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第一章 側近VS執事・捜査開始(戸籍の男編)

お兄様の提案で王宮の関係者たちと捜査を進めることになったある日、私はアドルフからきた伝達を元に、捜査が停滞している戸籍を売った男の証拠を押さえるために、自ら出向くための準備を進めていた。


父の書斎へ向かい、私宛に届いているパーティーの招待状を探す。


「珍しいな、いつもすべて断っているのに、パーティーへ参加したくなったのか?」


「まぁ、そんなところですわ」


父を横目に招待状に目を通していくと・・・

あった、日付は明後日ね。丁度いいわ。


「そうだ、明日から父さん王都に出掛けてくるから・・・留守の間無茶な行動をするんじゃないぞ」


お父様の言葉をはいはいと聞き流しながら、部屋の前に待機していたアランへ招待状の返事をするよう指示を出す。

そして私は招待状を手にしたまま、ワインレッドの髪を隠しアドルフの元へと向かった。


あれから奇怪な事件は起こらず、街は少しずつ落ち着きを取り戻していた。

私たちが動き出した事に気が付いて、別の手段で青い宝石を探しているのかしら・・・?






彼を捕まえた翌日アドルフは、牢屋の男が持っていた戸籍を頼りに、戸籍に登録されているの男の家に行ってみると死後数か月はたっているだろう、骨が散乱していた。

肋骨の当たりに深い傷があったことから刺されて殺されたという事は明らかだった。


戸籍を売うりさばいている奴は、こいつから戸籍を奪った後、殺したのか・・・

親族も所帯の持たない男を狙い、殺されてもなかなか気がつかれないやつを選んで・・・クソッ!徹底してやがる。

アドルフは部屋に散らばった空き瓶を蹴り一人ごちた。


手がかりを失ったアドルフは、屋敷の牢屋にいる捕らえられているフードの男を街へと連れ出し、戸籍を売った男を探させた。

アドルフは警備兵とばれないように、ガラの悪い男を演じ、その男と何日も繁華街で粘ったが、成果が得られなかった為、別の場所、また別の場所へと移動しながら捜査を進めていくと、貴族や金持ちが蔓延る地区で、戸籍を買った男は大きく目を見開き、前方を指差した。


