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災厄たちのやさしい終末  作者: 2XO
3章 王の宣告と世界の敵
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17.ショートカット!

「で、ラティは何やってんだ?」


 声の方へ駆けつけてみれば大型のクモとクモ糸に捕らわれたラティがいた。


「クモはこの前も見たな」

「ううぅ、忘れてたのに!」


 ……収納したクモのタマゴをを思い出してクローバーが腹を押さえている。

 よしよし速やかに倒そうな。


「ラグナ氏なら来てくれるってラティ信じてた!安全装置のおかげでクモはラティに傷一つ与えられないんだけどこのクモ糸からはラティは逃げることもできず……ああなんてカワイソウなラティちゃん」


 わざとらしい泣き真似をしはじめた。

 身動き取れなくても攻撃を完全にカットする安全装置、なかなかにすごいな。


「助けてくれたらラグナ氏ベタ褒め記事を出すこともやぶさかではないよ?」

「ほう。例えば?」

「見出しは"今大陸で抱かれたい男ナンバーワン!夜這いの帝王ラグナ"なんてどう!?こりゃ視聴率アップ間違いなしですよ!」

「よーしクローバー、先急ぐぞー」

「ああん、まってぇ!!!」






 魔物を倒してラティを助けたところで尋ねてみる。


「ラティ、ツインロッドだっけ?あれは反応してるか?」

「え?そりゃもう、ビンビンのギンギンに反応してるよ!」


 ラティのツインロッド(ダウジング)は事件が起こる場所に反応する。

 この裂け目で起こる事件といえば真っ先に思いつくのはダンジョンの完成だ。

 となるとツインロッドは最奥かヴァナルガンドに反応するはずで、そして裂け目がダンジョン化していないということはヴァナルガンドはまだ最奥に到着していない。



「カニスに追いつける気がして来たぞ。ラティ、俺と一緒に来てくれ!」

「はひ!?そ、そのぅ、"俺の人生について来てくれと"はプロポーズですか!?」

「そこまで言ってねーーーーし、そうじゃなくて案内をだな」

「見出しはどうしようかな……。"ラティちゃん、夜這いされる!?"……うーんイマイチ。"魔人に見初(みそ)められた美少女ラティ!" ちょっとくどいかな?」


 爆速で置いていきたくなってきた。

 必要なのはラティっていうかダウジングなんだよな。


「"小忍ばざれば(すなわ)大謀(だいぼう)を乱る"という言葉がありまして」

「おー難しい言葉知ってるなー」


 小さなことには目をつぶらないと大きなことは出来ないぞって意味だな。ラティの発言に目をつぶれってことね。

 でも思いきり顔背けながら言っても説得力ないぞクローバー。


「やだな、冗談だってば」

「お前が言うと冗談に聞こえなくてな」

「ツインロッドの反応のある方に案内すればいいんでしょ?任せて!」


 旅は道連れっていうしな。

 ツインロッドで行く方向が分かればもう迷うことは無い。


「こっちから反応アリ!」


 それからはロッドが反応する方向へズンズン進む。


 道中は魔物が出るものの俺たちを襲ってくる魔物ばかりじゃなく、既に魔物同士で争い傷ついたり死んでるものも多いから進むこと自体は楽だった。


 倒れた魔物は他の魔物に食われるようで原型を留めていないものが多い。

 見た目が無事なのは異様に硬いやつとか毒を持ってる奴くらいだ。


「……あれ、ここで行き止まりか」

「方角はこっちのはずなんだけどなぁ」

「仕方ありません、別のルートを探しましょう」


 ゴールの方向は分かってるのにわざわざ迂回ルートを探すのか……。


「方向がこっちなら俺はこっちへ行く!最短距離だ!」

「え!?まさか」


 ロッドが示す方向に向けて大剣を振りかぶる。

 剣道はやったことないけど動きは知ってるぞ!


「メーーン!!」


挿絵(By みてみん)


「ニャーーー!?」

「ぴぎゃあああぁあ!?」


 爆音が響いてクローバーとラティが叫んだ。

 壁に叩きつけた大剣は砕けて塵となり、目の前には俺の『武器解放』により大穴、いやトンネルができた。


「カカカ!!!こうすりゃ迷うこともないし最短距離で移動できるだろ!」

「ひゅーーー近道じゃん!ラグナ氏やるぅ!」

「ム、ムチャクチャだこの人!」


 クローバーがヤケクソ気味に叫ぶ。今更だな!

 レースゲームで俺だけがショートカットを知ってるって感じだな!

 大真面目に迷宮を探索しているであろうカニス達に一気に追いついてやるぜ。



「ところで、ラグナ氏はゲッカちんを取り戻したいんでしょ?ゲッカちん見つけたら連れて逃げるの?」

「人さらいみたいでなんかなぁ」


 犬さらい、いや狼さらいかな?


「連れて逃げるのは難しいでしょう」

「どして?」

「カニスは『狼の王』のスキルを持っているのでしょう?王のスキルは同種族に対して何かしらの強制力を持っていることが多いです。操ったり服従させたりね」


 王のスキルってそんな厄介なのか。

 なら魔王は魔族に、人王は人間に強制できる力を持っているのかな?


「ゲッカさんを取り戻す方法は、王狼カニスを倒すかカニスを説得して支配から解くかです」


 やっぱりカニスとの相対は避けられなさそうだ。


 俺たちは武器を使い潰しながらガンガン壁を破壊してショートカットを作っていく。

 いろいろ試した結果、槍投げとかダーツの容量で1点に威力を集中させると前方を一気に削岩できて効率がいい。武器も限りがあるから効率よくやっていこう。


 『武器解放』による武器ミサイルは武器の質によって威力はまちまちだ。

 岩や枯れ木で作った武器だと大した威力にならないけど盗賊から奪った鉄の武器は威力が飛躍的に上がる。バフォメットと戦った迷宮で造った武器はさらに高威力。


「こんなに大穴開けまくって崩れないのかな?」

「裂け目ですから崩れはしません。虚無に繋がることはあるかもしれませんが」

「虚無って?」

「亜空間である裂け目に何らかの方法で空間の外まで続く穴を開けるとその先には一切の物体が存在しない虚無の世界が広がり、一度虚無へ踏み込めば二度と戻ってこれないと聞いています」


 なにそれこわい。

 固い壁に阻まれてるからそうそう虚無へ繋がることはないらしいけど気を付けよう。くわばらくわばら。



「たーまやーーー!!!」


 武器ミサイルを投げるのも慣れてきた。


 奥まで来たせいか魔物の数もだいぶ減ってきている。

 その分生存競争に生き残った強い個体が増えて来たけどそれも武器ミサイルでまとめて撃破だ。


「ラグナ氏!反応がヒジョ~~に近いよ!」


 ラティが興奮気味に騒いでいる。

 目的地は目前だ!

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