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災厄たちのやさしい終末  作者: 2XO
2章 犬とネコとの冒険
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4.旅は道連れ余はネコだ

 朝になって。

 クローバーは俺たちに付いてくる気満々だった。


「ボクの収納魔法を見たでしょう!荷物持ちできます。生き物以外なら入れられますよ!」

「お前の収納魔法を見た上で言うけど荷物盗んだお前に荷物任せるって不安しかないぞ」

「ヴァウゥ」


 ゲッカはまだ荷物を取られたことを根に持っている。


「絶対盗みませんって。ボクは安全な環境が欲しいんです。追手は間に合ってますから」

「お尋ね者だしな」

「記憶がないんでしょう?ボク目的地まで道案内できます!荷物が持てて案内もできるネコはどうですか!」

 

 売り込んでくるね。盗みではなく自分を雇えとアプローチしてきた点は褒めてあげよう。

 案内と荷物持ちをするから食事と安全の確保を要求してるわけか、この世界のことを知らない俺には渡りに船と言える。


挿絵(By みてみん)


「ゲッカはどう思う?」

「ヴァフン」


 俺に任せるようだ。


「それに、商人に取り入る方法だって考えてますよ!」

「ふーむ」


 案内以外にもこの世界についていろいろ聞けるだろうし連れて行くメリットは十分ある。出会いが出会いなので荷物の心配はあるけど賞金稼ぎと違ってまともに会話ができるし。これ重要。



 それと別の意味で気になってることがある。


 自称天使達に俺は犬やネコを飼いたいと言ったけど。

 あの天使達が連れて来たネコってクローバーのことだったりする?


 ゲッカの時も犬が欲しいと願ったら狼が来たけど犬と狼は近いから誤差の範囲だろう。

 でもネコが欲しいって願った結果ネコミミ少女が来ると思います?

 嫌ってわけじゃないんだよ、思ったのとかなり違ったってだけで。


 まぁいいか。


「分かった、ついて来い。ただし言うことは聞いてもらうからな」

「ありがとうございます!もちろん指示には従います」


 手を上げて喜びを表現するクローバー。笑顔はなかなかかわいいもんだ。


「で、商人に取り入る方法ってのは?」

「道すがら説明します」



 ◆



 俺たちはゴルファ沼と呼ばれる湿地帯に来た。


 陽は高い木々に遮られて薄暗く鬱蒼と茂る植物が膝元まで伸びる。

 厄介に虫に刺されたりしないよう気を付けよう。

 ゲッカはふさふさの毛皮が生えてるしクローバーもフードマントとブーツがあるけど俺はけっこう肌出してるから……いやサソリの針も刺さらなかったし大丈夫かな?


「商人から物を買うならただのお客さんです。だから物を買うのではなく、ラグナさんでないと用意できないような商品を卸して関係を作っていくことを推奨します」

「なるほど」

「ヴァッフ」


 沼の比較的開けた所で休憩中にクローバーの説明を聞く。


「この猪の肉とかも売れるかな?」

「魔猪はDランクの魔物ですから商人からすればわざわざラグナさんから買う必要はありません。少し腕の立つ冒険者なら狩れますから」


 魔物や人間の脅威になる生物には冒険ギルドという人間の組織によってランクが定められている。

 ランクはS、A、B、C、D、E、Fの7つで戦闘力以外にも凶暴さ、狡猾さなどを加味して決定されるそうだ。


 Fランクは無害な一方、Aランクになれば騎士団が出るか大規模な討伐隊が組まれる程の脅威度と言われている。

 さらに人の手ではどうしようもないような災害級の生物がSランク。

 ちなみに200年前の俺は堂々のSランクだそうです。でしょうね。


「先に言っておきますが、どんなに良い品を用意したところで人に会うこと自体リスクがあります」

「だよなぁ」

「封印が解けたことは人間達も気付いてましたから、彼らはラグナさんを探すはず。商人にはラグナさんと取引するフリをして国や報告して謝礼を得る選択肢だってあります」


 物を盗んだクローバーが賞金首になるんだから災厄の化身だって賞金かけられるだろう。絶対クローバーより高額で。

 200年も経ったし時効とかならないかな?ならないか。


「ならラグナさんの情報を売る利益より取引の方が美味しいと思わせてればいいんです。謝礼は一度きり、でもラグナさんと取引すれば継続する限り稼げます。取引の方が遥かにおいしいと思わせれば勝ちです」


