第11章 亮平の決意
この章では佐川亮平の目線で描かれています。
彼の瑞希に対しての愛情は本物。
また違った目線で読んで頂けたら嬉しいです(^^ゞ
あー、やっと終わった。
今日も無事に1日の職務を終え、僕は病院を後にする。
いつも通り、今から自宅に帰るだけなんだが、今日は違う。
愛する人、瑞希が家で待っていると言う、喜ばしい事だ。
瑞希と付き合いだして1ヶ月になった今日、彼女は不整脈を起こし苦しそうな表情を見せていた。
僕は体調の悪い彼女をそのまま自宅に帰らせるのが忍びなかった。
って言うのは口実で、ほんとは瑞希と一緒に居たかっただけだ。
僕の心は瑞希に奪われているのだろう。
「あっ、そうだ、何を買って帰ろう。晩御飯は何が良いだろうか」
瑞希の好きな物って何だろうと思い浮かべても分からない。
良く考えたらそんな話してなかったなと彼氏としては失格だなと苦笑いしていた。
取り敢えず、晩御飯は僕の得意料理、ハンバーグにしよう。
材料だけ買い出しして自宅へと急ぎ足で向かった。
玄関前で僕はふと、瑞希の顔が浮かんだ。
と、同時に彼女はここに居てるだろうか?と不安が過った。
そして扉を開けると目に飛び込んだのは瑞希の靴。
良かった……来てくれてた。
すると、
「……先生?」
「瑞希」
物音に気付いた瑞希は僕の傍に駆け寄ってくる。
「お帰りなさい、先生」
「ただいま、瑞希」
同棲でもしたら毎日こんな感じになるんだろうなと思い描いていた。
「先生、何買ってきたんですか?」
「これは、ハンバーグする為の材料。僕が作るから期待して」
「先生のハンバーグ食べたい!」
目を輝かせる瑞希がとても愛しい。
それに顔色も良くなってる。
処方した薬が効いたかな?
僕は急いで台所に立つとハンバーグの材料を取り出し、調理に取りかかる。
ただいつも玉葱切る時は泣いてしまう。
そんな様子を瑞希が珍しそうに眺めていた。
「先生のこんなとこ見るの初めて」
「確かにそうだな」
「先生って料理出来たんですね」
「そんなにレパートリーはないよ」
料理を振る舞ってる最中、瑞希は僕の背後からそっと手を回し、抱き付く。
「…瑞希?」
瑞希は僕の背中に指でなぞる様に何かを書いていた。
「…えっ?何?」
何の文字か分からず、僕は調理してる手を一旦、止めた。
始めの文字はだ?次はい?もしかして……?
「……大好き?って書いた?」
「…………うん」
瑞希は静かに頷く。
僕は瑞希の方へ身体を向けると、顔を真っ赤に染めてる瑞希が可愛い過ぎて、僕は軽く額に口付けをする。
「……僕も大好きだよ」
僕は優しく瑞希を抱き締める。
彼女の匂い、温もりを全身で感じていると……
あっ、これ以上は駄目だな。平常心を保ちながら、僕はそっと瑞希から身体を離した。
「……取り敢えず、先にご飯にしよう」
「……あっ!そうですね、ごめんなさい!」
僕はソファーに瑞希を座らせ、安静にさせた。
今日は無理をさせられない。
医師として……。
僕は改めて台所に立ち、調理に取りかかった。
そして始める事、30分……
「…お待たせ!」
僕は手作りハンバーグを瑞希に食べさせた。
瑞希はナイフとフォークを手に持ちハンバーグを一切れ口に運んだ。
「美味しい!」
「それは良かった」
僕は彼女の笑顔を一生かけて守れるか?と自分に問いかけた。
いや、そうじゃない。僕が守る。
同棲から始めて結婚したいという思いが一層強くなった。
だけど、付き合い初めてまだ日が浅い。
かと言って、日を延ばしたくない。
僕は心の中で葛藤していた…。
食事を終えて僕は瑞希と一緒にソファーで寛いでいた。
いつ、言おう。タイミングが分からない。
すると、瑞希が僕の肩に頭を乗せてきた。
「先生」
あっ、今だ!
「……瑞希、話がある」
「…話?良い話ですか?悪い話ですか?」
「………」
彼女からの意外な問いかけに僕は言葉を呑み込んだ。
「先生、あの私そろそろ帰らないと……」
「…えっ?」
「…だって、もう遅いし、それに……」
何か言いかけた様子だったか、瑞希は唇を噛み締め、黙ってしまった…。
「…瑞希?」
「…もう帰ります!タクシー呼ぶんで帰りは心配しないで下さい」
何か誤解をしている瑞希をこのまま帰す訳にはいかない。
ソファーから腰を上げた彼女を背後から抱き締めた。
「…瑞希、同棲しないか?」
僕は彼女の耳元でそっと囁いた。
「……先生、もしかして話ってこの事だったんですか?」
「そうだよ」
「…あっ、そっか、良かった、本当に。てっきり別れ話だと」
「…えっ?」
別れ話?何で?
自分の態度や誤解を招く言動に何か不快な思いをさせたに違いない。
「瑞希、僕はほんとに君が好きだ。僕も28だしそろそろ結婚の事も考えてる。でも結婚するなら瑞希しか居ないって思ってる。だから同棲の事、真剣に考えて欲しい」
あぁーやっと、言えた。
緊張感の中、自分の素直な気持ちを瑞希にぶつけた。
「…………」
「瑞希?」
「…………先生、私は持病持ちですよ?それでも良いんですか?」
「…関係ない。それに僕は医師だ。だから君を守っていきたい。僕は君の担当医師、そして君の恋人として傍に居たい」
僕は優しい眼差しで瑞希を見つめる。
そして、僕は彼女の綺麗な艶のある髪を撫で下ろした。
「……瑞希」
「……先生、私も一緒に居たい、先生と」
「…瑞希、ありがとう」
こうして、僕達の同棲生活が始まろうとしていた。




