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災厄たちのやさしい終末  作者: 2XO
2章 犬とネコとの冒険
19/163

9.ノームの洞窟

 目を覚ませば見知らぬ天上が見えた。


 ここはどこだろう。

 洞窟の中?それにしてはなんか体がモゾモゾする。


「ここは……?」

「でかいのが目を覚ましたぞー!」


 ええ、でかいのって言い方は乱暴じゃない?

 そのくらいで怒りはしないけど。


「ちょっと!起きるのが遅いですよお!」

「ヴァウアウ!」


 クローバーとゲッカの声が聞こえる。

 えーと、どういう状況だっけ。俺たちは確か風竜の攻撃で山から落ちて……そうだ!


「ゲッカ、クローバー!2人とも無事か!?」


 慌てて上半身を起こすとブチブチ!と何か引きちぎるような音がした。

 何の音?


 辺りを見渡すとゲッカとクローバーが床に寝ていた。

 おいおい、起きてるなら体を起こしなさいお寝坊さんだな……ん?


 よく見ると2人の体は小さなロープで縛り上げられていた。

 ガリバー旅行記みたいだ。


 そして目の前で20センチくらいの妖精のような人たちが右往左往していた。

 小人だ!

 皆帽子をかぶってるのはファッションかな?


「でかいのが拘束を解いたぞー!」

「落ち着いて武器をとれー!刺激するなよー!」


挿絵(By みてみん)


「拘束?」


 足に巻き付いていたロープをちょいと引っ張ると簡単にちぎれた。

 だんだん理解が追い付いてきたぞ。


 どうやら山から落ちた後、小人達に発見されて縛られたようだ。でも俺のだけ拘束がやけに柔くない?

 

「おいおい、縛るならもっとちゃんとしたロープ使わないと」

「ロープがちぎれたー!」

「こんな簡単にちぎるなんて……」

「なんなんだこいつの力はー」


 ……彼らなりにちゃんとしたロープを使っていたみたいだな、やわいとか思ってごめん。


「ヴァウヴァウ!」

「動けるならボク達のことも助けて下さいよ!」


 そうだった、助けてやらないと。


 定期的に言うけど俺は腰布の下は何も穿いてない。

 だから小人達がたくさんいる前で立つのは大変躊躇いを覚える。

 なので仕方なく膝立ちでゲッカ達の方へ行こうとしたら小人達が武器を構えた。


「動くな!」

「お、おう……」


 小人達が一斉にこちらに武器を向ける……んだけど、剣が爪楊枝に見えるとか言っちゃダメだよね。

 絶妙に歯の間を掃除するのにちょうど良さそうなサイズだな。


「ヴァウッヴァウ!!」

「お、ゲッカは怪我なさそうだな」


 炎で自力で拘束を燃やしたゲッカが駆け寄って来る。

 でも炎を纏うゲッカを見て小人が大慌てで口々に騒ぎだす


「おろかものー!この洞窟は火気厳禁!!」

「この山には爆裂花がはえてるんだぞ!!」

「爆裂花?」

「火で爆発する花だ!」


 爆発はまずいね!?


