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能無しの『英雄体現』  作者: 神田 明
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第十話 助けに来たぞ

「……此処(ここ)だな。」


 端末に表示された恵の位置情報が示したのは、市街から外れた少し(さび)れた工場だった。


 彼方達は、車の影に隠れながら敷地内の様子を(のぞ)()む。

 敷地内には見張りの機械人形が配置されており、警備は厳重だった。


「よしっ……。行くぞ………!」


「えぇ。恵さんを取り戻すわよ。」


 臨戦態勢に入ったのか、此処に来る途中能力を解除していたアリスが、再び氷で形成された純白のドレスを身に(まと)う。


 カッッーー!


 アリスが(かかと)を打ち鳴らすと、足から氷が()()し、コンクリートの地面を侵食していく。

 その様は、まるで氷が意思を持って動く生き物の様だった。


 やがて氷は敷地の入り口にいた二体の機械人形を(とら)え、全身を氷漬けにしてしまった。


「GO!!」


 彼方の突入の合図と共に、二人は工場に向かって走り出した。


 異変を察知したのか機械人形が迎撃に入る。


 駆け抜けながらアリスが虚空(こくう)に手を突き出すと、先端の(とが)った氷の槍が四本形成される。


「『氷結の槍(アイシクルランス)』……ッ!!」


 アリスが手を横に振り払うと、氷の槍が機械人形に向かって射出された。


 氷の槍は機械人形(オートマタ)達に見事命中し、手足を吹き飛ばした。

 しかし、手足を吹き飛ばして(なお)(おそ)いかかってくる機械人形(オートマタ)達。


 彼方は、機械人形との距離を詰めると、舗装(ほそう)された地面が(くだ)ける程の()()みをする。


「……………ッッ!!」


 体の(ひね)りを利用した右ストレートは、衝撃音(しょうげきおん)を盛大に発しながら機械人形の体を吹き飛ばした。

 吹き飛ばした機械人形は工場の壁にぶち当たると、そのまま動かなくなった。


「彼方!!コイツらの相手をするには時間が無いわ!!ここは私に任せて貴方は先に行きなさい!」


「………!!ああ!頼んだ!!」


 アリスにこの場を任せ、彼方は工場に向かって走り出すも、機械人形(オートマタ)達は彼方の工場の侵入を(はば)む様に、目の前に(おど)()て来た。


「『氷刃の舞踏会(ブレイドダンス)』」


 クナイの様な形をした氷の刃が、アリスの周りを取り囲む様にサークル状に展開し、浮遊する。

 氷の刃を際限なく生成すると、次々と機械人形めがけて射出した。


 射出された氷の千刃(せんじん)機械人形(オートマタ)達の動きを止めるには十分で、アリスが足止めをしてくれている(すき)に彼方は工場の鉄扉(てっぴ)に手をかけた。


 鉄扉を開くと、機械人形(オートマタ)数体がアサルトライフルを手に手に持って待ち伏せしていた。


「………!!」


 一斉(いっせい)に鳴り響く(かわ)いた音と共に、(またた)くマズルファイアが暗闇を照らした。


 迫る凶弾(きょうだん)が彼方の体を貫く寸前に、反射的に彼方は『(かせ)』を外した。


「『解放(リベレイション)』」






「フッッ!!」


 彼方の上段回し蹴りが、パァンッッ!!と、快音と共に機械人形の側頭部にあたる。


 蹴りの衝撃(しょうげき)でたたらを踏む機械人形を壁に押し当てると、胸板(むないた)を殴りつけた。


 殴るたびに段々とひしゃげていく鉄板。


 幾度(いくど)目かの殴打で、体内にある機械が壊れたのか、ズルズルと壁にもたれかかりながら(くず)れ落ちた。


 最後の一体が活動を停止したのを確認すると、左の脇腹を押さえながら壁に寄りかかった。


「あぁ……ッ!グゥッ……!!」


 押さえている脇腹からは血が流れており、服に染みを作っていた。


 流石に全部は避けきれなかったか……。応急処置も出来るような状況でも無いし……。まぁ命があるだけマシか………。


