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プロローグ・夜の街へ・後編

派手な店の前にアランと佇んでいると、露天商の男が酒場へと現れた。

その男は舐めるような視線で私を見ていたが、少し後ろに立っていたアランの存在に気が付いた様子で、チッと舌打ちをすると、酒場の中へと消えていく。

私たちも男の後を追うように酒場へとのり込んだ。


中は薄暗く、怪しい雰囲気を醸し出していた。

男と女が寄り添いソファーで談笑していたり、艶めかしい雰囲気の女性が男たちへ酒を注ぎ密接している。

前世で言う高級バーみたいなところね・・・。


ウェイターらしき男が私の入店を確認すると、急ぎ足でこちらへと近づいてくる。

私は酒場を見渡し、先ほどの露天商の男を探すと、奥の窓際の席でフードの男と向かい合っている姿が見えた。


「お客様、こちらは会員制となります。会員証のご提示をお願いいたします。」


私たちは事前に用意してあった会員証を取り出しウェイターへと差し出す。

確認したウェイターはどうぞと私たちを人が集まる中央へと案内した。


奥の窓際の席は人が少なく、中央に比べると閑散としていた。

私たちは彼らから二つほど離れた席へと近づき、アランと向かい合わせでソファーへと腰かけた。

中央から流れてくる音楽や、話し声が人の少ない窓際に流れ込んでくる。


私は手鏡を取り出すと、後ろに座っているフードをかぶる男の姿を確認する。

鏡越しに映ったフードの男はグラスを片手に露店の男から金を受け取っていた。

あのフードが邪魔ね・・・

私は前に座るアランへと乗り出し、耳元へ唇を寄せる。


「私でも飲めそうなお酒をもってきてくれるかしら・・・?」


アランは私の言葉に心配そうな視線を投げる。

私はそんなアランに艶麗にほほ笑みかけた。

絶対にここから動かないで下さいね・・・と私の目を見据えて強い口調で囁くと、渋々といった様子で中央にある酒場のカウンターへと足を進めた。


今のうちに・・・。

私はアランが離れていくのを確認した後、そっと席を立ちアランとは反対の方向へと進む。

フードの男は近づいてくる私の姿に気が付いた様子で、慌てたように金を懐へと隠した。


「ねぇ、男二人で飲んでいても楽しくなんじゃなくて?」


怪しまれないようにさりげなく露天商の男の隣に足を組んで寄り添うと、私の深く入ったスリットから露になる脚を嘗め回すように見始めた。

男が私の太ももへと手を伸ばしてきたところを軽く叩き落とし、私はフードの男へと視線を向ける。


「なぁお嬢さん今晩どうだ、楽しませてやるぜ」


手をはたき落とされた男が、私へゲスな笑いを浮かべ体を寄せる。


「ねぇ、向かいのあなたもどう・・・?」


私は艶美な微笑みで前に座るフードの男へと体を乗り出し、深くかぶっている布に顔を寄せるように近づくと、さりげなくフードへ手を伸ばす。


「・・・・っっ」


そんな私の様子に慌てた様子でフードにかかろうとする私の手首を掴んだ。

私は掴まれた手首を利用し、彼の体を思いっきり引き込んだ。

男はバランス崩すように、掴んでいた手首離し、テーブルの横へと倒れむ。

私の手首を離した男は床に膝をついたまま、懐からナイフを取り出し、私へとむけた。


店内にいた客たちが異変に気が付き、私たちの方へと集まってくるのがわかった。

ナイフを目にしたのだろうか、女性の悲鳴も聞こえ始める。

私はナイフ持った男を見下ろすように見つめた。


「おまぇ・・・なにもんだ・・・」


しゃがれた声で私へと問いかける。

その言葉を無視し私は男へと一歩近づこうとすると、男は鈍い動きで後ろへ退きナイフを私へ向けたまま体制をゆっくりと立て直す。

距離を取られたことで、私も忍ばせてあったナイフへ手をかけようとしたその時、私の前にタキシード姿の見慣れた男が割り込んできた。


「・・・動かないでとお願いしたはずですが・・・?」


低く鋭い声で私へと語りかける彼の様子に背筋が凍る。

そんな私の様子に深いため息をつくと、アランは壁を背に、距離をとっているフードの男と向かい合いうと一歩前に近づいた。

