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この我が宿、だと?

 とうとう着いてしまった、ポッポの里に。


「ピピッピィヤ!(ここが私達のエデンね)」


「ガオ、ガッガ……(いや、地獄だ……)」


 里には、ちょっとした店などがあった。剣士に必須な武器屋や防具屋にポーションショップ。アクセサリーショップなんかもある。まぁ、本当にちょっとした物しか売っていないのだが。


「す、すげぇ! オレ、初めて村の外の店見た。お金は……カツカツだけど、見るだけなら、ね」


 そう言って主と共に幾つかの店を回った。


 そこは武器屋。


「すげぇ! 村はみんなサモナーで、本物の剣なんて見たことない!」


 そこはポーションショップ。


「すげぇ! 村じゃ大人が契約した魔物が大体の怪我は直してくれたから、ポーションなんて見たことない!」


 そこはアクセサリーショップ。


「すげぇ! 村じゃサモンジュエルをアクセサリーにしている人は居たけど、真珠のアクセサリーなんて見たことない!」


 我がわかったこと。主の村、スペック高くないか?


「そろそろ宿に行こうか。デカイ風呂、楽しみだなぁ。クロもララもそうだろ?」


「ピィ、ピピィ!(心の鐘がディンドンディン! 溢れる幸せ花盛り!)」


「ガウガウ……(終わった……)」


 ララの意味の分からないポエムがまた始まった。妖精ってどいつもこいつもこんなのしかいないのか? いや、そんな訳ない。


「こんばんは。オレ、アキド村のコウユウって言います! 今日ここに泊めて欲しいんですけど……」


「おや、アキド村出身ということは魔王討伐かい? 儂もあの村出身でのぅ。儂も君と同じくらいの頃は各地を巡ったものじゃ。まぁ、あの村に戻る前に婆さんと結婚したから、途中で諦めたのじゃが」


 何それ、魔王討伐って。主から聞いていないんだが。主の村、バーサーカーの村説浮上。それなら主が我と契約できたのも頷ける。


「お風呂、お風呂に入ってもいいですか? オレ、すごく楽しみにしていて……」


 すると宿の爺さんは何か感じ取ったかのように微笑み、


「うちの宿は混浴じゃからのぅ。君のような年頃の子が楽しみにするのも当たり前じゃのぅ。この角を曲がったところだから行ってくるがいい」


「ありがとうございますっ!」


 多分、大きな誤解が生まれている気がするのだが。

 我らは脱衣所にやって来た。勿論、我もララもドラゴンと妖精だから、服を脱ぐ必要はない。そもそも着ていないのだから。


「ピィピピィピャ!(さぁクロくん、ドキドキ湯けむりハッピネスに行きましょ)」


「ギャルル!(絶対嫌だ!)」


「ピピ、ピャピッ!(照れなくったっていいのよ? 私とクロくんは運命の赤い糸を超えた虹色の糸で結ばれているのだから!)」


 また始まった。我の何が良いのだ?


「クロ、ララ。気持ちいいか? ってな、何でお、女の人がここに!?」


 あーあ。やっぱりこうなるのか。


「だってここ、混浴よ? さぁ、お姉さんとバトルしなさい。お姉さんが勝ったら、一つ言うこと聞いてもらうわよ。バトルは、勿論体術よ」


「う、受けて立つ! クロ、ララ。見てろ!」


「ガウガウ!(これ、負けたら……)」


「ピヤピーピ!(恋のパステルカラーね!)」


 我が主が、恋のパステルカラーに……! これはマズイ。あの爺さんと同じような流れで旅を止められたら、あのライトバーニングドラゴンに一発御見舞してやることができなくなる。マズイぞ。


「♪ラーララーララーララー(もーえさかれー恋のーファイアーあなーたのここーろのこーおりを溶かしたまーえ)」


 あれこの歌は、またバフだ。多分これは移動速度上昇と防御力上昇をコウユウにかけている。

 それは良いが、歌詞をどうにかしてくれ。


「あら? あなたお姉さんを見て何も感じないのかしら? ホラホラ」


 まさかあの女が使っているのは幻惑スキル! 精神に干渉して、ものによっては支配してしまうスキルもあった筈。ヤバイ、主。どうするのだ?


「何を感じるんですか? ハッ! ご、ごめんなさい! 女の人の……なんて見ちゃいけないのに」


「あら? いいのよ、気になるでしょ? ホラホラ」


「ピピィ! ♪ピヤピピピーッ(そういうの私の求めてるラブとは違う! ♪熱く、あーつーく燃え盛るー火山のごとーく)」


 ララの歌が女の幻惑スキルを妨害している、だと? こいつどれだけ優秀なんだ。スキルは。歌詞とか中身とかを直せば良いと思うんだがな。


「チッ! 邪魔するんじゃないわよ! 私はサキュバス。人間の精気を吸い取る魔物よ。この男の子、私の好みだったから攫ってやろうと思っていたのに。こうなったら。そこの妖精、私と勝負よ!」


「ピピィヤ!(受けて立つわ、ラブを冒涜するあなたは許すわけには行きませんから)」


「え、サキュバス? 精気? 何のこと?」


 我が主は間抜けだった。だが、その召喚獣の妖精は強かった(中身の癖の強さも含めて)。

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