「だそうだゲッカ。火を消し……へ、へ……」

「ヴフン?」


 突然鼻がムズムズしだした。

 なんか、鼻に、入って……。


「へーーっくしゅん!!!!」

「「「うわあああああーーーーーー!!!!」」」


 くしゃみで小人が飛ばされた。


「マ、マジョリ!ゲルニカ!ラヴィーーー!!!!」


「ご……ごめん」


 ふきとばされた小人達は意識を失った。

 くしゃみって時速2~300kmあるらしいね。いやホント申し訳ない。


「これだから大きなヤツはイヤなんだ!」

「こんなやつにおれたちの命運はにぎられるのかー!」


 すっげー悪者扱いされてるけどとりあえず話そう?話せばわかるはずだ。


「やむをえない!」

「サレ!?」


 小人達の1人がクローバーのもとに駆け寄った。

 細い首に爪楊枝剣をつきつける。


「それ以上近付けば、この女がブジではすまないぞ!」

「わ!?ちょっと勘弁してくださいよ、早く助けて下さい!」


 身動きの取れないクローバーが焦るけど他の小人達もギョッとしだした。


「サレ、いくらなんでも女の子供を人質にとるなんて!」

「仕方ないだろー!おれたちにも家族がいる。ただでさえおれたちは弱い生き物なのにこれ以上奪われれば本当に終わりだー!やるしか……やるしかないんだー!」

「サレ……くそーっお前にだけに汚れ仕事をさせられるかー!俺もやる!」

「不名誉をこうむるのは皆一緒だー!ぼくもやるぞー!」

「いや、そこは止めるところでしょう!!?」


 クローバーの全力のツッコミも虚しくクローバーの元に小人達が群がっていく。

 罪を1人にかぶせないよう小人達みんなで1本の爪楊枝剣を握った。

 1つの武器をみんなで持つのって結構熱いシーンだよね。


 だけどね、とりあえず。


 パキッ


 爪楊枝剣を軽くつまむとパスタみたいに割れた。


「とりあえずウチのネコを解放してくれ」



 ◆



「えーとまず、俺たちが君たちの住処へやって来て迷惑かけたのは悪かった。でも俺たちは君たちをどうこうするつもりはないので安心するように」


 小人達への説明タイム開始だ。

 小人達は小さいので俺達は床に座っている。


「本当にー?」

「嘘だー!そう言って油断させてところで根こそぎ奪っていくんだ!」

「ボク刃物まで突きつけられたのにこの言われようひどくないですか?いっそお望み通り略奪しても良いのでは?」

「気持ちは分からなくもないけどダメ」


 小人達は本気で怯えているし俺も穏便に済ませたい。

 すると小人達の中でもひときわ立派な帽子の女が現れた。


「皆、やめよ。我らをどうにかするつもりがあれば、とっくにやってるだろう」

「長!」


 この立派な帽子が代表みたいだ。


「私はノーム族の長エアルス。非礼を詫びよう旅の方々よ。見ての通り我々は小さく外敵が多い。ひっそり生きる臆病者ゆえの狼藉、どうか許していただけないだろうか」

「あ、いやまぁ、こちらこそ吹っ飛ばしちゃったりして……」


 くしゃみは生理現象で吹っ飛ばそうと思って吹っ飛ばしたわけじゃないんだけど謝っておこう。

 っていうかマナーとして人向いてしちゃいかんよな。ノームにとっては命に関わるし。




 エアルスの話によれば、ノームの住処に俺たちが突然落下してきた。

 そして俺は背中から地面に落下して盛大にめり込んだもののゲッカとクローバーは俺が抱えて俺の腹の上に乗っていたので無傷だったそうだ。

 つまり地面に直撃して怪我したのは俺だけか。


「怪我してませんけどね。どれだけ頑丈なんですか?」


 ホントにね。この体の耐久力にびっくりだよ。


 小人のノーム族は弱い種族だ。

 人に見つからないよう隠れて生きてきた彼らの元に突然降ってきた俺たちは天災にも見えたそうで一族の終わりを覚悟する者もいたようだ。


 ゲッカとクローバーが『さすが歩く災厄』『終末の王は伊達じゃないですね』って目で俺を見ている。

 いや落下は俺のせいじゃねぇ!ドラゴンのせいだから!


 兎にも角にもこちらに敵意がないことはノーム達に伝わったようだ。


「迷惑ならすぐ出ていくけどさっきただでさえ奪われてるのに、とか言ってたよな。何かあったのか?」


 クローバーが『え、関わるんです?さっさと先行きましょうよ』って目をしてるけど気にしない。


「風竜は遠く南の方へ飛び去ったと報告を聞いています。我々の問題は我々の問題。旅人様が気にされるようなことではありますまい」

「さっき奪われてるって言ってる奴がいたけど」

「……!」


 エアルスが動きを止める。

 ノーム達はどこか怯えるような、縋るような表情を向けている。

 やっぱ何かあるみたいだな。


「ここで会ったのも何かの縁。迷惑かけたし、言いたいことがあるなら話を聞くぞ」

「ええ!?疲れてるんですから大人しく出て行きま「ヴァウウ!」うぎゃ!」


 不満げなクローバーはゲッカが飛び掛かって黙らせる。

 ナイス。


 ノーム達の反応を待つと、暫くしてエアルスが口を開いた。

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