016 陽光ペナルティは?
「おまちどう。
本日のオススメ、『魔界ブタの生姜焼き定食』だ」
おおッ。こりゃ美味そうだ。
絶妙に焦げたタレの香りがたまらん。
「ニンニクは使ってないから吸血鬼も安心メニューだ」
お心遣い、ありがとうございます!
ていうか、やっぱりガーリックトーストは吸血鬼のペナルティだったんだな。
口内炎はなかった。さらば、悲しきデザイナー。
「口の中でニンニクが暴れるのも、いいスパイスなんだけどねぇ」
「いや、痛いっすよ。アレ」
「人間の激辛カレーの方が凶悪じゃない?」
うーん。言われてみればそうか?
少なくともニンニクで舌が麻痺することはない。
つーか、激辛って傷害事件だよな。
辛党のヒトに言うと怒られるけど。
「ところで大将。
お店の名前、なんで『新宿』なんですか?」
気になってたので訊いてみた。
大将は薄く笑う。渋い。
「いつかは≪新宿≫に店を出すって決意表明だな。
魔界じゃ≪新宿≫は有名なんだよ。
特に西新宿とか旧区役所前とかな」
へぇ。魔界にも飲食の聖地みたいなトコがあるのか。
頑張ってください。応援しますよ?
「カーミラさん。
イロイロお聞きしたいコトがあるんですけど。イイですか?」
超うまい生姜焼き定食を堪能し終え、カーミラさんにお願いした。
グラスを傾け笑顔で頷いてくれるカーミラさん。助かります。
「まずスキルです。
取得可能スキルのリストから、なぜか武器系のスキルが根こそぎ消えちゃってるんですけど」
「あー、それねぇ。
吸血鬼は素で強いからねぇ。武器使っちゃあ不公平でしょ。
ステゴロが基本なのよぅ。防具だってダメ」
いや、俺弱いんですけど。なにその強者理論。
「芸風ってことですか?
だけど、防具もダメは特にツライです。
あと、せめてこの蝶ネクタイは外せませんか?
凄く恥ずかしくて」
「えー? 可愛いじゃない?」
思春期の男子には可愛すぎるんです。
可愛いよりカッコイイの年頃なので。
「うーん。固定装備だから外すのは無理ねぇ。
だけど、防具じゃない服とかアクセサリーでなら隠せるかしらぁ?
例えばマフラー巻くとか。
あと、その装備は錬金術で強化ができるわぁ。
見た目は変わらないと思うけどねぇ」
おおッ。それは朗報だ。
紙な防御力はオレ最大の課題なのだ。
カーミラさんと大将にお礼を言って、俺は夜の町に出た。
ああ、美味しかったし勉強になった。
お値段もリーズナブルだしホント良い店だよな。
カーミラさんはイロイロ教えてくれるしさ。
ゲーム関係でなくても博識なので話が楽しいのだ。
あそこがベースになっちゃいそうだよ。
魔界飯 美女とお話 美味い飯
うーん。ただのキャッチコピーだね。
しかもなんか水商売っぽい。怒られるな。
さて、冒険、夜の部だ。エロイ意味じゃないですよ?
夜のモンスター相手に経験値稼ぎを邁進するのだ。
やるぞッ!
………………ん?
ありゃ、いつの間にか陽光ペナルティのアイコン表示がなくなってる。
ずっと頭の上でジリジリ鳴ってたアレだ。
日が暮れたからか?
……いざなくなってみると寂しいな。
どうせ朝になったら復活するんだろうけど。
と、いうことはペナルティも停止中か。
ステ1も外れてるのかな? だといいな。
確認するか。
ヒジカタ
LV:3
種族:吸血鬼
職業:なし
HP:128
MP:128
STR:20
MAG:18
AGI:19
VIT:18
DEX:19
おおおおおおおおッ!!
こ、これは!?
す、ステータスが、ある! フタケタある!
凄い!! ちゃんとしたステータスだッ。
あの、冗談みたいなオール1じゃないッ!
ちゃんとしたステータスがあるッ!!
あるぞぉッ!!
感動だ……。いかん、涙が……。
苦労が報われた思いだ。
まだゲーム内で2日目だけどさ。
それだけツラく、濃い戦いだったんだ。
ステ1というのは。
しかもこのステ値、けっこう高いぞ!?
LV3でこの数値はありえん。
これがカーミラさんの言ってたコトか?
確かに、このステータス値で武器を持ったら不公平だよ!
ヤバイ。テンションが上がってきた。
コレは行くしかない。夜のフィールドへ。
バンパイアの、俺の実力を試すしかないッ!!
ないのだッ!!