第一話「始まりは好奇心から・雫視点」
第一話「始まりは好奇心から・雫視点」
愛美「雫ちゃ・・・ どーしてこんなコトに・・・・・・ もぉ・・・ 嫌だよぉぉっ!!」
雪那「アミちゃん! しっかりしてっ!!」
真弓「そうよ! 早くしないと・・・ アイツらがっ!」
若狭「コッチよっ! その先で曲がればなんとか!!」
翆 「アイツら来るよっ!!」
全力で人気の無い街角を走り続ける美女4人。
その後ろから追いかけるのは、あたし。
そう、誰でも無い、皆の心のアイドル (自称)雫だよ。
てゆーか、どーして4人共分かってくれないのかしらねぇ?
こんなに楽しいのにw
立ち止まってくれさえすれば。
ちょっとでも、あたし達の声に耳を傾けてくれれば。
でも、無駄みたいね。
正攻法では、あたし達の声は届かない。
仕方ないから、人海戦術で行くしか無いじゃない?
愛美「雫ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
愛美ちゃの悲痛な叫び声が木霊してるらしいけど、今のあたしには理解不明。
それに、コッチ側に来れば、絶対に後悔はさせないし、自信だってある。
だってねぇ?w
夜も更けちゃったし、そろそろ本気で眠くなってきてる。
何人かは、AFK(離席)状態で、この追跡劇に参加してるくらいだもの。
皆のためにも次でキメなきゃ!
そんな午前2時。
prologue
pm22:00|(システム一斉通知)
「I updated the system. If you terminate by a method other than logout, the data disappears. Shutdown should not be done.」
『システムを更新した。ログアウト以外の方法で終了するとデータが消滅する。シャットダウンはするべきではない。』
pm22:05『雫(しずく)の巣』
あたし、雫は、「Seven's-Leaf(セブンス・リーフ)」通称SLと呼ばれるネトゲ内で、それなりにベテランになっちゃった。
別に長くやってればエライとか無いし、数か月単位で留守にする事だって度々あったし。
通算で5年は遊んでるけど、北米企業エバーグリーン・オーク社(通称:オーク)が開発した、VRGはそれなりに楽しいし。
化身も色々選べるし、女心を擽るお洒落だって楽しめるのはポイント高いと思われ♪
自作でアイテムも作れるし、販売だって出来るから、なんちゃって店主にもなれる。
まあ、大抵は売れない商品ばかりで、マジで趣味だけなお店だけども。
親友の愛美ちゃんとは、2年前から一緒につるんでる。
性格が違うからこそ、居心地がいいのかもしれないわね。
SL内にはパートナーシステムがあるけど、愛美ちゃんとはそーゆー関係じゃない。
気が合って一緒に居ると楽しい遊び仲間だもの。
雫 「ねー アミちゃ~ぁ・・・」
愛美「なぁーにぃ~ シズちゃぁ~?」
いつもの様に、あたしは愛美ちゃんに甘える。
彼女もあたしが甘えるのを知ってる。
そして、適当に返事が来る。
それが、二人のいつもの会話。
雫 「退屈だぉーっ!!」
愛美「あたしに振るなよぉー」
そりゃそうよね。
あたしだって、愛美ちゃんから同じ事を言われたら『コイツ、ウザッ!』って思うもの。
だったら言うなって?
だって、ヒマなのは本当だし、声に出した方がストレスは溜まり難いってエライ人も言ってた気がするし?
愛美ちゃんの方があたしより2年程若い登録年月だけど、友達から色々と教えてもらっているらしく、可愛いお店とかお洒落な場所を知ってる事だってある。
それなら、あたしが知ってる場所よりも、新しい場所とか教えてもらった方が楽しいじゃない?
でも、今夜の愛美ちゃんは乗り気じゃないみたいね。
雫 「仕方ない。インベの整理でもしてよっかなぁー」
愛美「あー ソレあたしもしよっかな?」
雫 「そゆえばさ、愛美ちゃ」
愛美「なんぞ?」
雫 「INする直前、なんかメンテあったわね? 電源切るなとか?」
愛美「あったあった。おかげでINするのに少し待たされちゃったし、変な通知も出てた」
雫 「臨時かしら? なぁーんも通知無かったーね?」
普通なら、SLでメンテナンスが行われる場合には、前もって通知が来るのだけれども、今夜は珍しくなーんにも無かった。
営会社であるオーク社が行う「公式メンテナンス」とオーク社以外の企業や個人が所有する大小の島のオーナーが行う個人的なメンテナンスがあるのだけれども、今回はどれにも当て嵌まらないみたいで、少しモヤモヤする。
全部の島がオフライン表示って、よっぽど大規模に行われたメンテナンスだったのね。
雫 「オークめぇー ユーザー様を待たせておいて、お詫びの一言も、なぁーんも無いつもりね?」
愛美「ソレな!
