27 国家を統一しました
出産は無事にすんだ。
男の子だった。いわゆるハーフエルフということになるんだろうか。耳の長さは両親を足して、ちょうど二で割ったぐらいだろうか。
「よく頑張ったね、クリスタリア」
「これで、この国は安泰だわ。もう誰かに奪われる心配もないし」
僕はクリスタリアの頬に軽くキスをした。
産後はクリスタリアが疲れていたので、僕が政務をとった。
クリスタリアに子供が生まれたということで、北境の総督は相当、追い込まれているらしいという話が密使から届けられた。
これで、王統は明らかに続くことになる。もう、総督のほうにまともな大義名分はないだろう。
クリスタリアに王としての根拠がないなどと言えなくはないが、逆に言えばそれしか理由はない。跡継ぎもいるわけだし、国の安定も保てる。
僕はミストラさんを呼んで、今後についての話をした。
「陛下は総督をどうなされます?」
「その陛下っていうの、くすぐったいし、普通にカグラでいいんだけど」
そのために個別に呼んだわけだし。
「そういうわけにはいきません。男王陛下は男王陛下ですので」
このあたりが堅苦しいのがミストラさんらしいと言えばらしい。
「子供が生まれたわけだし、祝いの使節を招くよう、少しずつ圧力をかけて様子を見ることにしますよ」
皇太子誕生なわけだから、それを祝わないということは、謀反の疑いありと言うことができる。
「なるほど、陛下。これならナコナ山に行くよりもよほど結果が早く出ますね」
「そう、まさにそれなんです。これで、各領主がクリスタリアの王統を認めているかどうかがわかるんです」
結果、総督は何の祝いを伝える使者もよこさなかった。
はっきり言って、こっちとしてはそのほうがありがたい。
僕は政務に復帰したクリスタリアにこう提案した。
「時は来た。総督に直接、息子を祝いに来いと言おう」
この一手で総督にとどめを刺せる。
「もし、何も来なかったら、一気に滅ぼすということね」
「うん。それでこっちに出向いてきたとしたら、クリスタリアを承認したことになる。つまり、総督の家が屈したことになる。どう転んでもこっちが有利になる」
「どっちかというと、総督が滅んだあとの辺境の統治について考えたほうが現実的ね」
今のクリスタリアは母親の顔をしていた。こんなに落ち着いた大人の女性みたいな雰囲気だっただろうか。
「どうしたの、あなた?」
「いや、もうどこから見ても暴君には見えないなと思ってね」
「怒るわよ、あなた」
僕がクリスタリアを変えることができたとしたら光栄だ。
「あなたも女の格好をしたらよく似合うわよ」
「ごめん、僕が悪かった」
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その後、総督は結局、何の返事もしないという手を選んだ。
一言で言えば、意固地になっていたんだろう。彼に勝てる可能性なんて、とっくになくなっていた。
王に対して反抗的な振る舞いが多いことを弾劾しても、ついに返事をしなかったので、一気に攻め立てた。この間、できる限りの手順を踏んで誰からも文句が出ないほどにして、攻撃を加えた。
戦闘はあっさりとすんで、総督は自害した。
そのあとは総督に反抗的だった総督一門の物を、次代の総督に据えた。このあたりも辺境領主の確認を事前にとっていた。これで内乱状態を防いで、戦国時代に突入なんてことも起こらなくなるはずだ。
ローグ王国はこれで統一された。
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それから先――
僕は燃え盛る火の前に座らされている。
火刑に処されているのではない。まじないというか祈祷に参加させられているのだ。
「ねえ、クリスタリア、もうやめにしたいんだけど……」
「ダメよ。ちゃんとエルフになってもらわないとダメなんだから」
僕が受けているのはほかの民族をエルフにするための祈祷? だ。
魔法がある世界ではあるので、効果もあるのかもしれないが、詳しいことは謎だ。
人間とエルフでは寿命が倍ぐらい違う。それで僕が早く死なないようにということで、クリスタリアがずっと祈祷をやらせているのだ。
「そういえば、こころなしか最近耳が長くなってきている気がするんだけど、気のせいかな……」
「じゃあ、効果があるのね! よし、これからも続けて」
遠くからクリスタリアが言う。熱いから離れているのだ。僕だけ汗がだらだら垂れている。
その横では六歳、つまり人間で言うところの三歳ぐらいの我が子が「お父さん、がんばれー」と手を振っている。ハーフエルフの寿命もエルフなみに長いらしい。遺伝子的にエルフのほうが人より強いのだろうか。
「まあ、愛する我が子の行く末を見守るためにも努力するか……」
僕は祈祷を受けながら、戻ったあとに見ないといけない書類について思いをめぐらす。
こんなことなら、僕からもエルフになる魔法を探して、自分で唱えたほうが早くていいかな……。
この話はこれにておしまいです。読んでいただき、ありがとうございました!
もしかすると、第二部をやるかもなという気持ちもあるんですが……ひとまず、これで一回閉じたいと思います。また会う日まで!




