ホラー小説を書く人、書きたいと思っている人へ
「怖いもの見たさ」という言葉があるように、わざわざ怖い思いをしてホラー作品を見ることがあります。
「安全が約束された場所から、恐怖を疑似体験」することで、脳は刺激を受けて快楽を得るそうです。
しかし、この「安全が約束された場所」という条件を外すとどうなるでしょう。
ものすごく怖くなります。
ただ、見た後の満足感は一切ありません。ただ怖がらせるだけになります。
「それってどういうこと?」と気になる方は、引き続き閲覧下さい。
僕が小学生の時、『学校の怪談シリーズ』という本が流行っておりました。ライトノベル程度の厚さで、あちこちの学校に伝わる怪談話をオムニバス形式でまとめた作品です。
児童文学ということもあり、そういう怪談話が好きな生徒には人気のシリーズでした。
しかし、シリーズ4巻にて、「ある話」が当時小学4年生の僕を恐怖に陥れました。読んだ後、この本を勧めてきた友人Y君を恨めしく思いました。
その作品タイトルは確か、『メリーさんのさがしもの』だったと思います。ネットで検索すれば、『メリーさんの小指』とか色々似たような話があるので、そこそこ有名な話かもしれません。
で、気になる内容ですが……
『メリーさんのさがしもの』
――メリーさんという女の子が、
――雨の日の夕方、横断歩道を渡ろうとしたら、
――信号を無視して突っ込んできた車にはねられて亡くなりました。
――しかし、メリーさんの小指だけは切れてどこかにいってしまい
――いくら探しても見つからなかったのです。
――この事故があってから、雨の振る夕方には横断歩道にわたしの小指はどこと
――寂しい声で、なくした小指を探す少女が現れるようになったのです。
――ところで、この話を知ってしまった人は
――三日以内にメリーさんの夢を見ます。
――そして、夢の中で、ある場所に落ちている
――メリーさんの小指を探しに行かなければならないのです。
――ただ、その際に、次の約束を守らなければなりません。
――もし、この約束を破ったり、忘れたりすると
――夢の世界からこの世に戻れなくなるのです。
――つまり、夢の中をいつまでもさまよい続けるのです。
……(この後は、メリーさんの小指を探すための手順が書かれていますが、カットします。気になる人は調べればすぐ出ると思います。)
お分かりいただけましたね。途中まではこの手の怪談話によくある都市伝説的な内容です。
が、ちょっと待ってほしい。「この話を聞いてしまったらメリーさんの夢を3日以内に見るってなんやねん!しかも夢の中で下手すればそのまま死んでしまうってことかいな!」
まあよほど正直な心の人でなければ、「あ、はいはい、夢の中で死ぬわけないやん」で済まされると思います。しかし、子供の心というのは割と正直です。何も知らない子供はこの手の話を信じてしまって、ひたすらメリーさんの恐怖に怯えるしかないですよね。
「自分から怖い話を求めておいて、それで怖い思いさせられたから怒るのは違うんじゃないか?」
という意見もあると思いますが、僕が許せないのはその「手法」です。
例えば、『世界一怖いお化け屋敷』があって、そこに入ったとします。確かにとても怖いお化け屋敷です。怖い思いをしながら、出口まで来たとします。「あー怖かったー」と満足しながら帰ろうとしたところで、スタッフが近づいてきてこう言います。「実はこのお化け屋敷、本当に呪われてて、これに入った人たち、一週間以内にみんな死んでるんですよ」
こんなこと言われても、後味悪いだけじゃないですか?
怖がらせようとするあまり、ホラーを楽しもうとする人の「安全圏」を奪ってしまってはいけません。
ホラーというのはただ怖がらせればよいというわけでないということです。
『メリーさんのさがしもの』ですが、一応、文末には「メリーさんの夢を見ずにすむおまじない」は書いてくれてます。
「ソウシナハノコ」と唱えること。(逆からよむと……)
おかげで、中学に上がるくらいまで、毎晩布団の中でこの呪文を呟くはめに(笑)