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プロローグ・怪しい商人の真実

翌日、窓から差し込む光で目が覚めた。

私はメイドを呼びよせ、軽く湯あみを済ませると、ノックの音が部屋に響いた。

メイドが扉へと向かうと私の方へ視線を向け目で合図をすると、訪れたアランを招きいれた。


「お嬢様、ルーカス様が応接室にてお呼びでございます。」


「わかった、すぐ向かうわ、ありがとう・・・・・・・ちょっとまって」


部屋の扉を閉めようとするアランを引き留め、彼の頬へと唇を寄せた。


「あの地下牢の男、アドルフへ早急に使いをだしてくれないかしら、それと以前お願いしてあった伝達分の進み具合の確認もお願いね」


アランは何も言わず、ただただ私の言葉へ耳を傾ける。


「それと、戸籍を売る側も買う側もこの街では重罪よ、早めに売った奴も調べさせておいて・・・」


アランは首をゆっくりと縦に振ると、扉を閉め部屋を後にした。


私はメイドに指示をだし、お兄様に会うために着替えを始める。

メイドが用意してくれた、晴れた空に似合うような真っ白なシンプルなドレスを纏い、長く伸びるワインレッドの髪を櫛で整えると、昨日はずした青く輝くネックレスを取り出し、首へと飾る。

鏡に映る青いネックレスをじっと見つめた。


今まで私にこういった贈り物をしたことがなかったエイブレムからの突然のプレゼントに嬉しい反面、疑問を抱いていた。

ただの宝石じゃないと彼も私が気がつくことは想定済みだったはず、私が大事にすると言った本当の理由も彼なら気がついていたはずだわ。


このネックレスについている青い宝石は、私がギルドで商売を行っているどんな宝石よりも純度が高いことは、一目見て気が付いた。

青い宝石はこの世界に多くあるが・・・このエイブレムからの宝石は取り扱ったどの宝石よりも重く、澄んだ青い輝き発していた。

今回の奇怪な事件のキーだとは思っていたけど・・・まさか王族に伝わる宝石だったなんて、まったくの想定外ね。

私はネックレスを強く握りしめると、メイドにつづき、部屋を後にした。


私が応接室へ入室すると、お兄様がソファーに腰かけている姿が目に入った。

そしてその周辺には見覚えのある自称商人3人組が立っていた。

ちょっと、いったい何事なの・・・?

私は爽やかな笑顔を作り、戸惑いを面に出さないように微笑みかけた。


「ごきげんよう、皆様」


お兄様は笑顔で優しく私へ微笑みをかえしてくれる。

よかった・・・いつものお兄様だわ。

私はほっとすると、お兄様の優しい笑顔に癒されながら、挨拶を返す周りの他3名の前を通りすぎると、お兄様の隣へと優雅に腰かけた。

なぜかそれに続くように、立ち並んでいた彼らが私たちと向かい合うように座る。


うん・・・?何が始まるのかしら・・・。

怪訝な顔を浮かべてしまうのを抑え、私は頬に力を入れ、微笑みを保つ。

お兄様の様子を窺うようにチラチラと目線を向けていると、真剣な顔つきで話を始めた。


「君も感づいている通り、彼らは王宮の関係者で、一応僕の友人だ。彼らは第一王子の指示のもとこの街へと集まった。僕になぜか・・・その情報が入ってくるのが遅くなってね、馬を飛ばして追いかけたんだが・・・結局間に合わなかった」


お兄様は睨むような視線をオレンジの髪の男へ送る。

オレンジの髪の男はそんな視線に意地悪そうな笑顔を浮かべてお兄様を見据えていた。


お兄様は話し終わると、王宮の関係者のプラチナの髪の男へと視線を向ける。


「改めまして麗しいお嬢様、私は第一王子側近を務めている、ガゼルと申します。」


プラチナの髪をかき上げ、優しそうに見える微笑みを浮かべ、エメラルドの瞳で私をじっと見つめる。

某アイドルグループのようね・・・。


「俺は、第一王子専属の騎士グラクスだ。」


無表情のまま、ルビーのような赤い視線を向け、淡々と挨拶する。


「僕はね、第一王子の護衛や執務をやっているヴァッカと言うんだよろしくねぇ~」


最初に出会った迫力はどこへやら・・・軽い調子で人懐っこい笑みを浮かべ、私へ笑いかける。


なぜお兄様はこの状態で、私に彼らの紹介をするのかしら・・・。

彼らの自己紹介が終わると、お兄様がまた話しを始めた。


「彼らも僕も・・・第一王子の指示でここへきている。目的は教えてあげられないが、とりあえず彼らは王宮で噂になっている僕のかわいい妹の元へと、仕事をそっちのけて先に挨拶にきたんだ、失礼な態度をとったようだけど許してあげてくれ、ガゼルはそうゆうやつなんだ。」


お兄様は鋭い目でガゼルを見据えた。


「それにね、君が思っているよりも、社交界であまり顔を出さない君の噂は、王宮でたくさん流れているよ。聡明なうえ、正義感が強く、美しい姿に魅了されるとか・・・」


前に座るガゼルがお兄様の視線を無視するように、ニッコリと私に微笑みかける。

私はそんなガゼルから目を逸らし、お兄様の言葉に頭を抱えた。


色々湾曲しすぎだわ・・・。

聡明・・・?外にでない私のどこをどう見て聡明なんて言葉が生まれたのかしら・・・?それに正義感もいったいどこから?さらに美しいってなに!?私今までパーティに参加しても、男性にアプローチすら受けたことなんてないわ・・・。

自業自得とは言えなんか悲しくなってくるわね・・・。

パーティでは参加するたびに傲慢な、前世で言う・・・そう悪役のように演じていたのに一体どうして!?

お兄様の隣で頭を抱える私に、


「それはさておき、君は放っておくと危ないことを次々とやりかねないからね、昨日の事もそうだ、だから彼らに今回君が調べている事件の協力を求めたんだ。」


私のお兄様の言葉に目を大きく見開いた。

この人たちに・・・?


「彼らは王族に仕える信用できるもの者ばかり、そして優秀だ。」


私はそう言い切るお兄様へ疑わしげな視線を投げる。

いくら優秀でも開幕から王都へきてくれないか?なんて失礼な挨拶をするこの人たちと一緒に調査するなんてごめんだわ。


「そんな顔をするな、彼らはきっと君の役にたつよ、僕が保証する」


お兄様の真剣なまなざしを受け、私は正面に座る3人を見渡す。

憂鬱だわ・・・でもお兄様の信頼を得ているという事は本当に信頼できる人なんだろう・・・。


私は頬がつりそうな笑顔を浮かべると、小さいため息をつき、わかりましたわ、と胸に浮かぶ青い宝石を握りしめボソッと呟いた。


次閑話を投稿します。

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