てゆーか通常運転じゃね?」
雫 「ですよねー」
まあ、ほぼ無課金で楽しませてもらっているから、あまり文句も言えないかもしれないけど、折角楽しみにしてログインしようとしたら、いきなり『ログインできません』表示は萎えるわぁー
やっぱり欧米型企業って・・・
いや、辞めておきましょう。
暗いと不平を言うよりも、進んで楽しく遊びましょう!
が、あたしのモットーだし。
雫 「ぉ?」
愛美「どたの?」
愛美ちゃんが遊んでくれないから、一人遊びで、インベトリという『持ち物一覧』を弄ってたのだけど、正直数万を超えると、途中で飽きちゃうのよね。
なので、メンテナンスで何か変更でも無いかしらと、環境メニューを弄ってみたら、あったね。見た事の無い項目が増えてるじゃない。
雫 「なんか見た事無いの見つけたぉ?」
愛美「どんなの?」
雫 「んー あたし米国語苦手なのよねー 学生時代はテストマジ赤点だったしw」
愛美「マジか てか米国語ゆーなw」
コレはガチでマジ。
米国語はおろか、外国語と名の付くものは全部苦手意識を持ってるし。
ガイジンコワイ、を地で逝ってますから。
でも、SLなら翻訳機能の付いたHUDとかあるから、ソレを使ってなんとかガイジンさんと会話したりも出来る。コレってスゴイよね。
雫 「うんww」
愛美「せめてどこで何を見つけたか位ゆえないの?」
お?
愛美ちゃんも興味あるのかしら。
何なら一緒に今夜はコレで遊んでみようかしら。
雫 「んーとねぇー 『環境』のトコに見たことない米語あってぇー」
愛美「・・・。」
雫 「べ・・・ べすと? あw BEASTだわw」
愛美「BEAST? 聞いた事無い項目ね?」
本当に米国語は苦手よ。
読み方だって、全然分かり難いし。
何でアルファベットってば、単語とか読み方まで変わっちゃうの!!
やっと遊べるのに、メンテ終了後にも関わらず、所々オフラインのままになった島も多いから、テレポ出来ない島だらけ。それなら、自宅のSky-Boxに引き籠ったままでも楽しめる事を見つければいいじゃないの。
愛美「ねぇー シズちゃ~ ソレ放っておこうよ?」
雫 「えー 面白そーじゃん?」
あれ? 愛美ちゃんの反応がオカシイわね?
ノリが悪い。
もっと飛びつくと思ったのに、そうでもないみたい。
てゆーか、否定されちゃった。
いつもなら『わー面白そう、押してみよ!』とか言って、一緒に未知の領域へGO!
ってなるのに、今夜はどうしたのかしら。機嫌が悪い?
愛美「んじゃーさー 誰か試した人から感想を聞いてからとか、ブログ掲載されてから試してみたら?」
雫 「えー」
なんか、グイグイと『押すな!』オーラが全開なんですけど?
コレってアレかしら、『押すなよ! 押すなよ! って押してよぉーーーーーっ!!』
ってゆー鉄板ネタかしら?
だとしたら、やっぱり絶対に押さなきゃダメよね?
まあ、逆だったとしても、あたしの好奇心は押さずにはいられないレベルでワクワクしてるんですけど。
雫 「うし! SLで最初にBEASTとやらを使った子として、レビュー書くことにするよ!!」
愛美「お願いだからヤメテ・・・」
またまたー
やっぱり押させたいんじゃない?
雫 「ポチッとなw」
愛美「ボスケテーッ」
愛美ちゃんが要救助な単語をつぶやいてるけど、某掲示板ネタだから、やっぱり余裕があるんじゃん。それよりも、押したらどうなるのかしら・・・
愛美「シズちゃ?」
雫 「・・・・・・」
アレ?
押したのはいいんだけども、画面が全部『真っ赤』に染まってるのはどうして?
でもって、愛美ちゃんが心配そうに、あたしの顔を覗き込んでるのは何故?
んー 考えても分からないけど、ココでリセットすれば『データーが失われる』ってさっきのメンテが終わった時に表示されてたから、どうすればイイのかしら・・・
愛美「ねぇ?」
雫 「・・・・・・・・・・・・」
応えたいけど、タイピングもボイスチャットへの切り替えも出来ないみたい。
完全にお手挙げだわ。
愛美「ネオチ?」
雫 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あー「違うわぁーーーーーーーっ」って盛大にツッコみたい!!
なのに、手も足も、一言の言葉さえも出せないなんて。
コレ何て生殺し状態?
愛美「ねぇ? どしたの? なんか答えてよ?」
雫 「・・・ゲ ・・・て ・・・!!」
あれ?
『大丈夫よ!!』ってタイピングしたハズなのに・・・??
