140 当座の生産計画
「す、すみません。遅くなりました……」
「わうッ」
並行作成を始めてすぐのところで、ミライナ先生が降りてきた。
ばつが悪そうである。
シロはシッポを振ってご機嫌さんだが。
「おはようございます」
「ああ、よく眠れましたか」
「すみませんでした。まさか眠ってしまうなんて」
ははは。気にしない。
『巨狼変化』の実験台にしちゃったのは俺らですし。
「こっちこそ、朝から想定外のコトをさせてしまって申し訳ない」
「ミライナさん、寝顔可愛かったですよ?」
イズミがからかうと顔を赤らめた。ホント可愛いな。
「ミライナ先生。巨大シロのモフモフ布団はどうでした?」
「……アレはダメです。気持ちよすぎて人間をダメにします」
「わわーうッ」
恐ろしげに身を震わせる先生だが、シロは褒められて自慢げだ。
「食後の休憩とか、あの調子ならかなりリフレッシュできそうですよ?」
ああ、それはいいアイデアだな。モフモフのシエスタだ。
「そのまま夜まで寝てしまいそうでコワイですけど……」
そうとう気持ちよかったようだ。
目覚まし時計とか要るかね?
そのうち俺も試させてもらおう。ちょっと楽しみだ。
「ミライナさん、今日はどうします?
『マナポーション☆3』とか。☆2の素材は揃ってますよ?」
イズミが問いかけた。
『マンドラゴラ☆2』だってある。
この前採取した10個を『鑑定』したらひとつ化けたのだ。
『鑑定』スキル様々だな。
「……そうですね。それはもう少し後にしてもいいですか?
『魔女の大釜』の詳しい使い勝手がわかってからにしたいんです」
なるほど、それもそうだ。
おそらくウチの居抜き設備だけじゃ☆3の商品は作れない。
『魔女の大釜』頼りなのだ。
工程の単純な『傷薬』は除くが。
その大釜も貰ったばかりで完全に手探り。
性能も不明だ。
ここは焦っちゃイカンな。
「『マナポーション☆3』はしばらく間を置こう。
急ぐ必要もないし。
先生は商品作りつつ『魔女の大釜』の試運転を進める。
ということで」
「はい。それがいいと思います」
『魔女の大釜』をポーチから取り出しておく。
置くとかなりの存在感。
いつもながらよく入ってたよな。
カンオケに比べれば小さいが。
「この大釜って、お料理に使っちゃいけないんでしょうかね?」
「えッ、どうだろう? 凄いこと考えるな」
昔、絵本でカレー煮込む魔女の話を見たことあるけども……。
イズミが釜に手を当てて考え込んでいる。
不安になる光景なんですけど。