フードの男は焦ったようにナイフを振り回しアランを威嚇するが、アランはお構いなしにナイフを握っていた男の手に目掛けて回し蹴りを繰り出した。


カランッ


ナイフが床へと落ちる。

突然のアランの行動についていけない様子のフードの男は、蹴りをくらった手首を抑えながら窓から逃げようと行動を移す。

その行動を目にした私は、窓へと先回りし向かってくる男の大事なところ目掛けて蹴りをおみまいした。


悶絶し蹲る男に、アランは手早くもってきていたロープで男の手首を縛る。


唖然とする雰囲気の中、


「これは新しいパフォーマンスですの?皆さま楽しめましたかしら?」


狂ったような、妖麗な微笑みを浮かべ私はそう叫んだ。

シーンと静まり帰った酒場で、野次馬たちは苦笑いを浮かべると、私たちを避けるように各自戻っていった。


私たちは急いで酒場を後にし、苦しそうな表情を浮かべるフードの男を引きずって歩く。

裏路地を抜けた先で私は男のフードをめくり、顔を確認する。

そこには40代いや・・50代前半だろうか、無精ひげを生やし虚ろな目をした男が現れた。

見たことないやつね?

アランはローブから現れた顔を確認すると、目を大きく見開いた。

こいつを知っているのかしら・・・?

縛っているロープをアランは強く握りしめると男を無理矢理立たせる。


「ねぇ、どうして青い宝石ばかりあいつに売らせていたの?」


冷たい声でそう訊ねた。

男は項垂れる様子を見せるが、何も答えない。

アランは縛っているロープを強く引っ張ると、苦しそうな声を出した。

フードの男を睨むように見据えるエメラルド瞳の奥に怒りが見える。

アランは男の背中へ護衛の為忍ばせていたであろうナイフを突きつける。


おびえた様子を見せた男は、力なく私に目を向けた。


「この街へくる途中にある噂を耳にしたんだ・・・古い王家に伝わる青い宝石がこの街へ流れ込んでいると・・・手に入れれば・・・金になると・・・」


王家に伝わる宝石ね・・・。


「儂は・・・昔この街で暮らしていたんだが・・・突然ありもしない罪を着せられ追い出されたんだ!!!ここの領主になぁ!!身寄りのない子供を保護し、孤児院を建設したこの儂を!!!」


男は突然怒りをあらわに叫びだした。


あぁ・・・この男、私が追い出したあの愚かな貴族か。

誰が身寄りのない子供を保護していたって言うのかしら・・・孤児院に寄付されるお金を使い込み、さらには子供無茶な労働をさせ、みんな餓死寸前だったじゃないの。


私はさげずむように男を見据える。


アランはその言葉を聞き、エメラルドの瞳が怒りで揺れていた。

背中に押し付けていたナイフを彼の首へと移動させ、強く押し付ける。

男の首から赤い液体が流れ落ちた。


私はアランの背中へ手をまわすと、落ち着きなさいと耳元でつぶやいた。


「それで、なんでその理由が青い宝石を売ることにつながったの?」


「ここには・・ほかにも青い宝石を探しにきている者がいると考え、そいつらの目を欺く為に青い宝石を街へと広めた・・・」


私は深い息をつく。

バカにもほどがあるわね・・・。

私はあきれた表情を浮かべ、男に目を落とす。


「儂はこれでも昔は宝石をよく目にいていたからな!見ればすぐその王家の宝石だとわかるは・・・」


私は彼の言葉を遮るように言葉をかぶせる。


「どうやって、この街へ入ったのよ?」


男は困惑したような表情を浮かべると、どもる様子を見せた。

アランはそんな男のロープを握ったまま男の背中を膝蹴りを入れる。


いてぇっと呻き、ロープに縛られている手を引っ張られたまま男は地面へと崩れ落ちた。

もう一発蹴りを入れようと足を持ち上げると、


「・・・・売ってもらったんだ!こっ、戸籍を!ひ弱そうな男がこの街に入れない儂に声をかけてきて・・・そいつから・・・!」


私は驚きで足がぐらつくのを覚えた。

なんですって、戸籍を・・・?

すぐアドルフへ伝達しないと。


私は怒りと憎しみで男を見つめるアランへと顔を寄せ、


「こいつを屋敷に連れていきましょう、彼から情報を引き出し後、アランの好きにするといいわ」


と聞こえるか聞こえないかの小さな声でつぶやいた。


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