第四話「最初の仲間ゲットだぜぇっ」
第四話「最初の仲間ゲットだぜぇっ」
pm22:35
クラブ『現実逃避』の床下から、雫がお送りします。
えー 今、床下に居るのは、あたし一人だけです。
ええ、いわゆるボッチという状態ですわー
引くわぁー
淋しいわぁー
仲間欲しいですわぁー
でもねー、何回呼び掛けても文字化けしちゃって相手の言葉が分からないのです。
困りましたわぁー
何度心が折れちゃいそうになったことでしょう・・・。
仕方がないから、お友達に呼びかけて強力な仲間を召還しちゃった♪
あたしの友達や知り合いだけだと、数人位しか呼べないから、あとは友達の友達、知り合いの知り合いと伝手を総動員してもらって、『現実逃避』に立て篭もっちゃって仲間になろうとしない愛美ちゃん達を、多少強引でも良いからコチラ側へ!
一度コチラ側へ引き込んじゃえば、後は必ず理解してもらえるって自信はあるの。
だって、他のお友達や海外の人達もみーんな『コレは面白いっ!』って言うし。
そりゃアンリアルが苦手な人や嫌いな人も居て、そういう人は早々に離席(AFK)状態になっていたりするけど、全体から見たら少ないと思うの。
床の上では、愛美ちゃんや佐武朗とか雪那さん達が、他のプレイヤー達と一緒になって、あたしに向けて銃弾を撃ってくる。
でも、めげずにマジックハンドを伸ばすあたし。
なんてけな気なんでしょう・・・
そんなあたしに後で土下座でもして、それから感謝すればいいんだわ。
あ。どうでもいいけど、あんまりにも孤独な闘いなので、マジックハンドに綽名を付けてみました。
『ハンド子ちゃん』女の子同士仲良くしましょ♪(マテ
光点が複数集まって居るのが、デフォルメ化されたミニマップに映っているのが見えるけれども、大体が3~4名のグループを作って四方に分かれているみたいね。
でも、その中にしっかりと橙色の光点が見えるの。
それはあたしとフレンドを結んでいる人が居る印。
なら、最初にお友達からコチラ側へ呼び込みたいじゃない?
今ならこのsky-boxの下には大勢の味方だって来ている事だし。
ちなみに、下に居る人達は何をしているのかって?
それは、更なるお友達の呼び出し中なのでした!
テレポートでの呼び出しって、あちこちから呼ぶから、少し時間が掛かる事もあって、まとめて一度に大勢は呼び出せないね。
そこで、ねずみ算式には出来ないけど、一人が呼び出されたら、また別の一人を、そうやって、二人が二人を、四人が四人をって倍数で呼び出すと、なんとか大勢が集まれるのです!
ある程度集まったら、あたしの居る所にも応援が欲しいところだけれども・・・
とりあえず、もう一回チャレンジしてみようじゃないの!
矢唖 「!!」
愛美 「逋サ荳区!!」
やぁーっと一人ゲット出来たわ!!
でも、直接のフレンドじゃなかったのは仕方ないわね。
矢唖さんだった。
床下に急に連れて来られて、しかも、ハンド子に足元を掴まれて、矢唖さんは、涙目になっていたけど、大丈夫、怖く無いからw
矢唖さんの不安を払拭する為にも、優しく精一杯の微笑を浮かべて近付くあたしは、この瞬間だけは誰よりもイケメン (性格的な意味で)だろう。
瑞人 「縺溘>繧・・・ 「繝九た繝ウ・・・」
衛 「繝峨Ξ繝シ!」
統 「Φ繧キ繝ァ!?」
床上が何やら騒がしいみたいね。
でも、この瞬間は邪魔させないわ。
矢唖 「斐い繝・・・ £縺ァ!! 閨エ!! 縲台コ!! 繝ゥ繝ウ繧ュ繝ウ繧ー」
矢唖さん。ゴメン何言ってるか分かんないけど、大丈夫、ホラ、こーんなに優しくって可愛らしいお姉さんが一緒に居るんだから、心配いらないわよ?
って、どーしてそんなに怖がってるの?
怯えた瞳は何でなの?