 先程のアサルトライフルでの一斉射撃の時、彼方は右肩と左脇腹を撃たれていた。


 右肩は(かす)った程度で出血量も(ひど)くは無かったが、腹部は貫くまではいかなくとも肉を(えぐ)っていた。


 撃たれた部分から流れる血のヌルリとした感触に苦笑いを浮かべると、また一歩一歩と歩みを進み始めた。




「……………。」


 蔵智は工場の各所に設置された監視カメラの映像を静かに見ていた。


 侵入者か。場所がバレるのが早いな…。まだ人工知能が人類を超えるには時間がかかる……。もう少し装置の出力を上げるか……。


「………事情が変わった。装置の出力を上げる。」


 蔵智の言葉に(あわ)てて待ったをかけようとする恵。


「なっ………!アッ…!アアァアァァアア!!」


 しかし静止は間に合わず、脳の使用領域を拡張する装置の出力が上がり、脳に流れる電流の量が増えた。


 より一層頭の痛みは増し、(ひたい)には血管が浮き出て、目からは血涙(けつるい)が流れ出した。


「アアアァアアアアアアア!!!」


 (のど)()()かれんばかりの恵の悲鳴が、蔵智の鼓膜(こまく)をビリビリと振動させる。



 絶え間なく続く悲鳴が室内に満ちるほど経過した時、部屋のドアが開く気配を感じた。


「……………来たか。」


 蔵智が振り向きざま、部屋に入って来た訪問者を見やる。


「………………今すぐ恵を解放しろ。」



 ……………この……声は……。



 いまだに頭の装置からは強い電流が流れていて悲鳴が勝手に漏れ出てしまう。

 しかし少女は突如聞こえた声に反応してか、悲鳴を(こら)え顔を上げる。


 目の毛細血管が千切れた影響か、視界は赤く映っていて、まともに声の主の姿を見る事が出来ない。


 でも分かる。この声はーー。


「か……なた…ぁ…………!」


「悪い遅くなった。助けに来たぞ……!!」


 彼方!


 彼方!!


 彼方!!!


 彼方ッッーー!!


 恵の胸の内から(あふ)れ出る『助けて』と叫ぶ気持ちが強くなっていく。



「すまないがこの少女を手放すわけにはいかない。君にはお引き取り願おう。」


 蔵智が大型の機械を操作し出す。すると大型の機械の影にでも隠れていたのかゾロゾロと機械人形(オートマタ)達が出て来た。


 軽く見る限り十体以上はいた。


「はっきり言って君に勝ち目はない。ここまで来るのに何回か私の機械人形と戦って来たのだろう……?もう全身ボロボロじゃ無いか。」


 蔵智の言う通り、彼方の全身は傷だらけでとてもこの数の機械人形に勝てるとは思えなかった。


「どうせ君も後で殺すつもりだが、今邪魔されると面倒だ。大人しく諦めてくれないか?」


「………………。」


 彼方は蔵智の言葉を無視して歩みを進める。


「………そうか。引き下がらないんだな。なら死ね。」


 機械人形が一体、彼方に向かって襲い掛かると、そのまま彼方の首をヘシ折ろうと手を伸ばす。


 ゴッッッッッッッッーーーーーー!!!!


 彼方の裏拳が、機械人形の頭にクリーンヒットする。


 機械人形は体を回転させながら吹き飛び、やがて壁に激突すると動かなくなった。


 目の前の傷だらけの少年が、機械人形を一撃で再起不能にするという有り得ない現実に目を見開く蔵智。


 放心気味の蔵智に対し、彼方は口を開く。


「………もう一度言うぞ。大人しく恵を解放しろ。」


「………厄介だな…ッ!」

ついに十話まで更新しました。物語もクライマックスになってきております。

この話を書いてる時に、恵ちゃんが変な装置付けられるわ、血が出るわで、ちょっと可哀想に思ってきました。次からはこう言う残酷なシーンは控えようかなと考えてたりします。

それでは最後に、

いつも見て頂きありがとうございます!!

ブクマとコメントもして貰えると(以下略)

それではまた次の更新でお会いしましょう〜!

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