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『裏:Pandemic』   作者: 月夜乃雫
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第五話「Intercept」

第五話「Intercept」




pm22:41 




 矢唖さんが味方になってくれたお陰で、あたしは下へ降りる事が出来た。

 早速、友達やその友達や知り合いなど、大勢が集まっている中で打ち合わせを始める。


 始めに、雫の友人で戦闘系クランのオーナーであり、今はデフォルメ化されて可愛い姿で紫色の衣服を身に付けた美少年が切り出す。


魔鬼人マキト「それじゃー 雫ちゃん、上に居る人達の中から一人だけ仲間に出来

     たみたいだけど、ここから先は、俺達も上に上がるでいいかな?」


雫  「うん。大丈夫だと思うけど?

    上には矢唖さんが居るから、あたしを呼んでもらって、それから順番に皆を呼べ

    ばOKよね?」


魔鬼人「OK! それでイイよ。」



 すると、魔鬼人の傍にいた黒服の青年が問うてきた。



夜徒ヨルト 「上の連中に動きは?」


とら  「今のところは大丈夫みたいッス

        特に光点が大きく動いている様子は無いみたいッス」



 彪柄の衣装で、元は獰猛な肉食獣を思わせる獣人姿な者が、今はヌイグルミの様な愛らしい姿で上空を見上げながら答えた。



鮟鱇アンコウ 「まさか、そんなに直ぐに動きは無いんじゃない?

     向こうだって、状況が把握出来ない以上は、慎重になるでしょ?」


 姿は魚人形タイニーなのだろうが、元々が可愛らしい化身が、デフォルメされて更に手足が短くなり、ヌイグルミそのものとしか見えない化身が、意外に冷静な意見を。


雫  「そうだと思うんだけど・・・」


 元の姿を知る者達が見れば、驚きの光景だったろう。


 皆一様にデフォルメ化されて、可愛い着グルミやらヌイグルミやら、アニメ顔状態でわちゃわちゃワイワイやっている姿は、ちょっと可笑しいけど、好事家なら堪らない風景だろう。




 雫と友人知人が呼びかけて集まった者達は、全部で57名。


 この島に収容出来る限界人数は100名なので、上に残っている20名強と合わせても、まだ少しゆとりがある。


 この打ち合わせをしている最中にも、海外勢も含めてお友達を召集している人も居るので、最終的には島の収容人数限界まで増えるかもしれないけど、それはもう少し後でしょうね。




夜徒 「ところで、一つ確認しておきたいのだけど。」


魔鬼人「どうした?」


夜徒 「とても重大な問題なのだが・・・」


魔鬼人「うん?」


夜徒 「武器の携帯が出来ない件について・・・」


魔鬼人「っな!?」


夜徒 「2等身で、その上武器も装備できないなんて・・・

    こんなマジックハンドでどう戦えっていうんだよっ!!」


 そうなのだ、雫から連絡を受けて、上に居る者達は全員が武器を装備して雫に向かって弾幕を張ったと聞いていたのだが、デフォルメ化された者達は、何故か重火器や刀を装備する事が出来なかったのだ。


 設定画面を見た時には、『BEAST』なんて書いてあるから、きっと物凄く強かったり、特殊な能力を使えるのだろうと期待して、ワクワクしながら設定を有効に切り替えた者達も多かった。


 ところが、蓋を開けて見ると『BEAST』を選択した瞬間は、一時的に画面全体が真っ赤に染まったものの、赤色画面が治まった後には、デフォルメ化された化身とファンタジーっぽい景色が広がるばかりで、通常の妙にリアルッぽい姿の化身達とは、文字化けの為に会話が成立しなくなってしまった。


 戦闘系クランに所属する者達は、可愛らしくなってしまった自分達の姿形に、歯ぎしりする者や地団駄を踏んだ者、密かにこのままの姿の方が、と倒錯してしまった者等、十人十色の反応ではあったが枚挙に尽きない。


雫 「あれれ? なーんか大量に光点が動いてるんですけど??」


 ヘの字形に見えていた上空に居るハズの者達の光点が、クラブ『現実逃避』の端に移動しているのに雫が気付いた。


鮟鱇 「一体何をしようというのだろうね?」


彪  「まさか、降りて来るつもりッスかねぇ?」


夜徒 「まさか・・・」


魔鬼人「いや、そのまさかかもしれないな。念のため迎える準備をしておこう!

   正確な数は分からんが、上空で動きがある光点が15ぐらに見えるから、最初から

   一気に囲んで仲間にしてしまおう!」


全員 「「「おうっ!!」」」


 迎撃、と言ってもマジックハンドと人海戦術しか対処の仕方が無い現状では、2等身軍団に出来る事など、何も無いに等しい。そこで、単純計算して4~5人で一人を一斉に囲んでしまい、前方に居る者達が倒されても、後ろに居る最後の一人がリアル化身達をコチラ側へ引き込む計画を立てた。


 ここが、理性を失ってしまった獣と理性を宿した人間の違いなのだろう。単純な獣であれば、銃を持った狩人に対して飛び込んで行くだけの単調な攻撃となってしまいがちなので、全滅してしまう。


 だが、理性がある人間が狩人に立ち向かったならば?

