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第2章 付き合って下さい


私は主治医、佐川亮平に出会い、心が揺れ始めていた。

だけど、相手は医者で私は患者。結び付くはずのない2人。

初めての恋は枯れた花びらの様に悲しく散っていくのだろうか…。



休日の日曜日、私は親友で同じ歳の片瀬七海(かたせななみ)と馴染みの喫茶店で待ち合わせしていた。

彼女は私と同じ心臓疾患の持病を持ち、幼い頃に同じ病室で共に入院生活を送り退院した後も連絡を取り合ってる大の親友である。


「瑞希!こっちよ!」


七海が大きく手を振ってこっちだと合図してる。


「お待たせ」

「大丈夫よ。私が早く来ただけ」


私は早速、主治医との出会い話を七海に持ち掛けた。

すると七海はクスクス笑いながら、


「一目惚れね」

「やっぱり?」

「うん。でもそうなると、もう少しお洒落しないと駄目ね。試しに美容院で髪の毛、カラーしてきたら?」


七海の提案に私は首を傾げながら聞いていた。

確かに今のままじゃ振り向いてくれなそう…。

その点、七海は良いな…お洒落でいつも礼儀正しくて清潔感溢れる、可愛らしい女性。

その上、彼氏も居る。

ただ私は七海の彼氏に会った事ない。

いずれ紹介してくれるだろう。


七海と別れた後、私はふと美容室の前で足を止めていた。


すると、


「いらっしゃいませ!」

店から美容師さんらしき人が店内の様子を覗いていた私に声を掛けてきた。


「カットですか?」


私は返事に戸惑いながらも、


「えっと……あの黒い髪を明るい茶色ぐらいの色に染めたいんですけど?」


「カラーですね?あっ、でもその前にカットして重たい長い髪もすっきりしませんか?」


「えっ?…あぁ、はー」


私は乗り気がないまま、美容室の中へ入ると…何だろう?この独特な匂い?


カラー染めの液の匂い?シャンプーの匂い?

まぁいいや。定員さんに任せよう。


「はい、どうぞ、座って下さい」


椅子に腰を下げると、目の前にある大きな鏡に映る自分の顔が余りにも醜くてショックを隠せなかった…。


私ってこんなに不細工だったっけ?

はぁーと大きな溜め息を付いた…。


「それじゃ、始めます」

「お願いします」


その瞬間、長かったロングの髪が肩より少し上ぐらいの長さにまで短くなった。


気付くと、私はいつしか眠気が襲い、そのまま眠ってしまっていた…。



2時間後、


「はい、終わりました」


定員に起こされ、私はようやく眠りから覚めると……


えっ?これ私?


目の前に映る自分の姿にほんとに私?寝惚けてる?

私は咄嗟に自分の頬をつねってみた。


あっ、痛い!やっぱり夢じゃない!


私は新しく生まれ変わった自分に感動していた。


これは服も変えなきゃ!


普段は目に付かない洋服やアクセサリー、靴などに興味津々になっていた。


私はいつもズボンスタイル。

それを変える為に、定員に自分に合うお勧めのスカートを探してきて貰うと、定員は色は淡いグリーン、裾はレースの入ったスカートを私に手渡した。

それに合う上着もその場で仕立てて貰い、試着すると、思ったより似合ってる。


私は即、購入してその場で着ていく事にした。


そのまま、店内から外に出ると、周りの男共の視線が私に向いてる?!

気のせいでも良い、私は気分上々だ。


そうだ!


先生の病院へ寄ろう!


特に体調が悪いとかではないが、薬を口実に診察もついでにと、受付で頼んだ。


暫くすると、


「守口さん、診察室にどうぞ」


アナウンスで呼ばれ私は診察室の扉をノックした。


コンコン


「はい、どうぞ」


私が扉を開けると、佐川先生が私の方をじっとガン見していた。


うん?このガン見はどういう反応?

似合ってない?それとも?


その後、いつもの診察が始まった。

先生は敢えて話もしないし、私の髪型にも触れてはくれない。


私は先生の反応が読み取れない。

見抜けない。

脈無しかぁ。


半分諦めモードに突入かと思いきや、ずっと沈黙状態だった先生の口から思いがけない一言に私は口元が震えた…。



「似合ってますね、その髪型とスカート。可愛いです」


「えっ?あっ、ほんとですか?」


私の変化に先生も気付いていた。

これは脈有りかも?


私は後先考えず、ストレートに気持ちをぶつけた。


「先生、私と付き合って下さい!」


「……えっ?!」


突然の告白にただただ驚いてる感じで……流石の先生もどう返事したらいいか、困り果ててる様子。


少し間を置いて出した先生の答えは勿論、いいえだった。

当然、想定内の事だ。

ただ、その後に先生から期待を促す一言に私は心が踊らされた。


「今は知り合ったばかりなので付き合うのは無理でも、好きになる可能性はあります。だから、連絡先交換しませんか?」


「えっ!?」

私は一瞬、夢かと、我を見失った。


けれど、これは、違う。夢じゃない!


「あっ、はい、喜んで!」


私は携帯を手に自分のメールアドレスを画面に表示されると、先生は自分の携帯を素早いタッチでアドレスを打ち込んでいく。


直ぐ様、先生のメールアドレスが私の携帯に送信された。


「届きました?」

「はい、ありがとうございます」


無邪気に笑う私の顔を見た先生はこう呟いた…。


「僕を振り向かせて下さい」


初めての男性と友達から付き合うとかなんて、した事のない私にとって即答は出来なかった。

でも、その代わりに私はこう答えた。


「楽しい時間を先生にあげます」



思わず、先生の頬も少し緩んだ…。








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