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災厄たちのやさしい終末  作者: 2XO
3章 王の宣告と世界の敵
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3.夢の中で

 ◇


 どこまでも続く白い空間を俺は漂っていた。

 足元がフワフワする。


 ここはどこだろう、来たことがある気がする。

 いつ来たんだっけ。

 多分、生まれる前とかに。



『こんにちは。この世界にも慣れてきたようですね』


 !!!!!


「天使たち!」


 思い出した!

 地球で俺が死んだ後、この世界に転生する前にいたところにそっくりだ。

 そして靄のかかった世界に響く声。俺を転生させた"調停者"であり天使たち。

 でもどうして俺はここに?


『ここはあなたの夢の中です』


 俺の考えを見透かしたように天使が教えてくれた。

 夢の中か、こんな俺の夢の中までようこそ、ちゃんと片付いてるかな?白と靄しかないか。

 お茶とかは……あるわけないな、たいしたお構いもできませんで。


「俺に何か用が?」


 夢とは言っても天使たちが用もなく俺の前に姿を現すとは思えない。


『単刀直入に申し上げます。災厄と呼ばれる体を持つにも関わらず、問題らしい問題も起こさず頑張ってるあなたの願いを1つ叶えることになりました』

「え、まじ?」


 山を崩したり沼壊したり、正当防衛とはいえ賞金稼ぎ亡き者にしたこともあるけどどうやら天使の中では問題らしい問題に入らないようだ。

 全方面に戦争吹っ掛けてあらゆる災厄を巻き起こしたとかいうかつての魔人に比べればマシか?


『何か望みは何かありますか?』


 あるよ!あるある!まさにある!


「飯!地球の飯が食べたい!」

『食事ですか。それでは"望郷の遺構"へ行くと良いでしょう』

「ありがとう!行ってみる!」


 叶えてくれるらしい。

 ネコを頼んだらネコミミ少女を派遣する天使たちなので希望のナナメ上のものが出てくるかもしれないけど、当たらずとも遠からずって感じで叶えてくれるはずだ。

 そうだ、この機にお礼を言っておこう。


「この体にはいろいろ思うところあるけど犬とネコありがとう!めっちゃいいよアイツら!」


 この体は控えめに言っても事故物件。具体的に言えば大陸中から命を狙われるようなヤバイ奴だし怒ると記憶の中のラグナが殺せ殺せコールしてくるのも無視できない。

 でもめちゃくちゃ頑丈で強いし使ってると愛着もわいてきた。いい体してるしな。

 そしてゲッカとクローバーにはとても助けられている。ゲッカはいなくてはならない相棒だし、クローバーには知識面でサポートしてくれる。


『彼らについてはいろいろありまして、難題を抱えた子を送ることになってしまって申し訳ありません』


 申し訳なさそうな天使の声。


「あー、確かにクローバーの方はタブースキルにお尋ね者と無視できない爆弾を抱えてるけど、それ以上に助かってるから大丈夫だ!何かあってもこの体で守ってやれるし!」


『えっ』

「え?」


『ネコ?犬の方ではなくて?』

「えっ」


 ゲッカに問題はないよ?()いて言えばちょっとかじりクセがあるくらいだけど。


 ……あの。

 もしかしてゲッカもワケアリ物件なんです?


『……あなたへのお詫びとしてあなたの願いを聞き入れました。これで私たちの役目は果たされましょう』


 え。いやマジで待って。

 勝手に話を終わらせる雰囲気に持っていかないで。


『あなたならきっと乗り越えて行けると信じております』

「おおい待て!ゲッカは何の問題を抱えてるんだ!?」


 せめて問題の内容だけでも教えて!?


『あなたの旅路に幸多からんことを。さぁ、目覚めなさい……』

「ちょっと待たんかい!!!??!?」




 ◇



「ヴァウヴァ!」

「はっ!?」


 ゲッカの鳴き声で目を覚ます。

 目の前には視界いっぱいのゲッカが顔をなめている。おおう、くすぐったい。

 ここはどこだ?


「ラグナさーん、いつまで寝てるんですか?もうお昼ですよ」

「夢か……」


 今回も一方的に話を打ち切られて強制的にお目覚めコースだった。

 あの天使達ちょっといろいろ雑過ぎんか?


挿絵(By みてみん)


 ◆


「クローバー、"望郷の遺構"ってとこ行きたいんだけど場所分かるか?」


 遅めのブランチ中に聞いてみる。


「どこで聞いたんですがその名前」

「お告げで聞いた」


 眉をしかめられた。


「そこに行けばもっと旨いもんが食べられるはずなんだ!」


 ……。

 クローバーがバカを見る目をしている。

 そういう顔をするんじゃない。本当にお告げとしか言いようがないから仕方ない。


「"望郷の遺構"はここより東にある建造物です。神々の御廟(ごびょう)の1つですね」


 神々の御廟なのか。

 御廟には光の柱があることが多いからますます気になってきた。

 俺のタブレット、またアップデートできるかな?


「神々の御廟って大昔、神がいた時代に造られた神のための建造物なんだっけ?望郷の遺構はどんな施設だったんだ?」

「拷問施設ですねー」


 なんか物騒なワードが帰ってきた。血なまぐさい建物だったんだろうか。


「本当に行くんですか?」

「イエス!」


 そこに行けばきっと美味しいものが手に入る、はず!

 天使たちは俺の希望からちょっとズレたものを用意してくるけど、そしてそのズレたものがまさに俺と会話しているネコミミ娘なんだけど、でも素敵な贈り物をくれた。


「ヴァウウン」

「ゲッカはどうだ!?もっといろんな物を食べたいと思わないか?この世界にはまだまだお前の知らない味があるんだぞ!」

「ヴァフ?ヴァウ!ヴァウ!」


 ゲッカは興味を持ったようだ。食への関心はクローバーより高いな。


 天使達の発言からゲッカのこともいろいろ気がかりだけど、今何かできるようなこともない。

 そもそも何がワケアリなのかも分かってない。とりあえず天使たちは望郷の遺構に行くと良いだろうって言っていたから望郷の遺構へ行った後に考えよう。


「分かりましたよ、案内すればいいんでしょう。望郷の遺構ならそんなに遠くもありません」


 ここから徒歩でも3~4日くらいあれば着くそうだ。

 そうと分かれば善は急げだ。

 サクッと行ってこよう!

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