24.インクナブラ再訪
俺たちは大陸南東、砂漠の街インクナブラを目指している。
ダンジョン村を出て3週間くらいかな。
遠征中の大きな出来事といえば。
1つ。ドワーフ親子のパワーズ・ワポルとレイロック・ワポルのスカウトに成功。
2つ。今度は商人とのやりとりをクローバーのネコ召喚を利用してダンジョン村で行うことになった。あとダンジョン移住希望者を商人に探してもらうことと香辛料の流通の約束を取り付けた。
3つ。シエル山脈で進化したウィトルを三番目の眷属に迎える。そして魔族のタージグレを撃破。ただシエル山は瘴気で溢れて人の住めない地になってしまった。
4つ。ノーム・リザードマン・ハルピュイアの移住が決定。ノームとリザードマンはワポル親子と一緒にドワーフハウスでダンジョン村を目指す。
ついでにタージグレが持ってきたものとウィトルが奪われたもの併せて4つの魔片を入手した。
魔片をウィトルに渡そうと思ったけれど、進化&俺の眷属になったことで魔片無しでも十分に戦えるようになったので俺に返すと言っていた。
確かに魔片による強化より俺の眷属になったことによる強化の方がステータスアップ著しそうだもんな。HPだけ見ても+500されるし。
魔片も増えたし新しい魔法も覚えたいところだ!
というわけでステータスチェック。
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名前:ラグナ
種族:魔人
LV:22/24[LIMIT]
HP:5552/5552
MP:511/511(+106)
攻撃:4983
防御:4073(+179)
魔法:4060
抵抗:2123
速度:188(+82)
【固有スキル】『異邦人E』『狭間の王』
【常時発動スキル】『武器解放SS』『常在戦場』
【所持スキル】『災厄魔法』『憤怒D』『神殺し』
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名前:ゲッカ【魔人の眷属LV1】
種族:マーナガルム
LV:84
HP:2266/2266(+555)
MP:586/586(+40)
攻撃:2565(+498)
防御:2024(+389)
魔法:2032(+406)
抵抗:2110(+212)
速度:824(+10)
所持スキル
『惨劇の狼』『悪食A』『月の加護B』
『神速S』『毒耐性B』
『解析A』『炎魔法B』『闇魔法B』『影潜り』
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名前:クローバー【魔人の眷属LV1】
種族:キャスパリーグ
LV:48
HP:729/729(+555)
MP:1100/1100(+40)
攻撃:697(+498)
防御:473(+389)
魔法:1183(+406)
抵抗:867(+212)
速度:229(+10)
所持スキル
『破滅の怪猫』『猫の王』『亜空間S』
『博識A』『並行処理C』
『改竄』『収納魔法』『召喚魔法』
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こんな感じ。順調に強くなってるぞ!
