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災厄たちのやさしい終末  作者: 2XO
4章 やさしい場所
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4.今後の方針

 装備職人のドワーフに会いに行くことが決まった。

 ドゥールムの故郷ヘルペッソにいるらしいからドゥールムを送り届けた後に会いに行けばいいだろう。

 有名なドワーフらしいから会いに行くのは難しくないそうだ。


「それで話の続きですが」

「あ、装備職人の話で終わりじゃないのか」

「ダンジョン村に集まる人を束ねられる人がいないので亜人を束ねられる人材を獲得したいです。当面の目標はラグナさんが長期的に不在でも独立して運営していける村にすることですね。食料面でも防衛面でも」

「まだ住人ヒストくらいしかいないのに気が早くないか?」

「早くありませんよ。優秀な人は高いお金を払ってでも早めに確保したいです」


 クローバーの言う通りいつも俺が村にいるとも限らないので俺不在でも自立した村を目指そうってことには異論はない。俺がいなくても村を任せられるリーダーを任せられるヤツを探すのも賛成。


「しかし住人どれだけ集まるかね」

「ラグナさんが村を作ったことを知らないだけで、ダンジョン村のことを知れば少なくない亜人が移住を希望すると思いますよ。トゥールの奥地にあるこの場所に自力で来れる亜人はほとんどいないでしょうけれど」

「立地は抜きにしても人間や魔族が攻めて来るリスクがあっても来るかな?」

「ドゥールムさんやヒストさんが処刑されそうになるくらいですし危ないのはどこにいても同じですよ?」


 それはそう。

 どんな極限状態になっても俺の植物魔法で食事だけは保証されてるからせめて住人にはお腹いっぱい食わせてやろうな。この前インクナブラ辺りで食べた微妙オブ微妙の固パンと素材の味しかしないスープとかじゃなくて、美味しい食の追求をしながら。


 それで、家を建てる人員も必要だし

 狩りや採取による食料確保は少人数ならともかくいずれ限界が来る。ヴァナルガンド家を建てるにも村の維持にも1年を通して生きていくだけの食料を

防衛手段が欲しいって話だよな。

 俺やヴァナルガンドだけじゃなく、住人が自分の手で守れるようにしたいとのこと。


「ボクらの置かれた状況や村の立地を考えるとある程度戦い慣れして戦術を立てられる、それでいて亜人から慕われるような人が望ましいです。ユーリスさんみたいな強くて信頼できる人が村に入ればラグナさんも安心して外出できるでしょう?」

「ユーリスみたいのがいればそりゃ安心だな」

「そんな人をラグナさんの眷属に引き込みたくて」

「ヴァウ!」


 ゲッカが賛成しているけど、また眷属?クローバーを眷属にしたばかりなのに?


「今のままだと眷属のLVを最大まで上げられませんから、どのみち増やすことになりますよ」


 眷属LVとな。

 そういえばゲッカと契約した時眷属LV1って表記されてたな。


「眷属の契約にも段階があって、最高はLV3です。LV1はステータス強化、LV2でスキルの共有です」

「え!共有!?」


 スキルの共有とか心躍るワードが来た。

 もしかして俺がクローバーの情報収集とか収納とか使える?


「共有と言っても共有できるスキルは眷属ごとに1つです。それから【固有スキル】は種族由来のスキルなのでできません。ボクの『猫の王』とかゲッカさんの『悪食』とかですね」

「じゃあ俺も『収納魔法』を使えるのかヒャッホウ!」


 収納は是非とも欲しい。

 手ぶらでどこでも行けるしコスパもいいウルトラ便利スキルだ。いつもクローバーに頼んで出し入れするのも悪いし手間だもんな。


「ラグナさんだと死にスキルになります……収納は『亜空間』と『収納魔法』2つのスキルがあって初めて成立します。収納魔法だけではゲートを開くだけで、繋げる先がありません」

「チクショウ!」


 そういうことしてくる!!!

