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錬金堂繁盛記 絵無し版  作者: 三津屋ケン
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010 リトライ!

『影縛り』の呪文を詠唱しながら駆ける。


 呪文は短歌型だった。

 五・七・五・七・七。覚えやすい。

 影の乙女達が気ままに遊ぶサマを写した歌だ。

 呪文が増えたら百人一首ができるな。


 唱え終わると有効射程が判明した。かなり広いな。

 エネミーは1体だけだ。ロックオンして発動。


『影縛り』!!


 ガジガジ草の足下、影から黒い手が数本伸びてうごめいた。

 瞬く間に全身に絡みつく。ちょっとホラーだな。


 ガジガジ草は突進する俺に気付いたようだ。

 しかしガッツリ拘束されて動けていない。

 いくぞ!






 その頭部?に、俺は拳を振りかぶりつつ念じた。


『怪力』!!


 バギィッ!

 異様な手応え。


 頭部をぶん殴られたガジガジ草は大きく身をのけぞらせた。

 ボクシングならフックが一発ヒットしたくらいか?


 当然、それだけじゃダウンはしてくれない。

 困ったのは俺だ。


 腕が、折れた。


「いっだぁあッー!?」


 ヤバイ。超痛い。

 手首の下からポッキリいってしまってる。

 ふだん真っ直ぐな右腕が途中からあさって向いてる。

 奇妙な感じだ。新鮮かもしれない。


 パキンッ。

 薄いモノが割れたような音がした。


 一瞬遅れて、顔面にムチ攻撃がめり込む。

 俺は吹っ飛んだ。これも痛い。


 加減してくれよッ!? ケガ人なんだからッ!


 しかしガジガジ草さんに容赦はない。

 助け合い精神は実装されていないようだ。

 さらにムチを振りかぶろうとしている。


 俺はあわてて距離を取った。


 まだHPバーは半分残っている。

 ムチの射程からは脱出できた。ふう。焦ったぜ。

 もともとガジガジ草はあまり動かないからな。


 放ってきた追撃は、わずかに届かない。

 よしよし。この距離をキープだ。

 落ち着けよ、俺。仕切り直しだ。


 折れた右腕をつかんでムリヤリ元の位置に戻す。いだだだだ。

 すると、なんとシュバッとくっついた。

 おおッ、再生スキル凄い!


 さっきの割れる音は『影縛り』が破られた音だろう。

 あまり長くは持たないらしい。スキルLVも1だしな。


 しかし『怪力パンチ』は封印だな。

 殴るたびにポッキリいってたのでは大赤字だ。

 おそらくキックでも同様だろう。

『怪力』は強力なんだろうが、肝心の俺が貧弱すぎる。

 それでも俺の攻撃手段は『格闘』しかないのだ。

 うーむ。どうしたものか。


 ヒュンッ!

 ムチが襲いかかってきた。あやうく回避する。

 さらにもう一撃。コレも回避。


 うん。回避だけなら俺の身体能力でもなんとかなりそうだ。

 なんとか時間を稼いで『再生』スキルに回復してもらおう。

 ホンモノの鞭はとんでもなく速いそうだが、コイツのムチ蔓はそこまでじゃない。

 太めの縄跳びくらいか。よく見れば怖くないのだ。


 回避に回避を重ねて時間を稼ぎ、ようやくHPバーがおおまか回復した。

 よーし、反撃だ。


『影縛り』は悪くなかった。

 効けば確実に距離を詰めて一撃入れられる。


 問題はその一撃なんだが。

 打撃は自爆で使えない。武器もない。攻撃魔法もなし。

 無い無い尽くしだな。

 弱キャラで格闘ゲームしてる気分になってきた。

 強い奴と対戦していて手詰まりになったときみたいだ。


 ………ふむ。そうだな。それでイイんじゃないか?


 うん。格ゲーでいいや。


 呪文を唱えながら、俺は駆けだした。


 感覚があまりにリアルなもんでビビッてた。

 もっと無責任に楽しめばいいのだ。

 ゲームなんだからさ。


 こういうとき、ゲーセンで俺はどうしてたか。

 思い出せ。

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