あとこの場にはいないけど眷属になったウィトルも見ておくか。
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名前:ウィトル【魔人の眷属LV1】
種族:ドラゴニュート
LV:53
HP:1830/1830(+555)
MP:319/319(+40)
攻撃:2046(+498)
防御:2184(+389)
魔法:1762(+406)
抵抗:1071(+212)
速度:146(+10)
所持スキル
『再生力C』『雨乞』『水操』
『剛勇』『武道の心得B』『水中移動』
『乾坤一擲C』『砲撃技術C』
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素早い上にステータスバランスが良く闇魔法でなんかすごいことできちゃうゲッカ。
発展途上なものの便利スキルでステータス以上のポテンシャルを持つクローバー。
雨を操り自分の有利な地形を作れるウィトル。
そしてステータスがとにかく高い上にいろんな災厄魔法を使える俺。
村もできたし、住人も増えていきそうだし、鍛冶ができるドワーフも雇えたし物資を用意してくれる商人とも関係は良好だしなんかもういろいろ順調だな。
その気になれば世界征服とかできるのでは?やらんけど。
今はこの大陸の支配権をかけた戦争の真っ只中だけど俺の目標は平和に暮らすこと。
安全のためには危険を排除する力も必要だ。穏やかに暮らすために穏やかじゃない準備をするって皮肉だけどやらないわけにはいかない。
村の防衛なら番犬がいるけど戦闘慣れしたリザードマンが村に来ることで狼たちにできないヒトの手による防衛も可能になる。
クローバーによると人間がこの村に攻め込む動きを見せているので戦力は増やしておくに越したことはない。
「そろそろ休憩するぞー!」
手を大きく振れば、上空を飛んでいるハルピュイア達が悠々と翼をはためかせてこちらに降り立りてきた。
ハルピュイアの里で合流した3組の若い家族だ。
ハルピュイアはダンジョン村への移住に積極的だけど一度に一族で移動は難しいということで、先に若いハルピュイア達をおためしで移住させることにした。
インクナブラに寄り道することになったけど、移動に特化した種族だけあって俺たちのスピードに問題なく着いて来れるし上空から魔物も探してくれる。
「ゲッカのスピードに付いてこれる上に目も良い鳥人って頼りになるな」
「人間達が連絡係として重宝するくらいですからね。扱いは置いといて」
「薄給労働に飽き足らず隷属の首輪つけようとしてたもんな」
重宝するなら待遇よくしてやればハルピュイア達も俺たちのとこに移住しようとか考えなかったかもしれないのにな。まぁ因果応報ってことで。
速い速度で空を飛べるハルピュイアの索敵能力は一線を画す。
「ハルピュイアに村の見回りとか頼むのもアリかもな」
「目の良さと飛ぶ速さには自信あります!」
「戦いが苦手な私たちでも貢献できる仕事があるなら喜んでやるわ」
「お、やる気じゅうぶんだな!」
それじゃ村に帰ったら試験的に哨戒とか任せてみよう。
◆
「大陸最大の砂漠、モートゥス砂漠に着いたのでそろそろインクナブラが見えてくると思います。方角は……」
「あ、いいわ。言われなくても分かったから」
ありましたよ前来た時に俺が放った光を奪う闇の災厄魔法。
まだ朝だってのに一帯だけ上空にすげー真っ黒な空間が浮かんでるんですわ。あの黒い空間の真下にインクナブラがあるから一目瞭然なんですわ。
闇の災厄魔法"黒の行進"、消費MPが他の魔法に比べてかなり少ない上に直接的な殺傷力もないから無害な魔法じゃーん!て気軽に使ったよね。災厄な魔法ってこと忘れてた。
もう光を奪って一ヶ月くらいになりますかね、さすがにアレはよくないね。
宗教と交易の盛んな都市で光がないとかね。ゲインから苦言が来るわけだよ。
「人間に積極的にケンカを売りたいわけでもないし、ヘイトもらう前にとっとと闇魔法消して帰るか」
「ヴァウゥ?(訳:ヘイトとかとっくにカンストしてない?)」
「手遅れすぎますね」
「シャラップ!!」
分かってる、言ってみただけだから。
それはそうとして。
「災厄魔法ってどうやって消すんだろうな」
「ラグナさんの魔法って気軽に出せるわりにその後の方が大変ですよね……」
災厄の名は伊達じゃないな。
改めて闇魔法を確認してみましょう。
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黒の行進 闇属性
辺りを周辺の光を吸収し続ける暗黒の空間に変える。
一定の光を吸収すると消滅する。
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「一定の光を吸収すると消滅って書いてあるから自動で消えると思ってたんだけど」
「ラグナさんの魔法力が高すぎるから吸収する光のキャパシティが異様に大きいのかもしれません。強い光を追加で与えるのはどうです?光の災厄魔法とか」
「それ料理で塩入れすぎたから砂糖入れて中和しようレベルの対処じゃない?大丈夫?」
「別に何かあっても罪のない亜人を処刑しようとする街ですしボクには関係ないですね」
さすがにクローバーは俺以上にインクナブラに嫌気が差してるようでどうなっても構わないって顔してる。さんざんな目に遭ったしな。
「まぁ闇に光をぶつけるのは定番か。魔片4つ手に入れたことだし光の災厄覚えてみるか」
【光属性がLV1になりました】
【災厄魔法・ "破壊と再生"を修得しました。】
「もう名前からして超絶嫌な予感しかないんだが」
「ヴァルルッ」
「まだ分かりませんよ、効果も見てみましょう!」
俺のかわいい眷属が明らかに面白がってるけどこの魔法に闇魔法の後始末がかかってんだからな。
でもちゃんと効果を確認するべきなのは確かだ。どれどれ。
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破壊と再生 光属性 MP400
辺り一面を全て分解する光を放った後、破壊した物体を術者の意思で再構築する。
効果範囲は魔法力に依存する。
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んなことだろうと思ってたよ却下却下。
辺り一面破壊って言ってるわ。効果とか見るまでも無くだいたい思った通りの効果だわ。
しかも効果範囲が魔法力依存ておまえ。俺の魔法力だととんでもなく広かったりしない?これどこで使うの?
