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能無しの『英雄体現』  作者: 神田 明
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第七話 叫び

 突如として乗り込んで来た装甲車と機械人形(オートマタ)の手勢に、ショッピングモール内は騒然(そうぜん)としていた。


「気をつけろ!来るぞ!!」


 彼方の一言を皮切りに、機械人形達が恵めがけて一斉に襲いかかって来た。


 四方八方から繰り出される手が恵をつかもうとした時。


「『氷の女王(アナスタシア)』」


 凛としたアリスの声が響く。


「凍りなさい。」


 瞬間、全てが凍った。


 恵を襲おうとした機械人形達は、下半身から腕にかけてを完全に凍らされており、身動きひとつ出来ないでいた。


「野中さん。大丈夫だった?」


 あまりの事に理解が追いつかないでいた恵に優しく声をかけるアリス。


「あ、ありが………!」


 助けてくれたアリスに感謝を述べようと視線を向ける。しかし目の前のアリスの姿を見た瞬間に、感謝の言葉は途切れてしまった。


 そこには氷で形成されたドレスを身に(まと)ったアリスがいた。

 氷のドレスは光を反射して純白にキラキラと光り輝いており、シンデレラのような氷の靴はアリスの健康的な脚をさらに美しく()せていた。


「綺麗………。」


「フフッありがと。」


 思わず感嘆(かんたん)の声を()らしてしまう恵。


 ドレスを身に纏い微笑(ほほえ)むアリスは、本当にどこかの国のお姫様と言われても信じてしまうほどだった。


「アリス!!」


 彼方が機械人形の胸を肘で打ち抜き倒すと、割れたショッピングモールの入り口を見据(みす)える。


 アリス達も入り口を見やると、続々と武器を持った機械人形が入って来ていた。


「まだいるの?少し面倒ね。」


 (わずら)わしそうな顔をすると、少しだけ右脚を上げ(かかと)鳴らす。

 すると足を起点に、氷が地面を覆いだす。


 地面を()う氷は、そのまま機械人形達の脚をも凍らせてしまう。


「そこでじっとしていなさい。」


 彼方は、アリスが取りこぼした敵を一体ずつ蹴散らし恵を護り続けていた。


「この調子なら護り通せそうだな。」


「彼方!!いま黒崎先生に連絡して、すぐに警察が動いてくれるらしい!!長くて40分ほどだ!!」


 優がスマートフォンで、彼方達の担任の黒崎に連絡し、警察との連携を図る。


「聞いた通りだ。頼りにしてるぜ『女王』サマ!」


「貴方もちゃんと働きなさい。『英雄』サマ。」


 怒涛の勢いで機械人形達を蹴散らしていく彼方とアリス。


 二人の連携の凄まじさに、戦闘の知識が無い恵でさえも、二人の戦闘技術の高さを理解できてしまうほどだった。




「………このままでは勝ち目は無いな。」


 一人の男が呟いた。


 男は機械人形の義眼から送られてくる映像を眺めながら、淡々と状況分析をしていた。


「……少し強引な手段を使うか。」


 男はそう言うと、ショッピングモール内にいる機械人形達に指示を出した。




「…………。」


 彼方めがけて斧を振り下ろす機械人形。

 やはり人形のせいか、斧を持った手には微塵(みじん)躊躇(ちゅうちょ)を感じさせず、一撃で彼方の脳天をかち割ろうとしていた。


 自身の頭をかち割ろうとする斧が迫って来ていても、彼方の心の中は冷静だった。


 彼方が一歩後ろに下がると、斧は風切り音をたてただけで、(むな)しく空を切った。


 振りかぶったせいで隙だらけになった(あご)に、アッパーよろしく掌底を撃ち込む。そして追い討ちをかけるように、首と心臓部分に強力な打撃を加えた。


 しかし合金で出来ているであろう体には彼方の攻撃は余りダメージを与え切れていれず、なかなか倒れないでいた。


「チッ……。人間相手ならまだしも、痛みも感じない人形だと完全に壊さないといけないのが面倒だな。」


 実際。痛みも感じず、合金の様な体でダメージも通りにくく、おまけに完全に再起不能にしないと何度でも襲いかかってくる機械人形は厄介だった。


『アリスの様に、氷漬けにして動きを止める事も出来ないし、俺とコイツらの相性が悪すぎる。』


 自身の能力と敵の相性の悪さにもう一度舌打ちをする彼方。


 彼方は敵との距離をある程度空けながら、敵の次の行動を注意深く観察していた。

 すると。


 ドルルル……。


 辺りに重いエンジン音が鳴り響く。


 エンジン音の鳴る方を向くと、機械人形達が乗っていた装甲車から聞こえて来ていた。


 徐々に駆動音と共に車輪が動き始め…。


「おいおい嘘だろ…!」


 装甲車が彼方めがけて突っ込んで来た。


  咄嗟(とっさ)に脚に力を込めて横に跳び、すんでのところで回避できた彼方。


「彼方!大丈夫!?」


「あぁ…なんとか。」


 装甲車はタイヤを横滑りさせながらカーブをした。いわゆるドリフト走行というやつだ。  

 

 装甲車は、彼方やアリスから恵を阻む様な形で止まる。


 すると装甲車の向こう側から恵と優の抵抗の声が聴こえる。


「ヤバイ!連れ去られる!!」


 彼方とアリスは、恵と優を助けるため急いで駆けつけるが、ドアが閉まる音と同時に装甲車が動き始めた。


「クッ……!!」


 急いで装甲車を止めるため走りだす彼方だが、残った機械人形達が彼方の行手を阻む。


「ッッ!!邪魔だァァァァァァアア!!!」


 





 ゴシャッと重たい体を崩す機械人形達の体は、ほとんど原型を留めていないほど破壊されていた。


「ハッハッハッ…ッハァッハッ………。」


 肩で息を切らしながら(たたず)む彼方に、深刻そうな表情をしたアリスが静かに口を開く。


「………。逃げられたわね……。」


「ッッ…ソォォォオオォオオ!!!!」


 彼方の悲痛な叫び声は、すぐに空気に溶けて消えていった。


今回もキャラ紹介!今回はアリスちゃん!!


如月 アリス(きさらぎ ありす)17歳 女性

能力『氷の女王』《アナスタシア》

1. 自身の能力で形成した『ドレス』を纏うことが出来る。

2. ドレスの効果は以下の通り

* 能力の射程圏内を自身から半径10〜15mまで伸ばすことが可能(コンディションによって効果範囲は変わる)

* 自身の能力発動時のデメリットを無効化出来る。3.氷を生成、操作出来る。

4.ドレスを纏わず能力を発動すると効果範囲と威力の減少、自身が凍傷状態を負う(デメリット)。

性格

クールな氷属性女子。男女問わず人気は高い。頭もよく戦闘もこなせる。主人公と仲が良いのを周りには意外がられている。基本的には主人公に辛辣だがなんだかんだ信頼している。名前のアリスは『由緒ある家柄の』と言う意味がある。


ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

作者コメント


今回も更新長くなってしまい申し訳ありませんでした。最近になってようやくアクセス数を見れる事を知ったのですが、ありがたい事に100人以上の方に読まれていたと知り嬉しかったです。

今後も励みます!

あと気付いてる方もいるかもしれませんが、基本的に週一更新です。マイペースですいません。


後書きも長くなってしまいましたが物語もそろそろ中盤。これからも『能無し』をよろしくお願いします。

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