 現実はうまくいかない。



「まースキルは後で考えるとして。眷属LVってのはどうやって上げるんだ?」

「LV2は従者側がアクションを起こして上げます。決まった手順があるわけではなく、主に対して特別なアクションが必要です」

「特別?たとえば?」

「パッと思いつくのは肉体関係を結ぶこととか……」

「ぶーーーっ!!!」


 盛大に吹き出した。

 さすがに言いにくそうだけどこっちにもネコミミの少女にそういうこと言わせた罪悪感ってものがあってだな。


「よ、要するに従者が主に最上級の信頼を示せばいいんです。信頼の証は人によって違います」

「そっちを先に言って欲しかったね!?」


 クローバーの口から生々しいワードが出てきてびっくりした。

 ともかく話は分かった、従者が主人に好き好きアピールするものらしい。だったら俺はいつでも信頼を受け入れられるようにどっしり構えておこう。


「最上級の信頼となると生半(なまなか)な行動で示せるものではないので……でもいずれボクもゲッカさんも必ずLVを上げて見せるので待っててください!」

「ヴァウ!」


 この様子だとゲッカとクローバーは既にこの件について話し合ってるみたいだ。楽しみに待ってよう。

 でも肉体とかそういうのはナシね。マジで。



「それは置いておいて。LV3にするには眷属がもっと必要です。眷属契約はラグナさんのために命を捧げられるような覚悟が無ければ命を落とすこともあるリスクのある契約ですが、腹心といえる眷属がある程度いなければLVを上げられません。でも契約をすることでラグナさんもスキル面で強化されますし、眷属もラグナさんの高いステータスを享受できます。良いことずくしなのでぜひ忠実な眷属を増やしたいですね」


 改めて聞くと重いな眷属契約。

 ユーリスみたいな奴をもっと探すのってのは先は長そう。


「話は分かったけど適任探すの大変じゃない?」

「アテがあります。強くて仲間からの信頼も厚くてラグナさんに忠誠心を持つ人。覚えてるでしょう?シエル山脈でリザードマンを指揮していたウィトルさん」

「ヴァウフ!」


 ウィトルといえば、シエル山脈で出会った俺の眷属になりたいと言ってた熱血リザードマンだ。

 武闘派なリザードマン一族の次の長で、俺の眷属を志願したけどゲッカに気を遣って順序があるからと身を引いた黒いリザードマンだ。

 もうゲッカもクローバーも眷属になったことだし会いにいってみるのもいいな。


挿絵(By みてみん)


「よーし、ウィトルに会いに行くか!あいつらが元気にしてるか気になるし」

「……お嬢ちゃんを処刑しなかったこと、人間たちは後悔するだろうな」


 ドゥールムが苦笑する。

 俺の行動は最終的には俺が決定しているけれど、ほぼほぼクローバーの入れ知恵だ。

 人間目線だと処刑しそこねたキャスパリーグが災厄の化身のブレーンとなって侵攻先を決めているとかそんな状態だもんな。しかもクローバーは王国の内部情報まで平然と拾ってくる。


「なんか参謀みたいだな、クローバー」

「それいいですね!ボクはラグナさんの参謀です!!」


 喜んでる。行動方針も決めてくれたことだし撫でておこう。

 クローバーが嬉しそうに尾を揺らす。



 ◆



 翌日。

 昼前に俺たちはドゥールムの家族のもとに到着した。

 以前人間から亜人狩りを受けた熊の亜人達は人間から逃れるために鬱蒼とした森の中に隠れるように住んでいた。

 人間なら忌避するが、恵まれた体躯に剛毛を持つ彼らは多少の獣や虫の魔物の攻撃を寄せ付けないため比較的安全に行動できる。

 そんなドゥールムの家族のいる集落はクローバーがネコを使って調べ上げていたので迷うこともなく到達した。クローバーがいなければドゥールムだけではここにたどり着くのは難しかっただろう。


