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災厄たちのやさしい終末  作者: 2XO
2章 犬とネコとの冒険
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6.シエル山脈の魔物

 こんにちは、沼を潰してしまった俺たち一行です。


 俺"たち"ではない、とゲッカの目が言っている。

 沼を潰したのはラグナさん1人ですとクローバーが言いたげだ。


 まぁほら、なんだ。俺たちは今3人で行動している運命共同体だ。

 責任も共同……ごめんごめん悪かったって。



「武器を爆発させるスキルでも持ってるんじゃないですか?」

「そんな魔法は覚えてないぞ?」


 タブレットにそういった類の表記はなかったし。


「魔法ではなく常時発動(パッシブ)スキルか、固有(ユニーク)スキルでそういうのありません?」

「パッシブ?ユニーク?なんだそれ」

「何かしようと思わなくても常に発動するのがパッシブ、生まれた瞬間から備わっている種族由来の能力がユニークです」


 スキルにも種類があるらしい。

 タブレットには書いてなかったけどステータスにはまだまだ俺の知らないことがあるな。



 沼を発った俺たちは山道を歩いている。

 生物はクローバーの魔法では収納できないから沼で捕まえたカエルは俺が背負っている。でかいカエル担いで山登りしても疲れない魔人の体はありがたいな。

 これから餌にされることも知らずに深い眠りについているゴルファフロッグに合掌。


 カエルを持つ代わりによく使うタブレット以外の荷物はクローバーの収納魔法に入れてもらった。今さら盗むことはないだろうけど万が一の時はゲッカが懲らしめてくれる。


「サンドアングラーの生息するロス・ガザトニアへ行くには4つのルートがあるんです」

「この山派そのうちの1つか」

「ええ、一度罠にかかれば二度と陽を拝めないと言われる危険生物イワジゴクの生息地ですが、比較的安全な"シエル山脈"ルートです」

「前半の文と後半の文がまるで一致してなくない?」


 二度と陽を拝めないって言わなかった?

 事前の説明で危険な場所なことは覚悟してたけど。


 というか迷宮から出てクローバーと会ったのは山、ここも山。

 また山かと思う気持ちがないと言えば嘘になる。せっかくだしいろんなとこ行きたい。


「ちなみに他のルートはどんなの?」

「生物を溶かす酸を噴き出す人食い植物だらけの"人食(ひとは)みの森"を渡るか、およそ20キロの底なし沼が続く"ゼツコロ洞窟"を抜けるか、触れるとゾンビになる腐肉血花が群生する"天然要塞シネナノ"を経由するか……」

「オッケー。シエル山脈でいいぜ。いいルートだ」


 俺はこの世界に来たばかりだし()り好みはよくないな!

 それに改めて見たらなかなかどうしてこの山道も良い景色じゃないか。


 これで比較的安全とかサンドアングラーが市場に流通しない理由が分かった気がしたわ。



 ◆



 イワジゴクの生息地と言うだけあってイワジゴクという名前の魔物をよく見かける。

 アリジゴクの岩石バージョンのような魔物で、踏み込むと崩れる岩石の罠を作る大きな虫だ。

 一度罠にハマるとそのまま中央にいる頑強なイワジゴクの元まで滑り落ちて顎で嚙み砕かれる危険生物だ。

 でも自分から襲ってくるような魔物ではないし、罠のある所は岩が不自然に盛り上がって一目瞭然なので俺たちはイワジゴクを避けて先を目指す。


 けれども避けられない魔物もいるようだ。


-----------------

 種族:オオイワジゴク

 LV:57

 HP:1837/1837

 MP:165/165

 速度:16

-----------------


 イワジゴクの上位種、その名もオオイワジゴクの罠が山道を塞ぐように展開していた。


 オオイワジゴクは岩石を鎧のように纏い、鍵爪の形状の棘が無数に生えた巨大なワーム型の魔物だ。大きく開いた口からはおぞましい無数の牙が覗く。 


 何よりも目を引くのは岩の罠で岩の流砂が渦のようにオオイワジゴクの周りを流れていて一目でこれ巻き込まれたらアカンやつだと分かる。

 あの罠どうやって展開しているんだろ、魔法かな?


「あいつを倒さないと先へ進めないみたいだな」


挿絵(By みてみん)


「ヴァオアオ!ヴァウン!」


 ゲッカが虫を向いて吠えた。

 この吠え方は……。


「お、あの虫魔片を持ってるのか。よく見つけたぞゲッカ!」


 オオイワジゴグの顎の下にキラリと光る赤い石。物の力を引き出す魔片だ!


「迂回もできなくはないですが魔片を持ってるならラグナさんとしても無視できませんよね」

「よく分かってるじゃないか」


 魔片を取れば新しい魔法を覚えられるしLVの上限も解放される。

 取っておくに越したことはない。


「よーし、イワジゴクの魔片いただいていくか!」

「ええ、ラグナさんの力の一部ですからね。手に入れましょう!」


 うん。



「えっ?」

「えっ?」


 待って。今なんて言った?


「え?魔片、いや魔人の欠片を手に入れましょうって話を」

「魔片ってもしかして魔人の欠片の略!?」

「魔片にはあなたがかつて奪われた力が封じられてるんですよ!?あなたの胸に本体があるじゃないですか!」

「そういうやつだったのか……!」


 魔片を集める度にLV上限が上がりスキルポイントも増える。そういうシステムなのかなと思っていたけど違った、逆だ。

 この体が元々持っていた力を取り戻していたんだ。


「自分のことまで知らないんですか!?」

「……記憶喪失ダカラネ」

「知らないにも限度がありま……もが!」


 ちょっと黙っててね。

 小さな口に指を2本突っ込めばクローバーはモゴモゴと声を出せなくなる。

 いや、むしろ逆になんでみんな俺のことを俺以上に知ってるんだよって思わない??


「魔片の話は後!とにかくあの虫を倒すぞ!」

「ヴァン!」

「ふぁい」


 巻き込まないように背負っていたカエルを降ろして戦闘だ!



 オオイワジゴクを中心に渦巻く流砂に巻き込まれるのは避けたい。

 ゲッカが近付こうとしない辺り危険さが伺えるな。

 俺の体はチート耐久だから案外大丈夫かもしれないけど危ない橋は渡りたくない、とくれば。


「よっしゃ、魔法使うか!」

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