第6章 結ばれる時
お疲れ様でした!
今日1日の職務を終えて1人、病院内の自販機で缶コーヒーを買っている佐川先生の元へ、同じく仕事を終えた早苗先生も合流した。
「佐川先生、お疲れ様でした!」
「早苗先生もお疲れ様です、はい、これ」
温かい缶コーヒーを佐川先生は早苗先生に手渡した。
思わず、満面な笑みが溢れる早苗先生。
もうここしかない!と決意を固めた早苗先生は勇気を振り絞り、こう告げた。
「…佐川先生、私、貴方の事が好きです。だから友達からでも良いので、付き合って下さい」
佐川先生からは驚きの表情すら、ない。
何となくだが、そんな気が直感でしてた。
けれど、この言葉、前にも聞いたな…とつい、思い出し笑いした。
「佐川先生?」
「あっ、すみません、失礼な態度を取ってしまって。後、告白もありがとうございます。だけど、ごめんなさい。返事には答えられないです」
「もしかして、彼女が居るんですか?」
「はい」
返事は相手に可能性すら与えないぐらい、即答だった。
余りにもショックが隠せない早苗先生の顔から笑みは消えていた。
「あの、聞いて良い質問か分からないですけど、相手は…瑞希ちゃんですか?」
佐川先生は真剣な眼差しで静かに頷いた。
そうか、やっぱり。女の勘は当たる。
まさか、本当に相手が瑞希ちゃんだったとは…。
大失恋を受け入れるしかない。
「分かりました」
「いえ、こちらこそありがとうございます。失礼します」
佐川先生の背中に今にも抱き付きたいと、早苗先生は密かに思っていた。
涙を目に溜めながら必死に堪えた…。
今日はやけ酒で決定だ…。
1人の女医師の恋愛も今日で終わりを告げた……。
プルル、プルル
「…何で出ないんだ?」
佐川先生は瑞希の元へ何度も電話をかけているが繋がらない。
そりゃ、そうだ。携帯は自宅に置きっぱなし。
じゃ、瑞希は何処に?
「…まさか、あそこ?」
居るか、居ないかは分からないが、賭けてみよう。
そう、2人が初めて出会った場所。そこは……。
大音量が響く、人の群れが騒がしいゲームセンター。
そこに瑞希の姿はあった。
1人、UFOキャッチャーで遊んでいる。
瑞希の姿に安堵の表情を浮かべる先生。
ゆっくりと彼女の背後に近付き、そっと瑞希の両手に触れた…。
「……えっ!?」
私は手の感触に驚いて背後に振り返ると、そこには私の大好きな人が今、目の前に居る、堪らなく嬉しくて沸き上がる感情を必死に抑えている自分が居た…。
「…先生、何で居るんですか?」
「何、その言い方?会いに来たのに」
そして、2人は思い出のゲームセンターを懐かしみながらその場を後にした…。
「…あの、先生。思い出しました。昔の事…」
「…やっと、思い出した?」
「…先生は知ってたんですか?」
「…うん。あの後、父の転勤でこの町から違う町に引っ越しした。僕は医大を卒業して経験を積み医者になった。そして、この町の病院に異動の話が来た時、僕は思った、また瑞希に会えるかもと。しかも、瑞希の担当医になった。これは偶然じゃない、必然的な事だと。その瑞希から告白までされて、本当は堪らなく嬉しかった。でも直ぐに返事すると逆に疑問に思われないかと不安に思い、友達からだって提案した。それで連絡先も聞けた。これでいつでも瑞希に会える。僕にとって大切な人になっていた…」
運命的な出会いをした私達は再び出会う事が出来た。
私の運命な人は佐川先生しか居ない。
「…先生、私凄く先生の事が好きです。だから、私と…」
先生は私の口元に手を当て、
「それ以上は言わないで。分かってる」
私は初めて先生のマンションに招かれた。
高級感漂う凄く立派なマンションに私は目を疑った。
普段から掃除してる様で先生の部屋は綺麗な上に整理整頓されている。
特に大きなベッドに目が行ってしまう。
どうしよう、緊張で心拍数が上がってる。でも誘ったのは私。
覚悟を決めなきゃ!
「あの、先生」
「何?」
「…あっ、私、その…」
その時、先生は私の額に軽く口付けした。
「無理しないで」
「無理はしてないです」
「ほんとに?」
「はい。ただ私、付き合った経験なくて、その…」
「分かったよ、言いたい事」
先生はそう言うと私の唇をゆっくり塞ぎ、ベッドへ誘った。
そして……
愛する人と私は1つになる瞬間を迎えていた。
「…瑞希、愛してる」
「…私も愛してます」
深い愛情の中…、
この日ついに私達は身も心も結ばれた…。
私は先生の腕の中で優しく抱かれながらこんな事を考えた。
もし、先生と結婚出来たらどんなに幸せだろう…。
産まれてくる子供は可愛いだろな…とか色々な思いを巡らせた。