122 隣り合う『世界』
「ヒジカタくんの場合、『称号』を通じて魔界と繋がってる状態かしらぁ。
『称号』はアバター突き抜けて魂に食い込んでるから。
『魔界』『夢』『D&C』『現界』と貫通して繋いじゃってるのよねぇ」
え、魂に食い込むって。
なにそれ。コワイんですけど。
ひょっとして、リアルの俺にも『称号』ってくっついてるの?
履歴書の資格欄に記入しとくべき?
「まぁ、そんなコワイものじゃないわよぉ。
それに、魔界のプレイヤーなら直接夢の世界にログインできるわぁ。
『D&C』は夢の片隅に置かれてるからねぇ。
当然『D&C』にもネットもヘルメットもいらないわぁ」
なにそれ羨ましい。ゲームし放題だろ。
「まぁ、あんまり自由に入り込むと迷惑かけちゃうから。
本格リンクに向けてイロイロ準備中なわけなのよぉ」
「ちょ、ちょっとッ、カーミラ様⁉」
「おっとっと。
あくまで設定よ、せってい。
今の話ゼンブ、忘れてくれてOKよぉ?」
大将が何故か慌てた顔で手を伸ばしている。
カーミラさんも照れくさそうに手のひら振ってるな。
うん、分かります。
マイ設定て語ると恥ずかしいですよね。
ナニを隠そう俺も自称スーパーレンジャー候補生だった過去がある。
スーパー屋上でのヒーローショーを真に受けちゃったのだ。
『キミも未来のスーパーレンジャーだ!』とかね。
小学生低学年でしたけど。
今も思い出すと足がバタバタします。忘れたい。
「リアルでレンジャーなマスターはオフラインでも、魔界なマスターはオンラインでした。
ということでしょうか?」
どのみち中二病患者じゃねぇか!? 昔の話ですから!
「まぁ、そういうワケ。
イズミちゃんはこういうの抵抗ないかしらぁ?」
「魔界もリアルの世界も、わたしにとっては同じ異世界ですから」
なるほど。イズミはNPCだ。D&C世界の住人といっていい。
カーミラさんは魔界の住人らしいね。
大将もそうなのかな?
「マスターはリアルと魔界の二重国籍?
便利そうですね」
便利、なのか?
今のトコロ授業中に悶え苦しんだだけだぞ。お前の仕業で。
「だけど、わたし達はそれぞれ所属する『世界』が違う、というコトになりますね。その設定ですと」
「そうね。イズミちゃんは聡くて嬉しいわぁ」
花のように微笑んでカーミラさんは『設定』話を続ける。
「『現界』に所属するプレイヤー達。
『魔界』に所属するそこの住人。
そして『D&Cの世界』に所属するイズミちゃんやシロちゃん達NPC。
それらが集まってこの『D&Cの世界』で遊んでいるわぁ。
『魔界の住人』はまだ私達だけなんだけど。
いずれ増えるでしょうねぇ」
そんで俺は重複して所属しちゃってると。
原因は……、アレか。
「俺の二重国籍はやっぱり称号のせいなんでしょうか?」
「それは間違いないわねぇ。
酔っ払ったお偉いさん達の『感謝の気持ち』が『称号』として処理されちゃったんでしょうねぇ。
このゲーム的に」
興味深そうに目を細める。
いや、カーミラさんもその一人ですよね。
「これは私達も予想外だったの。
このゲームって懐が広いのねぇ」
その表現でイイのだろうか。
しかし。
『設定』話は興味深いのだが、直接の解決策にはならなさそうだ。
「だけど、マスターもそんなに気にする必要は無いのでは?
リアルへのシンクロと言っても何分間かだけなんでしょう?」
ああ。それどころか、お前がおとなしくしてくれればゼロ分だよ?
「それは無理です」
イズミは言い切った。一秒の迷いも無く。
お前な。