聖女が
カシマ オーイチは村長のお宅で休むこととなった。(テンテンテテテン♪
村長宅で村長に会いゴンズイがこれからの盗賊討伐についての簡単な話と宿の話を終えて少し経った頃、自分はゴンズイと同じ部屋でしばしの休息をとっている。正直なところ、王宮での件や今朝の馬車でもそうだが、最近疲れが溜まりすぎているように思う。このあまり騒がしくなさそうな村の中では自分が討伐をしなければならないのに少しだけリラックスできた様な気がした。
…
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…………zzz
誰かが自分を揺り動かしている。多くの人が嫌いなものベスト10以内には入るだろう自分を起こすモノやヒトなんてことを思いながら少し不機嫌な感じで瞼を上に持ち上げていく。そこにはゴンズイがいた。いるというよりかは質量が存在するといった方が表現が適切なのだろうかなどと考えて身を起こす。
(どうしたんだ?ゴンズイさん)
もちろん、音としては聞こえないだろうが声に出すつもりでいてしまう。音はでないけれど。
それに呼応したかのように
「あぁ、ようやく起きてくれましたか。そろそろ夕ご飯の支度が整うそうですよ。そう先ほど村長さんが伝えに来てくださったので起こさせてもらいました」
(あぁ、ありがとうゴンズイ)
もちろん、言葉にはできないが感謝は心の中でもするべきである。この世界に来た時のことも含めて。
手串で髪の毛を軽く直し、来ている服も少しだけ皺を伸ばして食堂に行く準備を始める。
おそらく行くところは先ほどの話をしたところでいいのだろうかと思いながらも、少しだけ不安なのでゴンズイの後についていくことにする。
ガチャリ、とドアノブを回せばキィィィと音を立ててドアは開く。
そこには美しい金髪というのは語彙力が少ないのか、それともそうとしか表現しようがないからなのかは分からないが、顔だちもかわいらしい少女がテーブルの席に一人座っていた。もしかして、先ほどの村長の半来の姿かなどと馬鹿みたいなことを考えてしまったが、恐らく先ほど村長の話に出ていた。教会の聖女様であろう。直感的にわかる。少しだけ嘘をついてしまったが、身なりをみれば推理できないことはないだろう。
「お二人とも、こんばんは。初めまして、私はリリーと申します。教会の所属でこの村には検診のためにやってきました。よろしくお願いします」
わざわざ、椅子から立ってお辞儀までして自己紹介をしてもらった。物腰が柔らかそうな女の子である。
「こんばんは」
(こんばんは)
当然のごとく声は出ないのでお辞儀を深くすることでこちらの気持ちを伝えようとする。
それからゴンズイに二人分の自己紹介を俺がしゃべれない分までやってもらった。
「お二方はどうしてこの様な村にお越しになられたのでしょうか?」
至極当然である。筋肉とただの男の二人がなんの目的もなしに来るわけがないしな。もちろん、これもゴンズイが答えてくれる。もしかしてゴンズイは戦いよりもこうやって話してもらうことの方が自分のサポートになっているのではないかと思う。もちろん、きっとどちらでもサポートしてはくれそうであるが。
「この辺りには盗賊が出るというのは最近のことなので村人から聞いてはいたのですが、確かに放ってはおけませんね。ううん、はい!私もその討伐のお手伝いをさせてもらえないでしょうか?これでも教会では聖女と呼ばれていて回復魔法は結構上手な方なんです」
やっぱり、僧侶=回復役というのはテンプレなのかと思いつつ、それとは別に自分よりも細い腕や体でそんな危険なことができるのだろうかとも思う。もちろん、自分にも出来ないとは思うが。まぁ、ゴンズイなら何とかしてくれそうでもあるのだが。
「申し出はありがたいのですが、聖女様。お体がケガでもされてしまいますとこれからあなたが回る村の人々を治していくのに支障があるでしょう。これでも王都の騎士のなかではそこそこ強いと自負しております。私たちだけにお任せいただいてもよろしいでょうか」
(俺は怖いけれども男だし、女子供に危ないことはさせられない)
「そうですか……。あなた方の盗賊討伐が上手くいきますように村で祈らせていただきますね」
軽く話をした程度だが、そこで夕食が運ばれて来てそれを機に歓談を村長を含めた3人は始めた。
夕食を終え、ゴンズイは村長と盗賊のことでのくわしい話し合いをすると言って部屋に行く前に分かれて行ってしまった。
「今日の疲れ、をきちんととっておくといい。明日からが本番になるのだからね」
そんなに顔に疲れが出ていただろうか、先ほどの睡眠だけでは取ることができたなかった疲れが自分を睡眠へと導く。本当は聖女様とも少しばかり話をしてみたかったし。盗賊の話も聞いておきたかったのだが、言葉がしゃべれない現状では相手を困らせてしまうだけだと思いゴンズイに言われたとおりに意識を落としていく。
まさか、翌日にいきなり盗賊討伐を開始するなんて予想もしていなかったのだけれども。