 商人は利益を最優先する人達。商人なら俺との取引が儲かると思えば俺が相手でも取引を続けてくれるだろうってことね。


 ……ところで気になることがあるんだけど。


「封印が解けたことを人間が気付いてたって見て来たかのように言うんだな?」


 俺が目覚めたのつい最近だし、お尋ね者で賞金稼ぎから逃げていたクローバーが人間の街に行けるわけがない。


「そうですよ。ボクには耳がたくさんあります」


 クローバーが悪戯っぽく自分の耳をちょこんと指す。いちいち動きが可愛らしく見えるのが悔しいところ。


「……人間の情報を得る手段でもあるのか?」

「そう思っていただいて結構です」


 詳細を話す気はなさそうだけど情報には自信があるようだ。


「本題ですが商人に取り入る方法は簡単です。あまり流通しない、高額で売れることが確約されている商品を用意する。これだけです」

「簡単に言うけどそんな都合のいい物があるのか?」


 確実に売れることが約束されているなら誰もが手に入れようとするはず。にも関わらず供給が追い付かないということは入手が難しいのだろう。


「西の荒野に棲む魔物の素材が高額で売れるんですよ。子供でも知ってます」

「知られてるのに流通しないってことは」

「お察しの通り、Bランクの危険な魔物です。しかも住処に辿り着くまでに難所が続く上、倒した所で素材は大きく日持ちもしない。行くのも大変ですが持ち帰る時の難易度が高いんです」

「危険なのは構わないけど持ち帰りが大変って件は?」

「ボクには収納魔法がありますし、収納魔法の中は時間の経過が非常に遅いので保存も問題ありません」

「お前の魔法便利すぎかよ!?」


 手ぶらで荷物を運べるうえに鮮度も保てるクローバーがいれば運搬問題もクリア。

 商人も無下にできない市場に流通することが稀な魔物を卸そうってわけだな。


「よーし分かった、異議なしだ」

「ヴァウ!!」


 やることが決まった所でちょうど食事も終わり。

 手を合わせてご馳走さまでしたっと。


「昨日から思ってましたがなんですかそれ?」

「食事に対する感謝の挨拶だよ」


 ピンとこないらしい。

 食事の前と後の挨拶は知らないのかな、おいおい教えていくとしよう。



「これから獲りに行く魔物ってどんなヤツだ?」

「砂怪魚、通称サンドアングラーと呼ばれる乾燥した地に住む巨大な砂魚です。心臓や肝が治療薬の材料として使われますし、肉は食用骨も加工して武器に使われる、全身売れるおいしい魔物です!」


 おお、凄そう!!

 ん?乾燥した地?


 ここ沼だけど、こんな所にいるの?


「サンドアングラーは渇いた砂の中に生息しているため遭遇が難しいですが音や振動に敏感です。この沼のゴルファフロッグは大声で鳴く際電気を放つ魔物なので囮餌に良いんですよ。捕獲してから行こうかと」

「急がば回れってことか」


 そういうことならやってやろう!

 

「まぁ問題があるとしたら」

「え、問題?」

「ヴァウ?」

「ゴルファフロッグを生かしたまま難所を超えてサンドアングラーの住処へ運ばないといけないことですね」


 ……それって餌なしでサンドアングラーを探すのとどっちが難しいの?

おまけ。


◆脅威度ランク

人間が相手にした時の脅威度。S~Fの7段階。

強さ、好戦的か、群れで行動するか、武器や罠を使う知能があるか等から判断される。


S:天災クラス。人の手に負えない脅威。

A:騎士団の精鋭が派遣される。大勢の熟練の冒険者を含む討伐隊が組まれる。

B:騎士団が派遣される。一流の冒険パーティに指名で討伐依頼が出る。

C:領主の私兵団が派遣される。実績のある冒険者にのみ討伐依頼が出る。

D:一人前の冒険者向けの討伐依頼が出る。

E:駆け出し冒険者向けの討伐依頼が出る。

F:ほぼ無害のためよほどのことがない限り討伐依頼は出ない。



◆冒険者ランク

どのくらいの難易度の依頼をこなせるかのランク。S~Fの7段階。

該当の脅威度の魔物を倒すか相応の実力があるとギルドに認められることでランクが更新される。


脅威度Cの魔物を討伐できる、もしくは脅威度Cの魔物の討伐に相当する難易度の依頼をこなせればランクCの冒険者。

1章に出てきたガソッドは魔片の強化によるものですが冒険者ランクC、攻撃力はB並なので結構な実力者でした。

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