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1 エルフの土地に飛ばされました

新作を投稿しました。よろしくお願いします!

 放課後、僕は隣クラスの女子生徒に体育館裏に呼び出された。

 机に「体育館裏に来てください」という手紙が入っていたのだ。無視すると後でどんな噂を立てられるかわからないので、選択肢はない。


 地方の高校なんで生徒数も少ないし、最悪の場合、高校と関係ない地元民まで誰それが付き合ってる、誰それが別れただなんてことを知っている。

 なので、呼び出しをスルーしたひどい奴だという噂が立つ恐れもあるわけだ。


 それと、正直なところ、女子からの呼び出しなので、ほっとしていた。


 僕の顔は、自覚があるぐらいには中性的で、髪も少し長い。

 そのせいで、なんか変な趣味の男子から告られたことも中学から通算五回にのぼる……。僕のほうは女子にしか恋愛感情は抱けないので、全部お断りさせてもらったけど……。


 ちなみに女子に告白されたことは一度もなかった。いろいろと納得できない! 男子にモテる才能とかいらないんだけど! 誰得だよ!


 まあ、地方の学校だからか、体育会系の男子のほうが女子にはモテるということだろう。こちとら、歴史の本を愛読してるガチガチの文系男子だからな。肌もかなり白いし。


 けど、そんな男子にばかり告白されるという不吉な記録も、今日で途切れることになるんだ!


 ちゃんと女子と付き合って、デートするぞ!


 もちろん文系だからって、ずっと図書館にこもるだなんて日の当たらない計画は立てない。外に思い切り出るアウトドアな計画だ。


 ずばり、古墳と山城めぐり!

 これなら、アウトドアだし、文化系で暗いと言われることなんてないだろう。あと、城にのぼったら、かなり疲れるので吊り橋効果でさらに二人の仲が接近する可能性もある。


 電車賃はかかるけど、遠出すればずらっと刀剣が並んでるスポットも知っている。

 ふふふ、これは勝ったな。


 期待を胸に、体育館裏に行くと、ツインテールの勝気な目の女子が立っていた。見た目はけっこう僕好みだ。


春日かすが神楽かぐらさんですね?」

 女子がおどおどと答えた。


「はい、僕が春日です」

 さあ、好きですと言ってくれ。


「私、田中君に告白したんです」

 なんで、田中君に告白した話が最初に出てくるんだろう。第一希望に断られたから、第二希望にするってこと?


「そしたら、田中君、自分は春日君が好きだから諦めてくれって……。私はふられました……」


 あれ? なんか、話の方向性がおかしい。

 しかも、彼女から怨念みたいなものを感じるというか……。


「男に負けるだなんて屈辱です! 死んでください!」

 彼女のふところに光るものがあった。ナイフだ。模造刀だとうれしいけど、多分本物だよね……。


「あの、話せばわかる! 話せばわかるから! 落ち着いて!」

「あなた、ただのなよなよした歴史オタクじゃない! そりゃ、顔面偏差値はまあまあ高いけど、それだけだし! どうせ、女装して田中君を誘惑したりしたんでしょ!」

「女装した覚えも、誘惑した覚えも一切ないから!」

「問答無用!」


 女子がナイフを持って走ってきて、胸のあたりがやけに熱くなったなと思ったところで…………僕の意識は途切れた。



 気づくと、草原の中に倒れていた。

 まさか死んだと思われて、死体遺棄された? いやいや、人間って死ぬとすごく重く感じるっていうし、女子だけが運ぶことはできないだろう。


「ていうか、胸を刺されたはずなのに、傷がふさがってるし」


 刺されたのが夢とは考えづらいので、ここは天国か地獄ってところだろうな。

 死後の世界なんて信じてなかったけど、変なところに飛ばされてるし、意識はあるし信じるしかな――


「おい、誰だ!」

 大きな怒声が近くで聞こえた。


 びくっとした。学校の成績はよかったし、親にも教師にも怒鳴られた記憶はほとんどない。


 ――と、草原をかき分けて、人が僕の前に現れた。

 とはいえ、地球人とは微妙に違う。


 耳がやけに尖った少女だ。髪は銀色だけど、いわゆるエルフっていう種族だろうか。

 見た目の年齢は僕と大差ないけど、ずっと年上という可能性もある。その程度の知識は歴史の本ばかり読んでても知っている。


 服装もいかにもエルフが着ていそうなものだ。少なくとも和装でもなければ、ターバンを巻いてるわけでもない。


 これだけだらだら考えられていられたぐらいに、相手のエルフ少女は黙りこんでいた。

 どうも、警戒しているらしい。


「見慣れぬ服装だな」

 それは学生服姿だからだな。僕が相手を見慣れない格好と思ったということは、向こうもそう感じる可能性が高い。


「それは、まあいい。貴様、どうしてクリスタリア王の狩場に入っている! 王への不敬の罪で首をはねてやる!」

 えっ!? いきなり殺される流れ!?


「誤解です! 僕は気づいたらここに飛ばされてたんです! 多分、転生とかいうやつです!」

「わけのわからんことを言うな! どこかの領主の刺客ではあるまいな? よし、拷問してすべてを聞き出してから、首をはねてやろう」


 死ぬまでの苦しみが増えただけだった。


「だから、刺客とかじゃないって! 武器なんて何一つ持ってないから! 調べてくれたらわかるから!」

「そんなものいくらでも隠せるだろうが。ところで……お前、男か、女か?」


 異世界でもこういう反応されるとは思わなかった。


 まあ、男らしい女の人も、その逆もいるしね。


「男ですけど」

「そうか、女だったら生かしたかもしれんが、男であれば処刑するしかないな」

 余計なこと、答えちゃった!?


「ねえ、いったい何事なの? 鹿が逃げてしまうじゃない」

 そこに別の女子の声が聞こえてきた。


 また草原の中から今度は馬に乗った女の子が出てきた。年齢は僕より二つぐらい下に見える。もっとも、またエルフ耳だから、実年齢が何歳かはわからないけど。


 最初に首をはねると言っていた子と比べても、相当にその金色の髪は長い。長すぎて生活の邪魔になりそうだ。


 ただ、それよりも服装が派手で、いかにも高そうだった。王族かなんかだろう。こんな庶民はいないと思う。


「ご注意ください。刺客が紛れていました!」

「刺客じゃないって言ってるだろ! 気づいたらここにいたんだって!」

「陛下の御前だぞ。もっと言葉づかいを考えないと首をはねるぞ!」


 もう、何をしても殺される運命か。

 けど、ふと気にかかる言葉を聞いた気がした。


「陛下って言った?」


「そうよ、私がローグ王国第六代の王、クリスタリアよ」

 僕のことを見下ろすと、その少女はくすくすと笑った。

「王にまみえることができるなんて、偶然にしても幸運だったわね。大半の人間は顔など知らないままに死んでいくんだから」


 なんでもいいから、生きられるルートがほしい……。

序盤すぎるので、すぐに次の話を更新します!

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