おまけ2.御影と古月の文化祭戦争(前編)
次の日のこと。早く終わった授業とは別に、ぼくはまた教室に残されていた。
原因は委員長の古月 結二。彼女が部活に行こうとするぼくを引き留めたのだ。
「えっと。なんか、あった?」
「忘れたの? 貴方を文化祭のクラスの実行委員長をあんたに推薦したはずよ……」
確かに以前、夢の中で古月さんに選ばれていたな。つまり、居眠りしていたときに文化祭実行委員長としてぼくの名が挙がったと。
「早く決めなさいよ! あんたを推薦したアタシにまで、とばっちりがくるのはゴメンだわ!」
彼女は、はきはきと文句を伝えてくる。その上、ぼくが持ち上げることのできない空気がこの教室に漂い始めた。
これを回避する方法。そうだ。辞退しよう!
「ぼく、実行委員長辞めたってよってクラスのみんなに伝えといてくれ。じゃあ、部活に」
ぼくが退室しようとすると、古月さんはドアの前に立ち塞がり、荒い息づかいをしながら怒りの鉄拳を腹に振りかざした。痛みはあまりないけど……攻撃された箇所抑えながら、彼女に尋ねてみる。
「……あれ? 古月さん、こんな人だっけ…?」
「あんたが辞めるんなら学校を退学させてやる! それから、委員長として働かせるわよ!」
つまり、何が何でもぼくに仕事を務めさせたいらしい。もう男なら潔くやりきって散っていくしかない。
「分かった。やるよ。けど……何するんだっけ?」
古月さんは彼女の髪を指に巻いてみたり、引っ張ったりしていた……。
思い起こせば、一年は文化祭で模擬店を出さないといけないはずだ。それで一度、ぼくたちクラスは委員長抜きで話し合い(そのときは古月さんが一人で司会をしていた)をしてフランクフルトやポテト等のジャンクフードを売ることになっていたのでは?
尋ねてみると、彼女は残念そうな顔をして、返答をする。
「同じ店は出しちゃいけない決まりがあるんだけど。先に絵里利のクラスがこの案を申請しちゃったのよ」
考えてみよう。ぼくたちも違う案を出して申請するしかないのだが、その案をクラス全体で話し合う時間はない。
彼女とぼくの計画が、文化祭の運命を決める。首の骨が折れてしまいそうな程、重い責任。それを背負うことになるとは……!?
「結局、何か案はあるの? 古月さんの方は?」
「骨董品とか、貴重な文化財の布をたった十万円で売るとか?」
果てしない絶望。お嬢様と庶民の感覚が全く違うとは……。
彼女は学校の文化祭に何を求めているのかが分からない。とにかく、彼女の暴走を止めておこう。
「庶民の祭りなんだけど。これ。だから、数百円で売れるものにしよ?」
「あれ? 金箔つきのフランクフルトやポテトに賛成してなかった?」
「してないよ!?」
ぼくの心に理解できない数式が走っていく。複雑……。
このまま、クラスでその案が通っていたら……生徒会がすぐボツにするはずだけど……。
果たしてぼくたちの文化祭はどうなってくことやら。




