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錬金堂繁盛記 絵無し版  作者: 三津屋ケン
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013 『投げ技』スキル

 LVアップした。


 転生してから2回目。やっとLV3。

 もの凄くペースが遅い。


 ソロの相手としか戦えず、しかも一戦一戦に時間が掛かるタメだ。

 もっともその分、スキルLVがポコポコ上がるのだが。


 吸血鬼は夜強いって話だ。経験値稼ぎはそこで頑張るか。

 敵も格段に手強いのが出るらしいけど。


 ……ひょっとして、相対的には今と変わらないんじゃあるまいな?

 なら困るぞ。


 まぁ、いいか。

 今はやっと貯まったSPの使い途だ。

 どのスキルを取得するか。

 それこそキャラ育成そのものである。慎重を期すべし。


 ま、俺の場合『投げ技』に決まってるんだけどね。

 理想は『怪力』抜きで投げが使えるようになること。

 今の俺は完全に『怪力』頼りで投げを打っている。

 それもTVや漫画の見よう見まねだ。これじゃイカン。


 それでも繰り返してるウチに覚えたコツもあるが。

 ホンモノの投げ技にはとうてい及ばないハズだ。

 ここはアーツとして正式な技を覚えたい。


 アーツというのはスキルを取得することで使用可能になる《技》だ。


 例えば『剣術スキル』ではスキルLV5で『スラッシュ』という技が取得可能だ。

 俺は取得を迷ってるうちに転生してしまったので使ったコトはないのだが。


 ウインドウを開いてスキル取得メニューを呼び出す。


 リストに『投げ技』がある。要取得SPは4。

 選択して決定した。


 するとさらに選択肢が現れた。


「アーツをひとつ選んでください」

 ・背負い投げ

 ・ともえ投げ

 ・空気投げ


 最初のアーツだ。慎重に選ばないとな。

 アーツはSPを払えば後から追加も可能だ。

 しかし今の俺はLVアップに時間がかかる。SPを稼ぐのが難しいのだ。

 安易な買い物は禁物。


 3つのアーツにはそれぞれ簡単な説明テキストがついている。


 ううむ。迷うな。


 しかしテキストを読み進めて俺は絶望した。

 迷える余地などなかった。


 背負い投げ:シンプルで使いやすい。オールラウンドに使える。

 威力はSTRと相手の重量に依存。


 ともえ投げ:特に突進系の敵に効果が高い。

 威力はSTRと相手の勢いに依存。


 空気投げ :相手の力を利用する特殊な投げ技。

 威力はタイミングと相手の勢いに依存。


『背負い投げ』『ともえ投げ』はなんとなく分かるな。TVで見たこともある。

 最後の『空気投げ』が分からん。漫画でも見たことない。


 しかし、このよく分からん『空気投げ』しか選択の余地がないのだ。


 なんせこちとらステオール1。泣く子も嗤う貧弱君。

 能力値依存のアーツはまったくダメージが稼げないのだ。


『背負い投げ』『ともえ投げ』は威力がSTR値、つまり筋力依存。

 俺それ1なんです。


『空気投げ』のダメージはタイミングと相手の勢いで決まるらしい。

 コレなら俺にも使える余地がある。

 ただどんな技なのか、まったくイメージできないな。

 それが不安要素だ。


 まぁ、いいか。とにかく取得して試してみるか。

 それが一番早いだろ。





『空気投げ』はヘンな技だった。


 技じゃない、のかもしれない。考え方かな?


 ゲーム内では相手を倒すということは、相手を行動不能にすることだ。

 行動不能にするにはどうするか。

 攻撃してダメージを与える。これが普通。


 単純に考えると、


『こちらの攻撃力』ー『相手の防御力』=『相手のダメージ』


 こういう計算式になる。


 そこが『空気投げ』は違うようだ。

 相手の行動を失敗させ、その力で自滅させる。そんな考え方みたいだ。


 式にすると、


『相手の攻撃力』×『空気投げ』=『相手のダメージ』


 こんなヘンな計算式になる。


 式中の『空気投げ』の部分に入る係数が、技のタイミングで決まる?


 技が良いタイミングで決まればダメージ増。

 技が悪いタイミングで決まればダメージ減。

 ゼンゼン駄目なタイミングなら『相手の攻撃力』をこっちが食らってダメージを受ける。


 どうもそんな感じ?


 何度かやってみてなんとかコツは掴めた。


 もう一回だ。お相手は紫キノコ先生ソロ。よろしく。





 戦闘開始。


 紫キノコ、突撃の構え。


『空気投げ』


 俺はアーツを発動させた。この技、カウンター系なのだ。

 脱力して待つ。


 キノコの全身にポツポツと青い光の筋が見える。


 キノコ突撃。

 アタマを槍代わりに、まっすぐ俺めがけて突っ込んでくる。


 俺は身体をさばきつつ、突っ込んできたキノコの背後から指をキノコ傘のヘリに引っかけた。

 青い光の明滅に腕力を合わせる。力を足して勢いを増す。

 不自然な加速で足がもつれたトコロで傘アタマを押し下げ、足を払う。

 アタマも足も青い光が走っている。それに力の方向を合わせた。


 盛大に転がる紫キノコ先生。


 これがこの場合の『空気投げ』だ。


 ただ転ばせただけ? うん、その通り。


 しかしコレがかなり難しい。特にタイミングがシビアだ。

 勢いを足せるのは一瞬で、アタマを下げて足を払うのもほぼ同時が要求される。


 アーツがやってくれるのは力の流れの表示とそれを弄るタイミング指示。

 青い光の筋と明滅だな。リズムゲームに似ている。

 青い流れに力の方向を合わせ、明滅に力の強弱を合わせる。


 実行部分はゼンブ手動だ。

 マニュアルアーツなのである。オートマではない。

 サービス悪いぞ、『空気投げ』。面白いけどさ。


 しかしコレ、実際の柔道技とはゼンゼン違うんだろうなぁ。

 こんな悪戯か嫌がらせみたいなコトを何度やっても試合で一本は取れないだろう。

 むしろ審判に怒られる。教育的指導だ。


 相手の力に依存した投げ行為をひとまとめに『空気投げ』でくくっている感じだな。

 何度か試してみてそう思った。


 ダメージは『怪力投げ』より小さい。

 これはアーツの強さうんぬんではなく相手が弱いからだろう。

 相手の力を利用する技だから、相手の攻撃力以上のダメージは出にくいのだ。

『格闘』と『投げ技』スキルがLVアップすれば違ってくるかもしれないけど。


 どうも脱力が必須らしく『怪力空気投げ』はできない。

『影縛り』と組み合わせるのも難しい。

 相手の力と勢いに依存しているので、拘束すると動力源がなくなってしまうのだ。

 カウンター技として割り切って使うのが無難だな。


 逆に『空気投げ』で転がした後はなにするのも自由だ。

『怪力』発動させて改めて投げてもイイ。

『吸血』する時間もある。

 対象を変えれば『影縛り』と併用することも可能かもしれない。


 もし可能なら複数の相手にも対応できる。

 これはかなりのメリットだ。

 もうソロの相手求めて彷徨わなくていいのだ。

 アレ手間なんだよな。


 よしよし。

 景気づけにもう一発いってみようか?

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