ値全部も乗っかった感じだった。
昼間の『空気投げ』にロケットブースターでも追加したような感覚だ。
たしかアーツ取得時のテキストじゃ『ステ値』は関係ないように書いてあったよな。
しかし『ステ値の正五角形』はガッツリ関係あったようだ。
威力が恐ろしくアップしている。ゼンゼン空気じゃない。
まぁ、一辺の長さが20倍の正五角形だ。それを考えれば控えめかもしれんが。
やはり『空気投げ』はステ値正五角形が発動条件だった。
うーむ。そう考えるとかなり特別なアーツなのか?
ちょっと使用ハードルが高すぎだろう。
そもそも正五角形を維持できるのはごく限られた期間でしかない。
LVアップすればステ値は必ず変動するのだから。
陽光ペナルティのような特殊条件でもあれば別だが。
うーん、わからん。
使って楽しいアーツだからそれでいいんだけど。
よし。次は『五体連動』取得してと。
パッシブスキルみたいだな。効果はわからん。
今更だがスキルって説明テキストないんだよな。
だいたいは名前だけで効果を推測できるんだけど。
ただ今回は取得したタイミングがアレだ。
なんとなく期待はある。
向こうにオオカミの集団が見えた。
夜の平原は月明かりだけだが俺にはハッキリ見えるのだ。
『暗視』スキルがいい仕事している。サンキュー。
検証バトル開始だ。
ドーンッ! ズドン! ドォンッ! ドーンッ! ズドン!
はい、終了。すまんなオオカミ諸君。
『五体連動』の効果なんだが。
なんか身体が動かしやすい? 逆に無駄な動きをすると違和感がある。
動作を矯正する効果でもあるのかな?
それに関係するのか『投げ技』の威力が若干向上した気がする。
今はステ値正五角形のお陰で投げれば1発KO状態だ。細かいダメージとかは分からない。
だけどオオカミのめり込み具合が深くなってるからそうなのだろう。
ふむ。ここはコレでいいや。
『五体連動』スキル検証の本番は正五角形が崩れてからだ。
ほんじゃLV上げ継続で。
ドーンッ! ズドン! ドォンッ! ドーンッ! ズドン! ドォンッ!……………。
うーん。無双状態とはこれか。投げの練習にはいいけどさ。
襲ってくるオオカミは『空気投げ』でカウンター。
様子を見てるオオカミは追いかけて『怪力投げ』。
空中の大コウモリはパンチで迎撃。
食らったダメージは『再生』スキルにお任せで。
我ながらやりたい放題だ。夜の吸血鬼凄いね。
よし、LVアップした。
振るステ値はSTRとAGIで。これで正五角形は崩れた。
以前なら『空気投げ』は不可のハズだが。
検証バトル再開。
『空気投げ』
ドォンッ!
予想通り。『空気投げ』は無事発動した。
ただ、威力は若干落ちた?
地面のめり込み具合が浅い。それでも一発KOだ。充分です。
思うに『五体連動』は正五角形の予備としても働くスキルなんだろう。
ステータス値のバランスを調整して身体動作をスムーズに保つ。
ただし効果は本物の正五角形に及ばないようだ。体感で8割程度かな?
正五角形が成立済ならその補助に回る感じだな。
見事『五体連動』を取得。
これで『空気投げ』は昼夜問わずに使用可能だ。
さらに使い勝手が良くなったな。
それはイイのだが、昼と夜で戦力の格差がヒドイな。
今、ちぎっては投げしているオオカミに大コウモリにしてもだ。
昼間の俺なら絶対にこうはいかない。大苦戦まちがいなしだ。
自分の強さを誤解しちゃいそうでコワイぞ。
俺としては、苦労した分だけ昼の最弱モードの方が愛着あるのだ。
感覚もリアルと同じで親しみやすい。
夜の俺はボーナスステージとでも思っておこう。
これを普通だと感じだしたら昼間、外を歩けなくなる。
はー。しかし、よく戦ったな。
ダメージは全部『再生』が回復させてくれてる。
そっちは問題ないのだが、気疲れがね。
経験値は稼げてるし、ドロップ品もたんまり拾った。
『オオカミの毛皮☆1』『オオカミの尻尾☆2』『大コウモリの翼☆1』だ。
使い途はわからんが大漁だ。
冒険者ギルドに納品したら報酬も貰えるハズだ。
シッポは一つしかないからレアドロップなのかもな。楽しみだ。
逆にスキルの成長は片寄りがある。
『格闘』『怪力』『再生』と『暗視』『投げ技』が少し。
全体的な伸びも遅い感じがする。昼に比べて、なんだが。
苦戦してる方が伸びがイイ?
ステータス的に格上と戦う方が得るものが多い、というコトかもしれない。
そもそも昼間の俺にとって、全ての敵キャラが格上である。
ステオール1という、いわば弱さの頂点を極めてしまっているのだ。
周りからは学ぶモノしかない。えっへん。
それにシステム的な数値だけでなく、生身のプレイヤーとしてもイイ練習になっている。
逆に夜は無双状態である。適当にやっても勝てるのだ。
実際、雑になっている自覚がある。気分爽快だけども。
その点、昼は厳しい。
キノコと草にバコバコと連打食らえば、それだけで詰んでしまう。
そうなると自分自身の緊張感が違う。
結果、よく考えて動く。相手の動きもよく見る。
直撃を食らいそうな位置取りなんか絶対避ける。呪文も使って包囲を崩す。
攻撃と足止め同時にできるタイミングを狙う。
なにをするにしてもハードモードなのである。
そしてコッチの方が絶対に楽しいのだ。