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プロローグ・街への視察

怪しい商人が訪れた次の日の朝、私はワインレッドの髪を隠し、薄く化粧を施す。

街へ繰り出すための簡素な服をメイドと選んでいると、扉からノックの音が響いた。


「お嬢様、昨日来られた商人たちがまた面会をご希望しておりますが・・・どうなさいますか?」


扉の外から聞こえたアランの言葉に、私は深いため息を落とす。

また来たの・・・?


「今日はお父様もおられないし、お帰り頂いて」


かしこまりました、と返事が返ってくると、私の部屋から彼の足音が遠ざかっていく。


もう勘弁してよ・・・。

私は彼らがこちらに来る前に屋敷を出て行こうと、急いで適当に選んだ簡素なワンピースへと袖を通した。

昨日片づけた書類をメイドへと渡し、彼らに見つからないように馬車へ運ぶよう指示を出す。

そうして私は急いで部屋を後にした。


彼らと鉢合わせにならないように注意を払い、こっそり屋敷の裏口から外へと続く道を歩く。

ふぅ・・・これで一安心ね。

裏口では爽やかな微笑みを浮かべたアランが私を迎え、用意された馬車へと乗車する。


「そんなにお急ぎでどちらへ行かれるのですか?美しいお嬢様」


聞きたくない声が聞こえた気がしたが、きっと空耳だろう。

私は振り返る事なく、さぁ早く出発するわよ、と執事のアランへ声をかける。

アランもニッコリと微笑み馬を走らせる準備を進めた。


聞こえないふりをする私にプラチナの色男が、私の視線に割り込むように周りこんできた。

するとご一緒してもよろしいですか?と感情のこもっていない笑顔でそう問いかける。


はぁ・・・面倒ごとはいやなのよ・・・。

馬車の前から退きそうにない、赤い髪の男とオレンジの髪の男達を見つめる。

これは退かなさそうね・・・。

渋々彼らの同行を許可すると、プラチナの男は私が乗車している馬車へと乗り込んできた。


「ちょっと!自分たちの馬車でいきなさいよ!」


プラチナの髪の男は、私の言葉に耳を貸さずに無理矢理馬車へと乗車する。

そんな私の声に反応し、アランが彼を馬車からひっぱりだすために、こちらへ来ようとしているのを慌てて制止した。

商人と偽ってはいるが、彼は王宮の関係者だ。

私は同じ貴族だからなんとかなるが・・・・アランを巻き込むわけにはいかない。

馬車へと乗り込んできた男を睨むように見据えるが、彼は無言のまま私の向かいの席へと腰かける。

私は深いため息をつき、アランへ馬車を走らせるように指示をだした。

太陽の光がかすかに入る馬車の中で、向かいに座る彼の様子を観察する。

いったい・・・何を考えているのかしら・・・?


「王都へきていただけませんか?」


じっと見つめていると、プラチナの男が優しそうな笑顔を浮かべ、私へと問いかけた。


「行きませんわ、あなた達が何者であろうとも・・・」


私は彼の冷めた笑顔を見据えた後、彼から目を逸らし、馬車から見える外の風景へと目を向けた。

絶対に行かないわ・・・、彼の様子を見る限り面倒ごとでしかない気がするもの。



そうして馬車は順調に進み城下町へと到着すると、城下町は人で溢れ賑わっていた。

数年前までここは町の人が小さく商売をする市場だったのが、今では国中の商人が集まる大都市と進化した。


私は設立した孤児院へと足を運び、自分が育ててきた者たちへ会いに行く。

今日は私がここへ来ることをアランを通して、仲間に知らせを出していたた為、日ごろここにいないはずのギルドを任せている者や、警備を担当している者、役所に潜り込ませている者などが集まっている。


子供たちへ挨拶を済ませ、プラチナの男に見つからないように孤児院の中にある応接室へと場所を移動すると現状の報告へとうつった。

私は書類に目を通し、問題事がないことを確認する。


「街で、2~3日行方不明になる怪奇現象について何か情報が入っていないかしら?」


「その件につきましては、警備兵で調査を行っているのですが、現状ではなんの情報も得られておりません」


「役所の方では様々な噂が流れており、どれも裏をとってみましたが、信憑性がないものばかりですの」


「ギルドでは娘を誘拐された父親が働いており、その娘に会わせて頂きましたが、記憶が抹消されてるといいますか・・・まったく覚えていないご様子でした・・・。」


私は彼らにありがとう、と礼を言うと隠し扉から部屋を出た。


噂か・・・そいつらが情報を拡散している可能性があるわね。

私はアランを呼び、アドルフへ伝言を頼む。

アランは馬車へと戻り、一緒に同行してきた護衛騎士へ伝言を託すと、騎士は警備兵がある街の中へと消えていった。


そして私は孤児院の経営を一任しているシスターの元へと赴き、子供たちの為に用意した支援品を手渡した。

私が物資の提供を行っている姿を確認したのであろうか、プラチナの男が私の傍へと歩いてくる。


「孤児院の運営も手助けされているのですか?」


「ええ、親の勝手で不憫な思いをする子供たちを助けたいの」


私は彼の質問に、当たり障りのない返答を返す。

そうですかと微笑みを浮かべた彼は、ただの偽善者ってわけではありませんよね・・・?と囁くような言葉に聞こえていない振りをすると、彼を置いて孤児院の子供たちの元へと戻った。


そんな私の様子を楽しそうにプラチナの男が見ていたことを、私は気が付いていなかった。


孤児院での用も済み、私たちは街へと戻る。

飲食店や、洋服店などが立ち並ぶ中央区へと足を運び、ついてくる怪しい3人ついて考えていた。

彼らはいつまでついてくるのかしら・・・?

次に向かう場所は彼らを連れてはいけない、いや・・・連れて行きたくないといったほうが正解か・・・。

困ったな・・・ふとっ傍にいるアランへと目を向けると、黒い雰囲気を纏い、私へただただ微笑みを浮かべる彼と視線が交わった。

ちょっ・・なんで!?どうしてそんなに怒っているのかしら・・・。

うーん、アランに彼らの事をお願いするのはやめておいたほうがいいわね・・・。


立ち並ぶレストランを眺めながら、どうしようかしらと考え込んでいると、人があふれる街中で見知った姿が目に留まった。


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