そんなに後退りしたそうにしないでよ。
心が折れるわぁー。
ハァ。
矢唖 「繧よョ句ソオ縺倥※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※!!!!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
やっと矢唖さんが大人しくなってくれたわ。
何も取って喰おうって訳じゃないんだから、ちょっとあたしが顔を近づけて、後ろから「チュッ」って軽く口付けする。
コチラ側へお友達を呼び寄せるには、ソレだけで済むのだから、ドコにも怖い事も面倒も無いじゃ無い?
後は、びっくりさせてゴメンネの意味を込めて、優しく頭をナデナデする。
この頭をナデナデは、あたしが勝手に付け加えてやってるだけなんだけど、真似してお友達や海外勢でも流行り出したみたいで、意外な反応かしら。
「これでやっと・・・」
頭をナデナデ❤
「一人ボッチから・・・」
ついでなので、ほっぺにもスリスリ。
「開放されるわっw」
ナデナデ、スリスリ。
すっかり矢唖さんは大人しくあたしの成すがままだ。
ちょっとびっくりさせちゃったし、ほっぺスリスリには引かれちゃったかしら。
でも、孤独と戦ったご褒美だもの、自重しろって言われてもねぇ?
「ふぅー」
あたしが満足な溜息を吐くと、床の上がまた賑やかになっていた。
でも、全然通じない会話なので、あまり気にしない。
むしろ、状況はあたしにとって良くなったのだから。
さっきまで床の上に居た矢唖さんが仲間になったという事は、先程までの会話の大体の内容を伝え聞く事が出来るのだから。
でも、ここは慎重に。
あたしからは文字化けして見えてても、誰かが解読出来ちゃったら・・・
まあ、その可能性は限りなく低いとは思うけど、念のためささやきチャットで呼び掛ける。
雫 『矢唖さん?』
矢唖 『っ!? 言葉が・・・ 通じてる!?』
雫 『うん、そうなの。
さっきから何回も呼び掛けてたんだけど、誰にも通じなくって、とぉーっても
困ってたのよ(涙』
矢唖 『そうだったのですね!? あれ?
でもさっきまで私って、雫さんに食べられてませんでしたっけ?』
雫 『ちょっとっ ナニソレ!? グロっ!!』
矢唖 『だってぇー 本当についさっきまでそう見えてたんですよ!!』
雫 『くぅー オークめぇ!!
手抜きメンテの次は、グロ表示とは・・・ 許せないわぁ!!』
矢唖 『・・・オークのせいかどうかは分かりませんけど、コレって一体どういう事な
んですか? 私の化身もなんか変わってるし、外に見える景色まで・・・?』
雫 『うん。そうなのよ。そのせいで、SL内が二つに分裂しちゃったみたいなの。
あたし達BEASTモードを試した者達は、未だ試していない人達に呼びかけてるん
だけど、言葉が全く通じなくって・・・』
それから、あたしは少し時間を掛けて矢唖さんにこれまでの事と、お友達や海外勢から教えてもらった事等を出来るだけ伝えた。短い時間だったので、全部は伝えきれないし、あたしもやる事がまだまだある。
なので、残りの説明とかは、ささやきチャットで他の人に引き継いでもらった。
矢唖さんから聞いた話では、あたしの今の姿やハンド子が悍ましい姿に見えていたという衝撃の事実も聞いたけれども・・・
この愛らしい姿が、ゾンビモノみたいに見えていたなんて・・・
超ショックだったけど、一旦コチラ側へ来てもらえさえすれば、問題無いので、作戦は続行で。
始めは驚いて、むしろ怒りそうなすらなっていた矢唖さんでさえ、コチラ側に来て、事態を説明したらちゃんと分かり合えたし、これからの人達も同様でしょうから。
そうして、これからの事を下に居る人達と打ち合わせする為に、あたしだけ一旦下へ降りる事にした。
あたしが居なくなると床の上に居る愛美ちゃん達がどこかへ移動してしまうかもしれないので、見張りとして矢唖さんに残って貰う事に決めた。
出来たらだけど、矢唖さんにも床の上の人達から仲間を増やすのを手伝ってもらえれば嬉しいしね。
pm22:40