「でも再構築ですって。珍しく壊すだけの魔法じゃないですよ!」
「だから何!??その前提条件が破滅的なんだけど!?」
この魔法封印ね、MPもバカ食いするし。
くっそスキルポイント1つ無駄にした!いやいつか使う時が来るかもしれないけどさぁ。
他に光を放てる魔法と言えば炎かな?でも火の災厄魔法"嘘つきの炎"もアレはアレで被害がでかい。っていうか200年前にインクナブラ焼いた魔法ってコレだろうし、あの街じゃとても使えない。
「ヴァウウゥウ」
「……ん?どうしたゲッカ」
ゲッカが1匹のヴァナルガンドを連れてきた。
白いもふもふが立派なわんこだね。それでこのコがどうしたの?
『主。オレ、光魔法使エル』
……。
まじ?
「光魔法使えるヤツいたならもっと早く教えてくれても良くない!??」
「クゥゥン」
ヴァナルガンドが使えることは分かってはいたが俺が光の災厄魔法を覚えるところが見たい&効果が気になってた、あと魔法がどんなトンチキ効果か当てるゲームがしたかった、だそうです。俺の魔法でクイズするんじゃない。
いずれは全部の魔法覚えたいっていつか言ったからいいんだけどね。
ということでヴァナルガンドにインクナブラまで行ってもらってありったけの光魔法を打ち込んでもらう。あれで闇が消えればいいなぁ。
突然ヴァナルガンドが街に現れれば騒然とするだろうけどまぁ大丈夫だろう。俺たちは街から離れたところで待機だ。
「カニスは氷魔法使ってたけれど、ひと口にヴァナルガンドって言ってもいろんな魔法覚えるんだな」
「ヴァウゥ!」
ゲッカによると人間や亜人だっていろんな魔法使えるのと同じことだって。それもそうか。
使える魔法の見分けがつくようにヴァナルガンド用の装飾とか用意すると便利かもな。
光魔法使うなら白い首輪、氷魔法を使うなら水色の首輪とか。
商人から買ったベルトや毛糸をクローバーに出してもらって作ってみるか。
岩陰で日差しを凌ぎつつクローバーと首輪を作っていたところ、空を遊覧していたハルピュイアから声をかけられた。
「ラグナさま。遠くから不審な人物がこちらに向かって泳いで来ます」
「泳ぐ?」
こんな砂漠のど真ん中で?
ゲッカの耳がぴくんと動き顔を太陽と逆の方に向ける。
ゲッカの視線の先に目をやれば確かに人影がこちらに向かって宙を泳いでいた。
「いた!!やっと見つけた!」
「あ、お前……前来た時の!」
人影は以前インクナブラに来た時、処刑されるメルムを助けに来た白服の襲撃者の1人だった。