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完全犯罪計画部! 史上最悪の青春ミステリー!?  作者: 夜野舞斗
1stプロジェクト ヤンデレ懺滅大作戦!
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7.凍りつくのは、失敗の代償

「へえ。つまり、こんなことやってるんだあ。部活でー」

「は、はい」


 妃芽姉さんに「完全犯罪計画部」のことを洗いざらい話してしまった。なんてことを……勿論、後悔はしている。

 彼女の口車に乗り、依頼内容まで漏らしたのは、迂闊だった。

 これでは、真面目に部活を設立した東堂さんにとっては大迷惑である。ぼくは裏切ってしまったのだ。怒られるだろうな……いや。待てよ。

 彼女は情報をくれると言った。それならばFBIとCIAも似たようなことをやっている。機密情報を信用できる情報提供者に話し、捜査を進めることだ。ぼくの取った行動は叱られるべき行動ではない。褒めたたえられるべき行動のはずだ。彼女と取引が成功すれば……

 このようにテレビの特番で手に入れた知識をフル活用し、考え込んでいた。

 

「そうだ……姉ちゃん。その彼を知っている人の話というのは?」


 部屋には誰もいない。しかも、あったはずのスマートフォンが消えている。それが示すのはただ一つ。


「御影 妃芽! 見つけ次第、お前を射殺する!」


 家に轟く声。返答や文句は来ない。どうやら親は外出中。彼女は息を潜めて、隠れているようだ。

 取り敢えず、殺虫剤を手に持って向かいにある姉さんの部屋へ飛び込む。


「きゃあ! 陽ちゃん!」


 彼女は、ぼくのものとは別に彼女自身のスマートフォンを操作して悲鳴を上げながら笑っていた。


「はーい! ワタシもグループに入っちゃいましたあ! 残念でしたー!」


 迷わず殺虫剤を噴霧する。密閉した部屋のせいで、スプレーのガスが溜まって周りが視界が分からなくなってしまった。それが状況を悪化させる……どうしよう。


「げっほ。げっほ……やったわねー!」

「ええと、ごめんなさい! ええと、もう色々やっちゃっていいから」

「え!? いいの?」


 よし。姉さんからの仕打ちはどんなものであっても耐えてもみせよう。そう思って、彼女のスマートフォンを取ろうとした。手の中に入ったのは、自分のスマートフォン。確か、これでも退会させられるはずだが……こうなると古月さんたちに悪い印象を与えてしまうかもしれない。

 殺虫剤の霧が晴れてきた。

 彼女自身で退出してもらい、全責任を彼女に押しつけよう。そう思って、彼女のスマートフォンに手を伸ばそうとした時だった。


「メッセージ送ったよ!」


 そう言われ、手を引っ込めながらスマートフォンの画面を見た。


「こんばんは! 陽介の姉です! この度、彼の紹介でこの部活に入ることになりましたあ! よろしくね!」


 その後に熊の可愛いスタンプが押されている。もう動くこともできず、喋ることもできなかった。できることとしたら、固まって画面を見つめていることだけだった。


「コンビニでデザートのプリン買ってきたわよ!」


 母の声。そこに元気よく娘が返事をしていた。


「はああい! すぐ行くから食べないでねえ!」


 妃芽姉さんが肩に手を当てて、情報をくれる……

 今は絶望と混乱でその情報の価値を見極めることはできなかった。


「彼の話だと、彼は滅茶苦茶、大人しい好青年みたい。まだ彼女とかはいないみたいだけど……これでいいかしらあ。そうそうこれで、ワタシに敵対しそうな女の子はいなくなったし、また後でお姉ちゃんと一緒に遊びましょうね」


 いつもなら何故そこまで聞き出したのだと厳しく追及するところなのだが今回に限って、そんな活力は枯渇しきっていた。

 彼女は猫のように飛び跳ねながら、一階のリビングへと降りて行く。

 

「ねえ!」

「何があったの? というか陽介君ってお姉ちゃんいたんだ」

「どういうことなの?」

「さあ? 陽介君はもう寝ちゃったのかしら」


 頭を真っ白にして自室に戻り、扉を閉める。


「なんてことしたんだろう」


 夏のほんの少しの夜風で凍死するかと思った。


――――――――――――――――――――


「で、気を取り直してえ」

「何で、ぼくの体の上に乗っかってるの……もう午前二時だし、姉ちゃんに言われた通り、遊びきったんだから眠らしてくれ」

「ごめんねえ。やだよ!」


 姉さんはスマートフォンをいじりながら、布団の中に潜っているぼくの安眠を邪魔しようとしてくる。


「で、ワタシさあ。やっぱり本気で『完全犯罪計画部』に入ろうかな」


 姉さんの提案で「完全犯罪計画部」の名から「ボランティア支部」に変更されたグループ画面が映し出されていた。古月さんが令嬢であること。そして、親や友人に見られることを配慮したうえでの提案らしい(あれから、東堂さんと古月さんの返信が怖くて、ぼくの方は全くスマートフォンを触っていない)。


「さっきは面白そうとか言ってたくせに……」

「まあ。そんな軽い気持ちじゃくてね。この子たち、陽君のこと褒めてるみたいだし」

「え?」


 机の上にのっているスマートフォンを取りに行こうとしたが、彼女の重みで布団からでさえ抜け出すことができなかった。


「ほら。顔出して、見なよ」

「本当だ……」


 そこには仲間を増やしてくれたことによる称賛のメッセージがあった。良かった。そう思った途端、安心しきって意識がなくなる……。


「寝るのはや! まあいいか。こういう完全犯罪では、嘘の証言者役、共犯者がいてもいいよね! これから頑張るぞお! 実はサークルとか入ってなかったから……こういうのでもいい出会いがあるかも……」


 非常に重い弟愛護病ブラザーコンプレックスで暑苦しい女子大生、御影 妃芽が仲間に加わった!

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この小説を読んでいただき、感謝の限りです。これからも宜しく御願い致します。
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