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エルフの美少女暴君の愛人にされた僕は、せっかくだし名君に育ててみることにしました  作者: 森田季節
御伽衆編

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16 トップクラスの魔法使い

 とっととカタをつけるか。長引かせるとまずいし、遠方から弓矢でも射かけられると厄介だ。


 要領は同じでいい。僕は敵を順に炎で焼き払っていく。

 もし、こいつらが死を恐れずに突っ込んで来たら間に合わなかったかもしれないけど、ノーチの部下をやるような奴だ。恐怖を感じたらすでに逃げ腰で、僕が逆襲するのに十分な間を与えてくれた。


 こっちの世界の兵法の本も読んで学んだ。

 ――攻撃はためらいなく行え。なぜなら、その攻撃が相手に厭戦の気を催させるからである。戦う意思のない者に敗れること、万に一つもなし。これぞ有史以来の必勝の策なり。


 似たようなことは孫子も言ってた気がする。戦わずに勝つのが一番被害が出なくていいし、相手が戦おうと思えないほどに一気に攻撃するのも悪くない。


「ひああっ」「焼ける、焼けるっ!」

 情けない悲鳴とともにエルフが一人ずつ死んでいく。もう、僕に剣を振り下ろそうとする者もいない。そのくせ、すぐさま逃亡する者もいない。そういう中途半端なのが一番悪いのに。


 こいつら、全然戦慣れしてないな。せいぜい、ノーチの私兵ってところだろう。

 北境都護府の兵士ならもっと戦いを繰り返しているから、精強なはずだ。


 その点は日本で関東の武士団が強かったのに似ている。関東は馬の産地でもあったし、京より離れていたから、相対的に独立傾向も強かった。

 源氏も平安時代の後期から関東の馬の産地を抑えようとしていた。当時は武士の生き方を「弓馬の道」と呼んだぐらいで、弓と馬がとにかく重要だったし。刀で斬り合う前に弓と馬が上手でないと話にならない。


 まあ、僕の場合、弓も馬も関係ない、魔法の道だけど。

 手の内を知られるメリットもないから、極力同じ炎で焼き殺す。手からの炎は射程も長いから、僕を囲んだ時点で逃げられない。殺しに来たつもりだろうけど、その逆だ。


 そういえば、初めての人殺しだったはずだけど、あんまり感情の変化はなかった。

 もしかすると、自分がシリアルキラーなのかもしれないけど、おそらく魔法だからだろう。誰かを斬った感触も残らない。

 それと、自分が殺されそうになってるせいもあるかもしれない。人間は生き延びるためなら、あっさりと敵を殺せる。もちろん、敵が肉親や恋人なら話も変わるだろうけど、純然たる敵なら、どうってことはない。


 残った兵士が逃げようとしたけれど、炎は問題なくその背中に直撃した。


「ば、化け物っ!」

 ノーチがおののきながら叫んだ。


「お前はこっちの世界に来たばかりという話ではなかったのか!? すべて仕組んでいたのか……? お前は陛下の懐刀か何かか……?」

「悪いけど、大はずれだ。僕は貴族でもなければ兵士でもない。本当にただの平民身分だ」


 さて、ノーチが黒こげになると、証拠がなくなるな。

 たしか敵将の首を集める時に使う魔法があったか。


「く、くそっ! 死ねっ!」

 ついにやけくそになったように、ノーチが剣を抜いて突っ込んできた。

 滅亡するのがほぼ確実になってから、皇帝の即位式をやった奴が中国の動乱時代にいたっけ。隋がぐだぐだになって、唐ができる前後のことだっけ? うろ覚えだけど、まあいいや。


「『風の精霊よ、不浄なる者の空気を永久に奪いたまえ。その風の穢れることを赦せ』」

 僕の目からは何か青白い刃のようなものが見えた。


 次の瞬間にはノーチの首が、ごろんと落ちていた。

 それから、時間をおいて、剣が手からこぼれて、その体も地面に倒れた。脂肪が多いから、火をつけたらよく燃えそうだ。

 馬だけが情けなく走り去っていくけど、馬に罪はないから赦してやるか。


 残るのはある意味、非戦闘員の男だけど――


 僕が視線を向けると、エルテスは恐怖に染まった表情になる。

「まさか、ここまで魔法が使えるとは……」


「暗殺を行うつもりなら、もっと相手を調べたほうがいいですよ。だって相手を殺そうとするってことは、自分だって殺されるかもしれないってことですから」

 僕はさばさばした表情で言った。ここまで平然としていられるってことは、草食系というより、もともと本当に冷静な性質なのかもしれない。


 エルテスはこうなることはまったく考えていなかったのだろう。もつれた足で僕から背中を

向けた。


 僕は淡々と氷の精霊に関する魔法を詠唱した。


 地面と丸ごと、エルテスの下半身が氷漬けになった。

「あれ……足が動かな……」


「あなたには証人になっていろいろ吐いてもらったほうが、陛下にとって有益ですので、生かしておきます。おそらく拷問でボロボロになった後に殺されるかと思いますが、覚悟してくださいね」

「た、助けてくれ……」


 僕のところからは背中しか見えないけえれど、きっと顔面蒼白になっているんだろう。

「どうして僕を騙して殺そうとした人間を助ける義理があるんです? 大丈夫ですよ。あなたも聖職者のはしくれなんですよね。なら、エルフ聖教が言っているように死に関する覚悟はあるんでしょう」


 生々流転をエルフ聖教は語っている。命あるものはまた死んで別のものに生まれなおす。輪廻転生の概念によく似ているけど、こういうのはどこでも同じなんだろう。


 さて、氷が解ける前に報告にいくかな。



 僕の報告を受けたミストラさんはすぐにノーチ以下の死体と動けなくなっているエルテスを捕えてくれた。ただし、できるだけ秘密裏に。


 僕が脅したせいもあるけれど、エルテスは拷問にかけられる前に北境都護府と関わりのある人間の名前をいくつか出した。


 エルテスらの件をあまり表に出さずにやったのは、関係者が逃げるリスクを減らすためだ。結果として、表向きは王城に仕えている何人かの関係者を捕らえて、その証拠を押収することができた。

 といっても、せいぜい北境都護府にも二枚舌を使ってるといったレベルで、本格的な裏切者というほどじゃなかったけど。


 それで、だいたいわかってたことだけど、一仕事が終わった後、僕はクリスタリアの部屋に呼び出された。

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