 しかも、倒されても90秒程で復活するのだから、足止めを喰らってしまったとしても、全体の数が減る訳ではない。一度の失敗を経験に変えて、次に成功すれば良いだけでしょう?


 それならば、最終的には数の多い方が勝つハズ!!

 単純明快だが、それが、魔鬼人が立てた計画だった。

 副将の夜徒も成功率の高い計画だと背中を押してくれた。


 2000m程にあるクラブ『現実逃避』から、15人程の光点がパラパラと降下してくる姿をミニマップで捕らえた彼等は、予想される降下地点の近くに、なるべく大勢が一つの光点に見える様に集まって待ち伏せを仕掛けた。


 上空からの光点が、地面までのグングンと距離を縮めてくると、姿が肉眼で確認出来るくらいになってきた。


 衛、Milli、夜目、瑞人達が、最初に視界に入るとほぼ同時に、何やら口々に交わしていた様だが、文字化けで全く分からない。


夜徒 「おk。魔鬼人、追加の人員揃ったって。これで多少倒されても気にせず、ガンガ

    ン攻めて行けるぜ。」


魔鬼人「了解。よーし、ひと暴れ行きますか!」


 追加の人員とは、フレンドリストから一人でも多くをこの島へ集めてしまおうという、当初の計画が成功した事を意味した。


 デフォルメ化されて、グラッフィックへの負担が減ったおかげか、最初の設定では40人も収容すれば激重になるハズのサーバーが、100人同時に入っても、あまり負荷を感じずに動けることに気付いた海外の友人達からの情報を元にして、集めまくったのだ。


題して『友達100人呼べるかな』作戦!!(ダサイネーミングとか言われても・・・


 とにかく、100人も仲間が集まれば、『一人はみんなのために! みんなは一人のために!!』の精神で、フォローし合いながら戦えば良いという発想から、思い付きをそのまんま実行へ移しただけなのだ。


 魔鬼人らに囲まれた降下組は、相当衝撃を受けた様だ。


佐武朗「豢区・ス、繝九た繝ウL繝。!!」

春  「縲∫擅逵!」

一同 「「「帙€よカシ縺!!」」」


 口々に何やら叫んだかと思うと、佐武朗が黒龍刀Subuを両手に閃かせながら、手近に居た鮟鱇に切りかかるのとほぼ同時に、降下した化身達が手にした武器を使いながら周囲に集まった者達に攻撃を開始した。


衛  「縺溘>繧「繝九た繝ウU繝。繝峨Ξ繝シ縲・5譖イ縲、雜・オカ縺九▲縺薙>縺・・樊エ区・ス繝。繝峨Ξ繝シE0 縲信Y?」


Milli 「繝峨Ξ!」


佐武朗「繧ク繧ェ繧ク繝悶Μ繝斐い繝弱Γ繝峨Ξ繝シ縲蝉ス懈・ュ逕ィ縲∝級蠑キ縲∫擅逵逕ィ縲

縲蝉ス懈・ュ逕ィ縲代ヵ繝ォ縺ァ閨エ縺・※繧よョ句ソオ縺倥c縺ェ縺」


Milli 「菴懈」


 何やら佐武朗からの呼びかけに答えたMilliと四人が隣の島へ向かう道へ分かれて移動し出した。途中で何人かが行く手を阻もうと果敢にも立ち向かったが、乱打する銃火器の前では抵抗虚しく地面に倒れ伏してしまうしかなかった。


 やがて、佐武朗は雫を見つけ出してしまった。


雫  『うっわぁー 佐武朗ってば、ガッツリ刀構えちゃって・・・ 一体ナニ考えてるんだ

    ろ(泣)。こーんな無防備な女の子捕まえて、引くわぁ~』


佐武朗「繝ウ繧ュ繝ウ・・・繧ー縲仙ョ悟!!」


春  「∝級キ縲∫擅逕ィ?」


佐武朗「ウ荳£翫£!」


春  「k笘?」




 先程から、あたしに鋭い眼光を飛ばしながら威嚇する様な動きしかして来ない佐武朗。

 春ちゃんまで、疑似チャイナっぽい言葉だし・・・。


 うん。もういいわ。ソッチがその気なら、あたしだってガマンの限界。堪忍袋の尾ってゆーのがどんなモノかは知らないけれども、その尾とやらをブチっと切っちゃってもイイよね?


雫  「女の子イジメル奴なんてモテないんだゾぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」


 言ってやった、言ってやった!

 ちょっとだけスッキリした❤

 でも、まって。マジですか? ガチですか? 本気で殺り合う気ですか!?


 佐武朗は、手にしたSubuを上段に構えると、一直線にあたし目掛けて切りかかって来た。春はその近くで佐武朗の行く手を遮ろうとするあたしの仲間目掛けて弾幕を張っていた。

 

 春と周囲に居た者達の弾幕の前に、あたしの仲間達はあっけ無い程無力だった。

 悲しい程に手も足も出ない。これじゃぁ一方的過ぎるじゃない?

