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まえがきに代えて・・・

 部屋の片づけをしていた時の事です。押入れの奥から、一冊の大学ノートが出てきました。それは、就職する私に向けて母から「ノートは何冊あっても困らないでしょう?それに、安かったから。」という言葉と共に手渡されたもので、半ば押し付けられるような形で同じ物を十冊程貰ったのです。

 学生時分であればまさしく、母の言う事は正しかったに違いありません。しかし、就職した私にとってみると、これらのノートを使う機会はまったくと言って良いほど訪れることはなく、それから随分と時が経ってしまいました。

 私は何とはなしに、そのノートを開いてみたのです。真っ白なページが飛び込んでくるものと思っていた私の目に飛び込んできたのは、見間違いようのない私の書き記した文字でした。


 『蟾蜍(ひきがえる)』

 “お砂糖とスパイスと、素敵な何もかも・・・”(マザーグース)

 「黒潮はなぜか流れ来る血を、落ちる暮れかな風なお白く」(回文)

 ・・・・・


 私はすっかり忘れていたのですが、それらは私がこれまで出会った中でも心に引っ掛かった幾つかの言葉たちであり、そのノートはそれらを書き留めるために拵えたものだったのです。

 マザーグースや回文については、今も尚私の心を捉えて離さない言葉であるのは変わりませんが、一体全体『蟾蜍』の何が私を魅了したものなのか、今の私にとってみると、大いなる謎以外の何物でもありません。

 しかし、その言葉が他の全てを差し置いて、一番初めに登場しているのです。それはつまり、私がこんなノートを拵える動機を生み出してくれたのが、その言葉だったという事に他ならないのです。その当時の私にとってみれば、『蟾蜍』という言葉が何かしら琴線に触れたのでしょう。


 私は今、こうして自分の手で幾つかの言葉を組み立てています。それらがある程度まとまり始めると、そこに一つの物語が出来上がります。そんな事、当時の私はまったく想像もしていなかった出来事でしょうね。他の誰かの言葉を借りる訳のではなく、自分で選んだ言葉。それらをノート一杯になるくらいに書き留めていきたいのです。

 最後に、ヒキガエルの姿は他人から忌み嫌われるくらいに醜悪です。おまけに、その体には毒があります。歪に歪んだ私の作品を集めるにあたって、これ程相応しい言葉はないのではないかと思い『銀色の蟾蜍(ひきがえる)』とつけました。このヒキガエル、決して死に至るほどの毒性はありませんから、読んでもまったく害にはなりません。ひょんな事から“蝦蟇の油”が取れると良いのですけども・・・。そうそう、ちなみに今日は火曜日でしたっけ!

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