表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能無しの『英雄体現』  作者: 神田 明
15/31

第十五話 午後のひと時

 室内には心地良い風が流れてきており、風に()られてカーテンがなびく。


 事件が収束してから一ヶ月、彼方は入院していた。


 計三発もの銃弾を腹部に受け、出血多量で死にかけていた彼方の腹部には、医療用パッチの上に包帯がぐるぐる巻きにされており、体を動かし辛かった。


 アリスが撃たれた箇所を凍らせて止血してくれたお陰で一命を取り止める事が出来たが、氷が直接体についていた為、低温火傷(ていおんやけど)になっていた。

 それでも命を落とす事に比べればマシではあったが。


 彼方は手持ち無沙汰(ぶさた)げにカーテンが踊っているさまを見ながら、今回の事件を振り返る。



 まず恵だが、警察と救急車が来るまでの間に脳の状態が悪化し、壊死(えし)し始めていた。なんとか救急搬送(きゅうきゅうはんそう)で一命は取り止める事は出来たものの、脳に障害が残るほどダメージを受けていた。


 しかし、ここでマスコミや世論が動き出した。


 そもそもとしてこの事件が引き起こされた原因は、協会のデータベースに蔵智が侵入した事から始まる。

 つまり協会に責任追及をしたのである。


 日に日に激化するマスコミや世論の責任追及に対処する為、恵を海外の病院に転院させる事を表明。


 なんでも障害をも完全に完治させる世界最高位の異能力者がいる様で、その人の元で治療を受けれる事になったらしい。


 たびたび海外で入院している恵から手紙が届いており、術後も良好であるらしく、障害が残る事は無いらしい。


 そして今回の事件を引き起こした張本人。


 蔵智 茂。


 今回の事件で、俺たちの見立て通り警察や報道機関にも出資者(パトロン)がいたらしく、蔵智が捕まった事により芋づる式に出資者が判明しているとの事だった。


 それと意外にもコイツが捕まったのは世間に大きな衝撃をもたらしたらしい。

 なんでも有名な教授らしく、人型ロボットをほぼ人間と同じレベルの動きを実現出来たとして、世界的に有名な賞も授与された事もあるらしい。


 特に俺と同じグループメンバーである(すぐる)は犯人が蔵智だと知った後、()しい人をなくしたな……。と、呟いていた。


 あと予想していた通り、担任の黒崎先生には滅茶苦茶怒られた。


 彼方の見舞いに来た先生は、同じく見舞いに来ていたアリスや優も一緒に(しか)っていた。


 今回は君たちが迅速に動いてくれたおかげで被害者の野中さんが助かったから良かったものの、それが原因で死にかかってたら世話ないだろう!!

 次から今回の様な事件があった時はキチンと警察と連携するようにっ!!良いなっ!?


 本当にその通りだった。身勝手な行動をしたせいで色んな人に心配をかけてしまった。


 まぁ学校の奴らはどうせ、

 『能無し』は異能が使えないから、ろくに反抗も出来ずに病院送りにでもされたんだろ。

 とか馬鹿にして、心配してる奴なんか誰一人としていないんだろうなぁ……。


 ……………マジでアイツら死ねば良いのに。


 心の中で悪態をつきながら、学校に行く日が少し憂鬱(ゆううつ)になる彼方。


 すると突然強い風が窓から入り込み、机の上に置いてあった紙が吹き飛ばされてしまう。


「おっとと……イテテテテテ…。」


 地面に落ちた紙を拾おうと手を伸ばすと、撃たれた箇所が痛んだ。


 拾った紙は、恵からの手紙だった。


 一度もう読んだ手紙だったが、なんとなくその手紙を読み返した。


 どうも野中 恵です。

 あの時は助けてくれてありがとう。

 本当はもっと早くお礼の手紙を書きたかったんだけど、脳の障害の手術をしていたら遅くなっちゃった。

 今私はアメリカの病院にいます。帰国したらまたアメリカのお土産を持って行くから楽しみにしててね!

 彼方は怪我(けが)の具合はどうですか?いっぱい撃たれて血が出ていたので心配です。もし良かったらお手紙を返してくれると嬉しいな。

 

 そして最後に、もう一度お礼を言わせて。

 

 ありがとね。私の英雄(ヒーロー)




 少し恥ずかしくなりながらも、彼方は胸中で喜んでいた。


 誰かを助けたいと言う気持ちで戦傑(せんけつ)学園に入学するも、自分の意思で異能を満足に使う事も叶わず、『能無し』と揶揄(やゆ)された。

 少しでも強くなろうと、日々陰ながら自身を鍛え抜いた。

 でも結局、異能を使う事が出来ない自分は、一緒にグループメンバーとなってくれたアリスや優にも迷惑をかけて来た。


 でも、そんな自分でも誰かを助けられた。


 今までの努力の日々が報われた気がした。無駄じゃ無かったよと、言ってもらえた気がした。



「あー…。駄目だ泣きそう……。」


 彼方の瞳から流れた涙は、手紙に落ちて透明の染みを作った。


 

 

 カーテンの隙間から()()る風が心地良い午後のひと時だった。

今回で一章完結となります!

どうでしたか?面白かったですか?

最初の構想より話が長くなったり、脳の使用領域がどうたらこうたらと難しい内容になってしまいました。

読み辛くってすいません……。次章からは異能バトル全開で進めていくのでよろしくお願いします!!

それで、次章の構想をこれから練るので次回の更新までに間が空いてしまうので、ご理解頂きますようお願いします。


それではいつもの謝辞をーー!!

ここまで読んでくださりありがとうございます!!

ブクマやコメントなどもお待ちしております!!

ではまた次章!お会いしましょーー!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