 ワンサイドゲームってやってて楽しいのかしらねぇ?

 あたしは、あんまり楽しく無い。やっぱし、倒したり倒されたりするからこそ、工夫するし、攻略しようって向上心が生まれるんじゃないかしら。


 おし、そろそろとって置きの秘策を使う時かしら・・・。

 見てなさいよー 佐武朗めぇ。アナタは調子に乗り過ぎよ。


雫  「だぁーるまさぁんがぁーーーーーー 転んだ!!!」


 叫び様に、あたしは思いっきり地面を蹴り付けた。そのまま急旋回して、佐武朗の背後へ回り込むことに成功した。銃じゃなくってリーチの短い刀を握ってたのが敗因ね。


佐武朗「懈・!? 」縺ヲ繧九⊇!!」


 佐武朗の後ろ取ったりぃ!!

 ヤッタわ♪


佐武朗「譖イ縲娠a・・・・・・」


春  「蜆ェ縺ォ!!」

 

 あ。次春ちゃん、貴女だかんね?


 視線を春ちゃんに送ると、あたしはしっかりと佐武朗を背後から羽交い絞めにして、それから、あんましやりたくは無かったけど、ちょっと顔を近づけて、後頭部からの軽い口付けをしてあげる。


 もー手間かけさせやがって、佐武朗めぇ。コチラ側へ来たならば、しっかりと借りを返してもらうかんね!!


 あ、ついでだから、ちょっと頭にチョップお見舞いしとこっと♪

 えい!えい!えい! 別にチョップは仲間に引き込むのに必要は無いんだけども、これは云わば、八つ当たりというか、腹立ち紛れと言うヤツかしら。


 どうせ、今頃は佐武朗の見てる景色は真っ赤で、何も見えていないでしょうし、本人が気付かないなら、やって無いのと同じじゃない?


 という訳で、佐武朗に動きが無いので、心行くまでマジックハンド子によるチョップの連打で憂さ晴らしをさせてもらうことにしたわ。はぁースッキリした❤


瑞人 「繧「繝九た・・・・ 逕ィB! 菴懈・ュ逕ィ!!」


衛  「帙€よカシ・・・」


 周囲が騒がしいけど、そんなの関係ねー だって今は佐武朗の後頭部にチョップ連打が楽しいんですもの(笑)。


 佐武朗ってば、チョップするたびに何故知らないけど、直立不動のまんまで時々ビクンビクンと痙攣を繰り返すだけなんだもん。ヤバ、ちょっと楽しい。


 あんまり調子に乗り過ぎたせいか、羽交い絞めにしてたあたしごと地面に倒れちゃったのは、やりすぎかしら。


春  「仙ョ悟!!」

一同 「「「峨Ξ繝シ!!」」」


魔鬼人「今までのぉ~ お返し~ ダァァァァァァァァっ!!」


 茫然と佐武朗があたしに襲われる姿を眺めてしまったのが判断ミスとしか言い様が無かった。四方から魔鬼人らに囲まれてしまい、次々と降下した者達が羽交い絞めにされて後頭部に口付けをされる。まあ、男同士で頭とはいえ、口付けはねぇ?


 中には、ちょっと(かなり)嫌がらせを込めてなのか、全身に口付けを受けている様に見える者達も居たけど、海外から呼んだガチ系な人達かしら?


 ま、あたしはお近付きにはならないで、ちょっと離れたところから生暖かく見守らせてもらうわ。


 ちなみに、別動隊として隣の島へ向かっていたMilliさん達の班でも同様の結果だった訳で。


Milli 「繧ュ繝ウ繧ー! 荳也阜繝ゥ!!」

夜目 「コ豌礼塙諤ァ・・・ か縺ソ縲∝!」


Milli 「SOS縺埼」帙・!!」


夜目 「縲第か縺ソ縲∝!!」


 Milliさん達の班も、途中までは快進撃を続けていられたみたいね。

 ところが、倒しても倒してもいつの間にか四方からあたしの仲間が現れて来て囲まれてしまい、最後は結構呆気なく捕縛されちゃって、コチラ側へ合流できたみたいね。


 SOSを発信する間もなく、降下した者達を追い詰めて、全滅させることができたのは、それから間も無くだった。


 さーてと、佐武朗も春ちゃんもコッチ側へ合流させたもんね。

 残りは愛美ちゃと上に残っている数名だけ。

 さっきまでとは形成逆転ね。


 でも、いくらさっきイジワルされたからって、仲間外れは良くない。

 うん。やっぱり少数派マイノリティって淋しいわよね。

 さっき上空で経験して来たばかりだし・・・。


 おし! この勢いで残り数名もコチラ側へ引き入れて、皆で楽しくデフォルメ生活しなくっちゃ♪




pm22:50。



次も一週間後の投稿予定デス♪

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