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第一章 側近VS執事・濡れ衣(戸籍の男編)

部屋へと入ると、


アランは筋肉質な男二人に取り押さえられている姿が目に入った。

アランを確認した後、ゆ侯爵家の男に目を向けると、手には宝石が握られていた。


「私は盗みなどやっておりません」


「まだ言うか、お前のポケットからこの宝石が出てきたのが何よりの証拠ではないか!!!」


怒鳴り声が部屋に響き渡る。


侯爵家の男は開いた扉へと目を向けた。


「領主の娘、お前の執事はしつけがなっていないんじゃないのか・・・?平民風情が!私の大事な宝石を盗むなんてな!!!」


侯爵の男は動けないアランにドスッ、ドゴッ、と重い蹴りを入れる。


ゲホッ、ヴゥッ


私は咄嗟にアランの前に立ちはだかる。


「ふんっ、なんだその目は!」


アランがそんなことするはずない・・・。

これだけ多くの人が集まった会場で何か仕掛けてくるなんて・・・。

あの時アランに飲み物を取りに行かせ、一人にするべきではなかった・・・。


私は侯爵家の男を睨みつけながら後悔の念に駆られていた。


ここで違うと言っても、こいつは侯爵家だ。

白を黒にすることなんて容易にできてしまう。

分が悪いわ・・・。


私は一度深く目を瞑ると、


「アランの主人は私です、私が罰を受けますわ」


そんな私の様子に侯爵家の男は満足そうに微笑むと、厭らしい笑いを浮かべ、私を上から下まで嘗めまわすように眺める。


「なら、今すぐここで脱げ」


その言葉にアランは瞳に怒りを浮かべ暴れ始めるが、ゴツい男たちはアランを離すまいと押さえ付けるように、捕えている腕に力を込める。


「お嬢様!!!・・・いけ・・うぅっ・・・」


側に立っていた優男の執事は徐に布を取り出すと、アランへと近づき、口もとに布を巻いた。


私はそんなアランの様子を一瞥すると、持っていた扇子を床へと置き、侯爵の男を表情を変えず見据えた後、ゆっくりと彼に背を向ける。


背中に手を回しドレスを固定していた紐を解いていく。

目の前に見えるアランの顔が、青ざめていくのがわかった。


そんなアランに私は大丈夫だと、微笑みを返す。


ドレスの下に隠れていた肌が露になり、私はシミーズ姿となった。

男のゲスな笑い声が耳に届くと、こちらへと近づいてくる気配を背中で感じた。

もう少し、もう少しの辛抱よ・・・。

ここでこいつを食い止めていれば、証拠を見つけた彼らがこの屋敷へと乗り込んでくるはず。


男は、シミーズの紐が頼りなくかかる私の肩へと手を伸ばすと正面へと向き直させた。


「領主の娘は美しいと有名だったからな、今日お前を見た瞬間、俺のおもちゃにしてやろうと決めていたのだ」


舌を嘗めずりをしながら、彼は私の腰へと手をまわす。

アランは両サイドに立つ男たちに取り押さえられたまま、優男に顎を持ち上げられる。

絶望の色をしたエメラルドの瞳が私を映した。


「はっは、良い余興を思いついた・・・お前の大事にしている執事の前で犯してやろう」


シミーズの上から露になった脚を嘗めるように顔を寄せ、厭らしい手つきで体をなでまわす。

侯爵の男は膝をつき、こちらを映しているアランへと視線を向けた。

男が触れた私の肌に鳥肌が立っていく。


「しっかり、この女の乱れる姿をみておけよ」


私は震えをなんとかこらえ、貴族令嬢に相応しい毅然とした態度で侯爵の男を見据えていると、男は私の腕を強引に引っ張り、ソファーへと押し倒した。

私はソファーへ倒れ混むと、顔を持ち上げ、憎しみを込めた瞳で私の上に跨る男を睨みつける。


「いいねぇ、その目がいつまでもつか楽しみだ」


男はゆっくりと私の口もとへと顔を寄せる。


「どうして、アランを利用したの・・・?」


私は近づいてくる男にそうつぶやいた。

男は私を嘲笑うように見つめると、耳元で話し出した。


「俺の執事は優秀でな、あんたを抱きたいと言えば、あの執事を捕まえてお前を引っ張り出せば良いと・・・執事をかばってこんなことするか、とは思っていたが・・・まさかこんなにうまくいくとは思わなかった、はっはっは」


執事か・・・

私は優男へ目を向けると、表情が読めない笑顔を張り付けたまま、ソファーへ横たわる私をじっと見ていた。




パーティーの会場では・・・・


ガゼルは終始女に囲まれ、身動きが取れない状態でいた。


鬱陶しいな、公爵家でここに入れていればこいつらを追い返すことは簡単なんだが・・・。

現状俺はただの商人だ。

ここに集まる貴族をないがしろにするわけにはいかない。


ガゼルは心の中で深いため息をつくと、笑顔をはり付けたままご令嬢に愛想を振りまいていく。


ご令嬢たちのおしゃべりに笑顔で付き合っていると、俺はふと、先ほどまで会場の端に立っていたルーカスの妹を探すように視線を添わせた。


いない・・・。

慌てて会場を見渡すが、ワインレッドの髪は見当たらない。

そしてあの気に食わない執事の姿もなかった。


そんな時、近くで話す女性たちの噂話が耳に届いた。


「侯爵様また新しい女を見つけて部屋に連れ込んだみたいよ・・・あぁ、お可哀そうに・・・」


「えぇ、気の毒ではあるけど・・・私たちが選ばれなくてよかったわ。あの男に抱かれた女性の噂は悲劇ばかりよ、確か・・・男性恐怖症になって部屋から出てこれなくなった女の子もいるらしいわ」


「怖いわね・・・、でも侯爵家のご招待を無下にもできないし・・・」


まさか・・・

俺は慌てて懐に忍ばせてあった公爵家の紋章を取り出し、俺の周りを取り囲んでいた貴族女性に見せつける。

囲んでいた女たちはその紋章を確認すると大きく目を見開き後退った。

目の前で積極的に話しかけてきていた女がつぶやいた。


「王都で有名な五大公爵家の一つ・・・ガゼル様ですの・・・?」


俺は彼女たちに冷めた微笑みを浮かべ、自分の前から退くように命令すると、女たちは慌てたように散らばっていった。


俺は急ぎ足で侯爵の本宅へと足を進める。

くそっ、目を離すべきではなかった・・・。


本宅へ入ると黒髪に二つくくりの可愛らしいメイドが私の前に立ちはだかった。


「ご招待いただいております客人様は、ここよりお通しすることはできません。お引き取り下さい」


強い目で見据える彼女に鋭い視線を投げ、手にしていた紋章を見せつける。

女は驚愕の表情を浮かべるが、俺の前から退かなかった。


「主様のご命令でございます・・・公爵家の方でも・・・お通しすることはできません!」


俺は深いため息をつくと、メイドを押しのけ前へと進む。


「ダメですってば!」


俺の腕を掴み、引き戻そうとする女に鋭い凍てつくような視線を向ける。


「私に逆らうのか・・・・?」


その言葉に女は怖気づくように捕らえる力が弱まった。


「はやく案内しろ」


そうメイドに命令すると、恐怖の表情を浮かべ、ゆっくりとガゼルの前を歩きだした。


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