流離
今の仕事も飽きてきたので、他の仕事を探すことにしよう。
やっぱり楽しくお金を稼ぐのが一番だ。
もう何回目のことだろう。
そんなの数えていても仕方ないので、いつからか数えるのを止めていた。
こんな生活をし始めてから、どれくらい経つのかすらもう覚えていない。
まぁ楽しく生きていればそれでいいか。
とりあえずついこの間建てたばかりのビルがみるみるうちに壊れていくのを見ながら、次に何をしたいのかを考えていた。
この都市は他の周囲の都市と比べて、時間の流れが著しく速いのだ。
時間が速いといっても、相対的な話をしているのであって、決して早く老いるとか、足が速くなるとかそういうことではない。
簡単に言うなら、周囲の都市は米の収穫を手作業でやっているが、ここでは高速のコンバインでやっているみたいなことだ。
勿論、こんな高層ビルのせめぎあうところで農業をしている人なんていない。
それ以前にこの都市は周囲と隔離されていて、物の行き来はおろか、人の行き来すら基本禁止されているので、外とのビジネスはできない。
ここなら欲しいものは何だって手に入る。
ここに住んでいる人々はそれが当たり前なので、今更それをすごいことだとは思っていないし、俺ももうだいぶ昔にこの感覚には慣れてしまっていた。
苦労しなくても何でも手に入る。
こんな生活は小さい頃の俺では到底考えられなかった。
今こそこんな大都会で一人暮らしをしているが、小さいころに住んでいたところは、今では考えられないくらい田舎だった。
隣の家までは50mくらいあった。
学校が終わったら、森で鬼ごっこをしたり、広い田んぼでかくれんぼをしたりしたのは、今ではいい思い出だ。
村の人たちは皆仲良くて、それぞれがそれぞれを助け合いながら暮らしていた。
あの場所での時間の流れは、とてもゆっくり流れているようで、それでも一瞬で過ぎ去っていったような気もしていた。
今では一人で、だれにも頼ることなく暮らしている。