第二話 戦闘
「ねぇ君。『助けてほしい』?」
そう言って助けに来たのは短く切られた黒髪に、身長が170センチほどもありそうな少年だった。学校の制服を着崩しており、首部分からはパーカーのフードが出ていた。
「来いよ。悪いオニーサン達にお仕置きしてやる。」
突然助けにやってきた少年は、不敵な笑みを浮かべながら男達を挑発して来た。
「……。」
男の一人が仲間に恵を押し付けると、何も言わずに少年に襲い掛かった。
男は接近するや否や右ストレートを繰り出す。
スイッチが入る。
少年の雰囲気が一気に膨れ上がった。
少年は左手で男の攻撃をいなしながら、右手で相手の横隔膜を撃ち抜く。
少年は追撃をかけず、恵を何処かへ連れて行こうとするもう一人の男に距離を詰める。
恵を拘束している男は、左手で振り払う様に迎撃をするが、少年は身体を屈む事で攻撃を避け、ガラ空きになった相手の顎を下から撃ち抜く。
拘束が緩んだ恵を引き寄せつつ、距離を取る様に相手を蹴り飛ばす。
『…なんだこいつら。攻撃の感触が鉄みたいに硬い…。自身の体を鋼鉄化、もしくは身体強化系のどちらかか?』
恵を庇う様にしながら敵の異能の考察をする。
男達は恵を取り返す為に少年を排除しよう迫る。
横隔膜を撃ち抜いた男Aが少年の動きを止めようと掴みかかってきた。
少年は相手の膝めがけて踏みつけをし、近づくのを阻止する。そして掴みかかろうと伸ばした手を押さえそのまま相手の顔面に膝蹴りを喰らわす。
しかし予想外のことが起こる。
顔に膝蹴りを浴びたにもかかわらず男Aは抱きつく様にして少年を拘束した。
「なっ…!?」
ドッ…!!
もう一人の男Bの右ストレートを横から受ける。
直前に腕でガードしたにも関わらず、少年は数メートルほど吹き飛ばされた。
少年はすぐに体勢を立て直した。
『いくらなんでもおかしい…。顎に一発入れた時もそうだが、さっきの膝蹴りを喰らってなんでまともに動けるんだよ。いくら異能で体が硬いって言っても脳が揺れないわけじゃ無いんだぞ。』
少年は打撃による脳震盪を諦め別の方法を試す。
レスリングのタックルよろしく低い姿勢で男Aに近づく。
男Aは少年の顔めがけて中断蹴りを放つ。
少年は急停止し、蹴りを受け止めた。
「フッッ…!」
少年は蹴りを受け止めたまま、男Aのもう片方の足を払う。
体勢を崩した男Aに対してすぐさま首を締める。
『このまま一気に意識を落とす…!!』
が、
男Aは平然とした顔で締めている腕を掴む。
『なんで意識が落ちないんだよ…!?』
完璧に決まっているはずなのに一向に失神する気配が見えない。
少年が敵の不気味さには得体の知れないものを感じていると、男Bが少年に向かって蹴りを放とうとしていた。
少年は腕を掴まれたままなのを利用して、男Aの顔を上げさせ蹴りを受け止めさせた。
「!?」
少年は男Aの顔を見て驚愕した。
男Bの放った蹴りを受けたせいか、男Aの顔の皮が剥げている。そこから黒い合金の様なものが覗いた。
少年は男達から一旦距離を置くと、男Aの露出した合金の様な部分を見つめた。
そして今までの男達の特徴を思い出し、一つの仮説にたどり着いた。
「もしかしてお前ら…機械人形か?」
機会人形とは、もともと介護用に作られた人型ロボットである。
人形であれば意識が落ちないのも、露出した合金の様な部分も説明出来た。
男達の気味の悪さの正体が分かった少年は、またも不敵な笑みを浮かべる。
「人形なら多少手荒でも構わないよな?」
そういうや否や男Aに肉薄すると、頭を掴んでコンクリートに叩きつけた。
叩きつけた衝撃で男Aの体が跳ね上がる。
少年は足を振り上げるとそのまま男Aの頭を踏みつけた。
すると男Aはピクリとも動かなくなり、割れた頭からオイルが漏れ出していた。
「キャッ!」
悲鳴の方を向くと恵が男Bに何処かへ連れて行かれようとしていた。
「ヤベェ!!」
ズンッッッ…!!
少年が強く踏み込んだだけでコンクリートが割れる。
足に目一杯の力を込め、跳躍した。
恵と少年との距離は10メートル近くあったが、それを一瞬にして詰める。
空中で身体を捻りそのまま男Bの後頭部めがけて蹴りを放つ。
ゴンッッッ!!と蹴りをモロに受けた男Bは体を半回転させながら顔をコンクリートにめり込ませて動かなくなった。
「フゥ…。すまない。危なかったな。」
少年は謝りながら恵の方を向くと、恵が突然崩れ落ちた。
「えっ?おい…オイッ!大丈夫か?オイッ!!」
異能モノなのにいまだ異能バトル感が無いですが、これからどんどん書いていきますので長く付き合ってもらえれば幸いです!!