 人間に逆らって連行されたドゥールムはもう帰って来ないと思われていたため村人からは大層驚かれた。


「ドゥールム!無事だったのか!?」

「本当によかった、インクナブラに連れていかれたって聞いたのだけど……!?」

「ああ、心配かけた。すまんな」

「謝らないで。あなたは私たちを助けようとして捕まったのだから」


 ドゥールムは集落に押し入った奴隷商人に奥さんと娘さんが攫われたので追いかけて奴隷商人を殴ったら集落の外で人間に手を出したと処刑が決まったそうだ。

 いやクソルールだと思ってたけどあらためてクソルールだな、人間のルールとやら。


「ねぇパパ、もうどこにも行かないよね?」

「ああ、もちろんだ。パパおまえたちに喜んでもらおうと美味しい料理を覚えて来たんだ。オレに作らせてほしい」


 ドゥールムも無事奥さんと娘さんと再会できた。

 成り行きとはいえ助けて良かったよ。


 昼食時になったのでドゥールムが宣言通り料理を作ると言い出す。

 俺が教えた料理を手際よく作っていく。もともと料理はしてて慣れていたから安心して見てられる。料理は村人に大変好評だった。


「パパ凄い!料理人みたい!」

「料理人?ははは、俺が?もっと練習してみるか」


 娘さんの言葉にドゥールムは気恥ずかしそうにしている。

 これも何かの縁とドゥールムに胡椒を渡しておこうと思ったもののクローバーに止められてしまった。

 希少な胡椒を亜人が持っていることがバレればいろんなトラブルを生むらしいから仕方ない。


「なんとか胡椒流通させられないかなぁ」

「まーた大変な事考えてますね」


 いやでも食文化に人間も亜人もなくない?胡椒が安価になって庶民でも買えるといいんだけどな。

 ウンウン唸って考えているとちっこい熊の少年2人がやってくる。


「どうした少年。俺に何か用か?」

「ヘンなセンコクやった人だーー!」


「ぐ、ぐあぁ!!!?」


 めっちゃ無邪気な顔で指を指して言われた。一切の悪意がないだけに余計にダメージがでかい!

 母親だろうか、2人の熊の女性が慌てて駆け寄り少年の前で頭を下げる。


「た、大変申し訳ございません!まだ何も知らない子ですゆえ、どうか、どうか、お慈悲を!」

「あ、アア、ウン、いいって事よ……いや慈悲とかね、ダイジョブだから……」


 慈悲て。

 いや俺なりに真面目にやったつもりなんでちょっとダメージ受けたけどダイジョブ。

 ちらりとクローバーを見ると思い出したのか分かりやすく落ち込んでる。

 俺たち全国放送で顔出し放送事故やらかしたもんな。

 

 とりあえず俺たちが何もする気がないことが分かって親子も安堵したみたいだ。ドゥールムが顔と裏腹に悪い人じゃないってめっちゃ説明してくれたし。

 でも顔は余計。俺そんな怖い顔に見えるかな?


「ところでまた奴隷商人が来る可能性も無いわけじゃないだろ。大丈夫なのか?」

「この森なら簡単には見つからないだろうが、時間の問題かもしれないな。ラグナのところは住人の受け入れはしてると言っていたが、オレ達もジャマしても大丈夫か?」

「大歓迎、と言いたいところだけどやっぱ距離がネックだな。やっぱもっとヴァナルガンド連れて来れば良かったか。こっちの予定が片付いたらまた迎えに来る形でもいい?」

「ああ、恩に着る!」

「危なくなったらレギス商会てとこを目指せ。亜人も雇用してる商会で俺も取引で世話になってるところだ。そうだな、サンドアングラーを売った亜人の遣いだからゲインっていう女商人に取り次いでくれとでも言えばおおよそ通じるだろ」


 何度か見たレギス商会の馬車の文様をドゥールムに教えておく。

 ノーラン領といい今回と言い勝手にレギスの名前出してごめんゲイン、俺がこのテの問題でまともに頼れるのがレギス商会しかないんです。

 お金は出すから。いっぱい買い物するし魔物も狩るので許してほしい。



 ドゥールムを無事送り届けたので俺たちは職人のドワーフに会いに行くことにする。ドワーフの居場所?ドワーフのい会いに行くと決めた30分後にはクローバーが把握してたよホントとんでもない能力だ。

 ネコを通してクローバーが様子を見たところ、どうもここ数日人間がドワーフを連れて行こうと計画してるらしい。参ったな、人間もドワーフ目的かよ。


「武器を作れる人材を欲しているのはボク達だけじゃないってことですね」

「それじゃ、人間より先にスカウトしないとな!」


 ドワーフの住処へ行くぞ!

現在の遠征予定ルート

①ヘルペッソ領の熊の獣人ドゥールムを送り届ける:CLEAR!

②ヘルペッソ領のドワーフに会いに行く

③神々の御廟に寄る

④商人達に会う

⑤ロス・ガザトニアのハルピュイアに会う

⑥シエル山脈でリザードマンとノームに会う←NEW!

⑦ダンジョン村に戻る

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