発音は同じ
R18にするまでも無いかと……。
久々の超短編投稿……。
やっと念願の一人暮らしを手に入れた娘。その引っ越し途中の家にお邪魔した時のことだ。
「ちゃんと使ってるんだ?」
棚の中にあった袋の中を覗き込んだ妻が口を開いた。
「当たり前じゃない……。使わないなんて考えられないよ……」
「でもそのお腹……」
妻が娘のぽっこりと前に突き出た腹を指差して言う。
「これはただのデブ!」
「「ただのデブ?」」
夫婦二人して「ただのデブ?」を復唱して小首を傾げると、娘は大きく息を吐いて姿見鏡の前に立った。
「ちゃんと使ってるよ。ゴム無しなんて考えられないから」
そう言いながら鏡に映ったその大きく突き出たお腹を撫でてため息を深く吐き出した。
「ダイエットしなきゃね……。マジでヤバイや……」
「本当にデブなだけ?」
「だから〜、ゴム無しなんて考えられないって……。怖くてね。学生出産なんて笑えないでしょ?」
妻の鋭い視線を浴びて、娘が冗談混じりに笑ってサラリと躱す。
「で? これは使ってないの?」
「ああ、それ?」
妻の取り出したローションの袋を一瞥して娘が答える。
「あんた濡れないの?」
「え? 私、塗れへんで」
「え! あんた濡れへんの?」
「だから〜言うてるやんか……。私は塗れへんで……」
言葉遊びを楽しんでいるのは妻。娘は素直に混乱している。端から見ていて楽しいのではあるが、あまりにも娘が阿呆なのではないかと思ってしまった。
「あんた濡れへんの?」
「うん塗れへんんよ」
「じゃあ塗らなあかんやん」
「え? 塗らんでも大丈夫やで」
「濡れへんねやろ?」
「え? どうゆうこと?」
妻は完全に遊んでいる。表情が確実に楽しんでいるからだ。仕方ないから娘に助け船。メールで「濡れへん」と「塗れへん」と書いて。
「あーね」
納得したのか大きく頷くと、妻に向かって「ややこしいわ!」と叫んでいた。
「あんたはコレ使わへんの?」
興味が失せたらしく、娘のゴムを指で挟んで、今度は一緒に来た息子で遊ぼうとしていた。