「あいつだ、儂が会ったときは・・・もっとみすぼらしい服を着ていたが・・・あいつで間違いない!」


指さす男の様子や口調などから嘘をついている様子は感じられない。

アドルフは慎重に指さす方へ視線を向けると、そこには貴族の屋敷に出入りをしている燕尾服を着た優男の姿があった。

アドルフは貴族の執事だと理解すると、一度屋敷へと戻ってきた。

そしてもう用はないと言うように、約束が違う!と暴れる男を牢屋へと放り投げ、優男について調べ始めたが・・・。

優男の素性などは明らかになったが・・・戸籍を売ったという決定的な証拠や情報は一向に得られないまま数日がたった。

証拠もないまま貴族へ踏み込めば、返り討ちに会う可能性が高い・・・。


先日アランがアドルフへと接触を謀った際、証拠を得られない現状の報告を得てアランから私へと報告があがってきていた。





朝日が顔だそうとしている薄暗い時間に私はアランを呼び寄せ、貴族の執事について情報の擦り合わせを行う。


その男は侯爵家の貴族の最近入った若い執事のようで、雇い主の侯爵家は貴族の間では好色家として有名な、あまり良い噂を聞かない男だった。

侯爵家か・・・やっかいね・・・。

しかもこいつの父親は王都で重鎮として活躍している。


私の地位は伯爵家・・・彼よりも貴族の位は下位にあたる。

この領土は王都に比べると貴族と平民との差が少ないがまったくないわけではなかった。


でも・・・戸籍を売る悪党を放っておくわけにはいかないわ。


「貴族相手なら貴族でたち向かいましょうか。」


私はパーティーの招待状を握りしめてそう呟いた。


ワインレッドの髪に櫛を通し髪を整え、護身用のナイフを太ももへと忍ばせる。

青いネックレス外し、口元を隠すよう扇子を取り出した。

ガーデンパーティーに似合う華やかな貴族用のドレスを衣装棚から取り出し身に着ける。

貴族の令嬢らしく上品な化粧を施し、さぁて行きますかと気合を入れて扉を開けると、窓から少しずつ光が差し込み始めた部屋前にお兄様が佇んでいた。

驚いて目を見開き静止している私にお兄様は開口一番


「こんな朝早く・・・今日はどこへいくのかな?」


目がまったく笑っていない微笑みを浮かべ私へと問いかける。


ばれないように、朝早くに外出しようとしていたのに・・・気がつかれるなんて想定外だわ。

先日危険なことはするなと怒られたばかりの私は気まずそうに、目を逸らす。

しかしお兄様は、言うまで動かないよと、目で訴えるように私の前に立ちはだかった。


「こっ侯爵家からの招待状にあった・・・ガーデンパーティーに参加しようかなって・・・」


それならとお兄様は執事を呼び寄せ何かを伝えると、その執事は急ぎ足でどこかへ去っていく。

えっなに・・・?嫌な予感しかしないわ・・・。


「本当は僕がかわいい妹のためにエスコートをしたいところだけど・・・今日は外せない用事があるんだ」


「大丈夫よ!アランに一緒についてきてもらうわ!」


お兄様は私の言葉を聞くとさらに微笑みが深くなった。

なにっ!?私まずいこといった・・・?

私はお兄様の深い笑顔を見つめたままどうしていいかわからず扉を開け放ったまま立ちすくむ。


そうしているとアランが私の部屋へとやってきた。

アランはお兄様の姿を確認すると一礼し、私の傍へとやってくる。

まったく動く気配のないお兄様に私は恐る恐る声をかけた。


「あの・・・お兄様?出かけてもよろしいかしら・・・?」


私は下から見上げるようにお兄様へと視線をなげかける。

そんな私の言葉にお兄様はもう少しまってねと笑顔を深めるだけだった。

一向に動こうとしないお兄様の様子に私はただただ従うしかなかった。


身動きがとれないままどれぐらい時間がたっただろうか、先ほどどこかへ走り去って行った執事が小走りで戻ってきた。

その後ろに人が歩いてくる姿が見える。


「ルーカス様、お連れいたしました。」


プラチナの髪をなびかせ優雅に歩くその姿に、私は眉を寄せた。

どうして彼がいるのかしら・・・?


「美しいお嬢様、お呼び頂き光栄です」


胡散臭い笑顔を浮かべそんな事を話すガゼルに私は嫌味を返す。


「わたくしは一度もお呼びした覚えはありませんが」


悪役令嬢を演じるように、背筋を伸ばし威圧感を漂わせ彼を見据える。

お兄様はそんな私の様子に落ち着いて、と肩に優しく手をそえた。

ガゼルはそんな私には気にも留めず私へ優しい微笑みかける。


「ガゼルを今日の君の同伴として連れて行きなさい」


お兄様の突然の発言にわけがわからず呆然する。

なんで!?どうしてこいつを連れていけないといけないのよ!


私の様子にガゼルは口もとを手で隠し、面白い物を見つけたような意地悪そうな微笑みを浮かべていた。

なんなのよ!あいつ!

私はそんなガゼルを威圧感たっぷりに睨みつける。

お兄様はそんな私の視線に入り込むと、有無を言わさない態度でじっと見つめる。

うう・・・、これは抵抗してもどうにもならないようね・・・。

お兄様の威圧感に耐えられず、私は渋々といった態度でお兄様に頷くと、立ちはだかっていたお兄様は私をエスコートするように勧めなかったエントランスへの通路へ誘った。

私は憂鬱な気持ちを隠すように笑顔を貼り付け、ガゼルとアランを連れてエントランスへと向かった。

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