151 経営スタイル
『傷薬☆3』の試作は成功した。
そのまま量産に移行する。
といっても素材の品質が変わっただけで作業内容は『傷薬☆2』と変わらない。
慣れたモノだ。
俺たちは集中して量産を続けた。
イズミの手が止まった。
「『薬草☆2』が無くなりました。ここまでですね」
え、もうか?
そんなに時間経ってないだろ。
「ざっと30分続けて100個完成してます。
効率が大きく向上してますね」
凄いな。おそらく『連携』の効果だろう。
「ここまで違うのか。
こりゃ傷薬調合はコンビを定番にしないとな。
イズミ、これからも頼めるか?」
「イイですよ?
『料理』スキルもかなりLVアップしましたし」
この短時間で『調合』『器具操作』そして『連携』がポコポコ上がった。
イズミも『料理』と『連携』で同じ調子だったらしい。
『傷薬☆3』作成で得られる熟練度はかなりのモノだな。
『調合』を持ってないイズミにもそれはキチンと配分されてる。お得だ。
素材が入手しにくいのが泣き所だな。
☆2は貴重なのだ。
「これからもガンガン買取しといてくれ。
いっそ買取価格を上げてもいいぞ」
「お客さんも喜びますね。
特にこの辺りで練習している初心者の方々が」
そうだな。
『薬草』『毒キノコ』はいわば、プレイ始めて最初のドロップ品なのだ。
戦闘の試運転をしてるうちに自然と溜まっていく。
それが比較的高値で買い取って貰えるというのは大きいだろう。
よし、それで。
「まさに『三方良し』だな。
『プレイヤー良し』『錬金堂良し』『序盤プレイ環境良し』だ」
序盤こそ、少しでも資金が必要なのだ。
欲しいものがいくらでもある。
ひょっとしたら『転売』はその打開策だったのかもしれないな。
しかしペナルティが重い。
特にビギナーには絶望的だろう。
それを避ける手助けを『錬金堂』が出来るなら最上だ。
ただし、転売屋氏にはそのまま頑張って頂きたい。
『転売屋』として突き進み、できればプレイ実録とか公表して貰いたいモノだ。
きっと興味深いハズだ。
「ビギナーユーザーから買い取って、ライトユーザーに『傷薬』にして販売。
ヘビーユーザーには『マナポーション☆2』や『付与薬[毒]』をオススメ。
このスタイルで回せればいいですね」
いいな。イズミの言うとおりだ。
このスタイルなら特にビギナーユーザーから当てにされるだろう。
それは『錬金堂』自体に需要がある、というコトだ。
コスパの優秀な『傷薬』は幅広い層に需要があるハズだ。
『薬草』は簡単に手に入るが、回復量が少なくCTも長いのであんまり当てにできない。
俺も剣士だった頃に使ってたから分かる。
なにかと不便だった。
買取を拡大するには運転資金が必要だろうが、『マナポーション☆2』の販売益で確保すればイイ。
そして俺たちの方は、商品加工の過程で『調合』『器具操作』『料理』『連携』。
販売の過程で『商売』『査定』『鑑定』のスキルLVアップが図れる。
まさしく『三方良し』。
いいバランスがとれている。
「『錬金堂』の経営スタイルが見えてきたな」
「『三方良し』。必要とされるお店ですね」
いいぞ。それで行こう。
きっと楽しいハズだ。