おかしわね、どんな文字化けよw
愛美「シズちゃ?」
雫 「ニ・・・ g ・・・ a て ・・・ ア・・・ @ ャ・・・!!」
あー
やっぱり、あたしが文字をタイプすると、変に誤変換されてるみたい。
愛美ちゃんが益々不安そうな顔になってくる。
可愛そうに・・・
って、その顔をさせてる原因はあたしなんだけどもね。
愛美「え? なんてゆったの?」
雫 「ニゲロ!!」
今度は、あたしが打った通りに出た。
漢字・ひらがなでは、文字化けしたので、コピペで文字を打ってみたら普通に表示された。次からはコレでタイプしなきゃならないとしたら、超面倒臭い。
少し離れてもらって、島や土地の負荷を下げれば、この文字化け状態も解決出来るんじゃないかしら、と考えたのだけど、愛美ちゃには後で謝っておかなきゃ。
愛美「ホワッ!?」
あれ?
愛美ちゃんに離れてもらうつもりで、ニゲロと伝えたけど、なんかおかしいの。
画面全体が歪みだした。
愛美ちゃんだけが妙に浮いてる感じ。
でもって、周りはどんどんと・・・
雫 『愛美ちゃ
なんか、変な感じよ
周りがどんどんと・・・』
愛美「ゴゲガヲエ・・・?」
あれ?
今度は愛美ちゃんが文字化けしてるわ。
ダメじゃん。
オークめぇ、手抜きメンテやらかしたのかしら?
雫 「愛美ちゃん?」
愛美「ガオゴエア ゴゲエボエ ボエボエガエ」
雫 「ねぇ? 」「どうしたの?」
「原因が分からないんだけど・・・」
「どうすればいいのかしら・・・」
「愛美ちゃん・・・」
雫 「あ、そうだ、押せばイイんじゃん!!」
あたしだけが、BEASTを押しちゃったから、愛美ちゃんとコミュニケーションが取れなくなったのならば、愛美ちゃんも一緒にBEASTを押せば解決じゃん!!
なーんだ、解決方法はスグ身近にあったんじゃんw
あたしってば頭イイ!
さーて、後はどうやって文字化けしてる愛美ちゃんに伝えれば良いのかしら・・・(汗
愛美「gryugyauie・・・ ※縺ソ縺・縲舌ヴ繧「繝弱?」
雫 「愛美ちゃ・・・ ソレじゃ通じないよぉw」
愛美「繝シ縺ォ縺励ッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
もー
仕方ないわね。
愛美ちゃんってば、少し近付いてあたしは手を伸ばした。
愛美ちゃんの隣に行って、気持ちを落ちつけるためだ。
いつも愛美ちゃんと一緒の時は、ソファーに二人で並んで座って、頭ナデナデとかしてると、愛美ちゃんが『落ち着くわぁー』とか言うし。
酷いわ。
愛美ちゃんってば、あたしが手を伸ばしたら、脱兎の如く外へ飛び出して行っちゃったのって・・・・
あー なんか傷付くわぁ
でも、コレって誤変換のせいよね?
それなら、早く行って誤解を解かないとダメじゃん!!
あー 何でこんな追跡劇を演じなきゃなんないのよ。
普通にマッタリ過ごすだけで良かったハズなのに・・・
全部オークが悪いんだわ。
とりあえず、そういう事にしておきましょう。
どうやら、愛美ちゃんってば、飛行も使わずに地面まで、自由落下で行ってしまったみたいだけども、どうしたのかしら。
普通に飛べばイイのに。
落下で逃げる程、あたしが怖かったとか?
でも、おかしいな、あたしからは全然怖く見えないのに・・・
やっぱり。さっき終わったメンテとBEASTが怪しいわね。
誰かに聞いて、文字化けの解決方法とか教えてもらえないかなー
ミニマップでは、愛美ちゃんがしっかりと真下に居る事が表示されてるから、あたしも移動しようかな・・・
とか思ってたら、『ささやき』チャットで連絡が来た。
どうやら、お友達からみたいだけど、2種類あるのはどういう事?
一つは、いつも通りで言葉がちゃんと表示されてて、会話が成立する。
もう一つは、さっきまでの愛美ちゃんと同じ。酷く文字化けしてて、会話が不成立。
それなりにSL長くやってると、一度に複数の『ささやきチャット』を熟す事だって出来るから、今は2か所同時に。
そうこうしてる内に、愛美ちゃんの姿が消えちゃってるんですけど!?
どうしてこうなった。
てゆーか愛美ちゃんはドコへ移動しちゃったの?
さっきから愛美ちゃんに『ささやきチャット』送ろうか、直接テレポートで呼び出そうかと思ってるけど、文字化けが解消されないとねぇ?
とりあえずの課題が2つ出来てしまった。
1.どこかへ移動してしまった愛美ちゃんを見つける事。
2.文字化けを解決する方法を調べる事。
2つがクリア出来ないと、愛美ちゃんの誤解が解けないの・・・(涙
長い夜になりそうね。
pm22:13
『Pandemic』の雫視点がメインで書いて行く予定です
よろしくおねがいします m(_ _)m